D2Cブランドからのメッセージは、消費者のeメールやインスタグラム(Instagram)上に溢れつつある。そんななか、新規ブランドたちは消費者にリーチでき、かつまだブランドたちからのメッセージが溢れ返っていない場所を探している。そんなチャンネルのひとつが、ショートメッセージサービス(SMS)だ。
D2C(Direct to Consumer)ブランドからの「カーペット20%セール」「パジャマグッズの大セール」といったメッセージは、消費者のeメールやインスタグラム(Instagram)上に溢れつつある。そんななか、新規ブランドたちは消費者にリーチでき、かつまだブランドたちからのメッセージが溢れ返っていない場所を探している。
そんなチャンネルのひとつが、電話番号に直接メッセージを送る、ショートメッセージサービス(SMS)だ。
これらのブランドはSMSをさまざまな方法で活用している。注文の受付、プロダクトの補充、カスタマーサービス、新プロダクトについてのお知らせ、そして顧客がプロダクトをどう使用しているかの調査、といった具合だ。
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ここ数年で人気を伸ばしたあとに沈下したチャットボットとは異なり、これらのブランドたちはSMSを活用するためには、人間のスタッフによる対応が重要だと考えている。とはいえ、いくつかの良く聞かれる質問などに対する反応は、サービスをスケールさせるために自動化しようとしているようだ。
SMS経由でブランドと連絡を取ることに対して、顧客がどれほどの反応を見せるかもまだ明確ではない。たとえば、今年前半にテキスティング・プラットフォームであるジップウィップ(ZipWhip)が行った調査によると、予約確認のメッセージは電話やeメールよりもSMSの方が好ましい、とする参加者が大多数だったとしている。しかし、これらのブランドが行おうとしているのはそれだけではない。彼らはSMSを顧客とのあいだの双方向コミュニケーションとして使おうとしているのだ。
活用法のカテゴリー分け
ブランドたちによるSMS活用法は、いくつかのカテゴリー分けができそうだ。調理ツールのスタートアップであるグレートジョーンズ(Great Jones)や家具ブランドのブロー(Burrow)はSMSをマーケティングチャンネルとして捉えている。彼らの場合、人間スタッフの反応が必要な顧客からの複雑な質問に回答するのにSMSを使っており、また週のうち限られた時間帯だけ質問回答に対応している。先日、ブローは顧客がカスタマーサービスに新商品について質問できる、SMSによるコンシェルジュサービスをローンチした。また、部屋にどのような家具を備えれば良いかのアシスタンスもしてくれる。既存・潜在の顧客たちとの会話をより増やすことが、これらのサービスの目的だ。
「家具購入には非常にさまざまな考慮がされる。SMSのおかげで、そのプロセスにおいて細かいサポートを顧客に提供できる」と、ブローの会話マーケティング部門責任者であるウィットニー・ブラウ氏は、eメールで回答した。「我々によりアクセスしやすくすることで、ほかのチャンネルでは得られない信頼を築くことができたらと願っている」。
また、SMSベースのコマースプラットフォームを完全に自社で作ろうとしているブランドもいる。最初の注文から、新商品の通知送信まで、SMSにおいて24時間対応で顧客とコミュニケーションを取るのが目的だ。最初の清涼飲料水プロダクト、ダーティレモン(Dirty Lemon)が成功したあと、清涼飲料ブランドのホールディング会社として転向したアイリスノヴァ(Iris Nova)は、そんな会社のひとつだ。また先日、元Snapchat(スナップチャット)の従業員ふたりがローンチしたオンラインブティークのウィム(Whym)がある。ウィムはSMSで商品注文ができる。ウィムは自社で開発したD2Cの花配達ブランドのペタルフォックス(Petalfox)と言った自社ブランドのプロダクトだけでなく、ほかのブランドの商品の販売も行う。
どれほどスケール可能か
また、これらのサービスがどれほどスケール可能なのかは不明確だ。アイリスノヴァは具体的な売り上げの数字は明かさなかった。しかし、ファウンダーでCEOのザック・ノーマンディン氏は「どの瞬間でも、何百という会話を執り行っている」と語った。カスタムメイドのウェディングドレスブランドであるアノマリー(Anomalie)は、デザインの最終確認と生地の承認を顧客とのショートメッセージで、主に行っている。先月だけで送受信したショートメッセージの数は10万以上となると、広報担当者は述べた。
ほかの伝統的なリテーラーたち、特にビューティとスキンケアのリテーラーたちは、これまでにチャットボットを実験的に運用している。しかし、その多くは、Facebookメッセンジャー内で管理されたものであり、既存の顧客に新しい習慣を身に付けてもらうことが目的だった。一方でこれらのD2Cブランドの多くは、SMSをベースにしたカスタマーサービスによって、顧客がプロダクトに関する質問をすること、そして購入することが、さらに容易になるという前提に立って、新規顧客を得ようとしているわけだ。
「人々は、ただのツール以上のものを欲していて、実際にブランドと繋がることができるコミュニケーションチャンネルを希望しているということに、すぐに気がついた」と、ノーマンディン氏は言う。ダーティレモンがローンチしたのは2015年。そのときに彼らは、シンプルな自動化ボットを構築した。顧客はテキストメッセージを送ることで注文ができたのだ。しかし今日では、アイリスノヴァは7人編成のチームが複雑な質問に回答している。運動のあとに飲むのは何が良いか、ターメリックはどんな健康上のメリットがあるのか、といった質問だ。
新規の顧客が一番の目的
アイリスノヴァは、SMSをブランドマーケティングには使いたくない、という点を強く主張した。「SMSはこれまで、家族や友人のためだけに使われてきた親密なチャンネルだ。ショートメッセージをスパム的に送って顧客にもっと商品を買ってもらおうとするような、会社や組織にはなりたくない」と、ノーマンディン氏は言う。
一方でショートメッセージをマーケティングチャンネルとして捉えているブランドたちは、ただダイレクトレスポンスを提供するマーケティングチャンネルを増やしただけとならないで、このサービスに価値があることを証明しようとしている。グレートジョーンズが、レシピ関連のサポートをショートメッセージで得られるポットライン(Potline)を6月にローンチして以来、25%はグレートジョーンズの既存の顧客で、75%はブランドから購入をしたことがない新規の顧客となっていると、共同ファウンダーのシエラ・ティシュガート氏は言う。
11月後半には、グレートジョーンズはポットラインサービス初の「テイクオーバー(引継ぎ)」キャンペーンのプロモーションをする計画だ。人気のシェフがポットラインを1日だけ引き継いで、サンクスギビングの調理に関する質問に回答するという企画だ。ティシュガート氏によると、顧客にグレートジョーンズのプロダクトを購入するよう促すことのためにポットラインサービスは使いたくない、とのことだ。しかし、ポットラインサービスもグレートジョーンズどちらにも、こういったパートナーシップを増やしたいという。人気シェフのフォロワーたちと繋がることで、新規の顧客を呼び込むことが目的だ。
それでも、ショートメッセージのサービスを構築している、これらのブランドの多くは、ベンチャーキャピタルの資金支援を受けている。投資家たちからの要求に応えるために、彼らは多くの新規顧客を獲得しなくてはいけない。今後、ショートメッセージを新商品の販促に使わないと完全に排除してしまうのは難しくなる可能性がある。
ちょうど良いバランス
そのため、新しいブランドのなかには顧客にどれくらい販促ができるか、ちょうど良いバランスを見つけようと実験を行っているところもある。ウィムはその一例だ。彼らは、ショートメッセージで購入できるプロダクトのコレクションをフィーチャリングするテキストを、毎週送る予定だ。
「我々はどんな段階においても、顧客自身が選んでメッセージを受け取っていることを確実にしたいと思っている。レシピのガイダンスを受け取ることに同意したかと言って、その他もろもろを受け取ることにも同意したわけではない」と、ティシュガード氏は言う。
Anna Hensel(原文 / 訳:塚本 紺)