3月4日に開催された「Digiday+ Talk」第八段には、 クリエイティブ・ディレクターであり、I&CO(アイ・アンド・コー)共同創業者のレイ・イナモト氏が登場。その様子を収めた動画(DIGIDAY+ プレミアム会員限定)と、簡単なレポートをお送りする。
「信頼」こそ、ポストコロナにおけるブランド構築の鍵だ。
2010年代以降、スマートフォンやソーシャルメディアの普及により、生活者の購買行動は大きく変化した。昨今のコロナ禍により、この流れはさらに加速したといえるだろう。そんななか企業は、いかにブランドを構築していくべきか。
「重要なのは地道に、信頼性のある製品/サービスを提供し、派手なコミュニケーションに頼らないブランド構築だ」。こう語るのは、ニューヨークを拠点に世界で活躍するクリエイティブ・ディレクターであり、ビジネスインベンションファーム「I&CO(アイ・アンド・コー)」共同創業者のレイ・イナモト氏だ。
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イナモト氏は2021年3月4日、オンラインイベント、DIGIDAY+TALKSの第8段[特別編]「レイ・イナモトに聞く – デジタル時代のブランド構築」に登場。現在、DIGIDAY[日本版]にて連載中の企画「レイ・イナモトのデジタル時代のブランド構築 4つの法則」で記された内容をベースに、ブランド構築の思想や方法論について語った。
なお本イベントは前後半に分けられ、前半部分では、事前に実施したアンケート結果をもとにした、イナモト氏によるプレゼンテーションが行われた。後半部分では、イナモト氏とDIGIDAY[日本版]編集部の長田、加えてオーディエンスも交え、今後のブランド構築のあり方についての議論が交わされた。以下は、その様子を収めた動画と、イベント前半部分の簡単なサマリーである(動画はDIGIDAY+の「プレミアムプラン」ユーザー専用のコンテンツです)。
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01:我々が学んだこと
イナモト氏が大切にする3つのスキル
- 「弱みを強みに(Weakness → Strength)」:海外に出て30年、いまではもう日本語よりも、英語を使う方が楽にったというイナモト氏。しかし渡米して最初の5、6年は、語学習得に苦労したという。転機が訪れたのは米ミシガン大学に在籍していたとき。ここで同氏は、英語でプレゼンする機会を通して、シンプルな英語で説明する癖がつき、弱みであったはずの英語を強みに変えることができた。「もちろん、自らの強みを理解することは重要だ。しかし弱みを認識し、それを強みにしていくこともまた重要だ」。
- 「越境する、国境を超える(Cross the border)」:イナモト氏が米国の大学に入学した当時、世間はインターネットの黎明期にあった。イナモト氏はアーティストを目指して美術を学ぶ一方、二重専攻で工学を選び、プログラミングの勉強にも勤しんでいたという。「分野を越境した学びが、デザインやクリエイティビティを行ういまの仕事に活きている」とイナモト氏。「異なる分野のコラボレーションが、物事の革新につながることがある」。
- 「迷ったら、削る(When in doubt, subtract)」:ビジネスで何か壁にぶつかったり迷ったときは、「足す」ことによって物事を解決しようとするのではなく、「削る」というアプローチが大事だと、イナモト氏は話す。「足す欲求に負けずに、逆に削る」。これはI&COでも、守るべきルールのひとつとして定められているという。
求められる企業文化の変革
昨今多くの企業が、DXやD2Cなど、ビジネルモデルの変革を図っている。イナモト氏によると、ここで我々は、テクノロジーといったハード面の変革だけではなく、日本企業が持つ文化の変革にも目を向けなければならないという。「年功序列や男尊女卑、英語教育の欠落、決断スピードの遅さなどを挙げ、こうした日本企業の文化にまつわる課題は、早急に解決すべきだろう」。
「ストーリーテリング」から「トラストビルディング」へ
イナモト氏は、ニューヨーク大学スターン経営大学院教授で、著書『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』でも知られるスコット・ギャロウェイが提唱する、「購買時計(Purchase Clock)」に触れる。これは、購買プロセスを時計に見立てたもので、従来のピラミッド型の「購買ファネル」とは異なり、購買後の行動にも焦点を当てている。より広範かつ深く生活者について理解し、ブランド構築を行うのに効果的だという。

購買時計(Purchase Clock)の図(参考)
「これまで企業が行ってきたブランド構築、マーケティング活動は、テレビCMやデジタル広告を活用し、購買前(pre-purchase)の部分に費用を投資しする方法が主流だった」とイナモト氏。「そうではなく、購買中(purchase)や購買後(post-purchase)の部分にもコストを投資するという考え方が、今後重要になってくるだろう」。ブランド露出や、購買行動を誘発するための投資のみならず、プロダクトやカスタマーサービスの品質向上に寄与する投資が、今後大いに求められるというのがイナモト氏の見立てだ。
「企業はこうした活動を通じ、『ストーリーテリング』から『トラストビルディング』にシフトし、顧客との信頼関係を構築する必要がある」。
02:イベント動画
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Written by 小玉明依、村上莞