いま、その転職は必要か?:デジタル広告人材、キャリアプランに欠かせない5つの視点

年収や待遇にほだされて、近視眼的にオファーを受けると痛い目に合いやすい。未曾有の危機のなか混沌としている現在、なおさらその危険度は高いといえる。

コロナ禍によって、デジタルサービスを展開する事業会社は売上を伸ばした。その一方、広告・メディア系企業は広告需要の低下に伴い、業績を落としているところも少なくない。こうした状況から、いまのキャリアに不安を感じ、転職を考えるデジタル人材が増えているようだ。

「ここ数カ月で、転職市場や今後伸長していく企業に関する相談が多くなった、しかしこんなときこそ、短期的な欲求の実現や不安の払拭に走るのではなく、中長期的な視点で自らのキャリアを考えて欲しい」と、デジタル人材専門のエージェント、ウィンスリー(win3)でシニアコンサルタントを務める、沼崎弘氏は語る。「昨年から、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)ニーズが高まっている。そのため、ウィンスリーでは、CDO人材、AI・データ系といったDX推進人材の支援を強化してきた。現在、求職者からの問い合わせは、昨年比で2倍にまで増加している」。

なお沼崎氏は、IBMでプロジェクトマネージャーやテクニカルセールス部長、営業部長、事業責任者などを歴任した人物だ。マネジメントレイヤーとして、事業会社視点で採用にも携わったこともある。そんな沼崎氏によると、いま転職を考えるデジタル人材は、次の5つの視点を備えるべきだという。

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1. 自らのスキルレベルを知る

沼崎氏によると、現在ウィンスリーが支援しているデジタルサービス企業は、コロナ禍において逆に売上を伸ばした会社が多いという。そのため、マーケター、エンジニアを中心に、積極的に採用活動を進めている。また、コンサル会社、SIerといった支援会社のなかでも、デジタルに強い企業は採用数の大幅な減少は見られないという。しかし沼崎氏によると、広告・メディア系企業、特にデジタルに強くない企業は、広告需要の低下により採用が抑制されているようだ。

さらに、このようにカテゴリーによっては現在も積極的に採用を進めている企業はあるが、いずれも共通して、ポテンシャル採用は控える傾向にあるという。「現在はどの分野においても、ハイレベルスキル層以外の転職は厳しい」と沼崎氏。その理由は、市場全体の求人数が減少しているため、積極採用を行なっている企業に応募が殺到しているからだという。その結果、転職市場の競争が激化しているのだ。

「こうした状況下で、汎用的なスキルしかない人材の転職は極めて絶望的なのではと思う」。

そんななか求められるのは、安易に転職を選ぶのではなく、まずは自らのスキルレベルを明確にすることだ。自分の市場価値はどの程度あるのか、競争率が上がっている現在の転職市場で、それを見極めずに転職活動をスタートするべきではない。

とはいえ、このコロナ禍で社内外でのコミュニケーションが制限されるなか、相対的な視点で自らのスキルレベルを推し量るのは難しい。「そんなときは、相談レベルでも我々のようなエージェントに問い合わせるのもひとつの手段だ」と沼崎氏は述べる。

2. 中長期的な視点を持つ

また、沼崎氏は「こんなときだからこそ、求職者は自らのキャリアについて『中長期的な視点を持つべき』だ」と強調する。「大前提として、短期的な年収アップのためや、『働きやすそう』『楽そう』ということで転職するのは大変危険だ」。それは、コロナ禍で世の中が大きく変化しようとしている現在なら、なおさらだろう。

続けて同氏は「キャリアを中長期的に見据え、40代、50代ではどのようなキャリアを築いていたいのか、そのためにはいまどのような経験を積むべきかを考えることが大切だ」と述べる。必要な経験を積まなければ、すぐに市場価値は下がり、キャリアの選択肢が閉ざされてしまう。

政府が「人生100年時代」を掲げているように、高齢化が進む日本では、より中長期的な視点でキャリアを構築していく必要がある。「しっかりと経験を積みスキルを向上させれば、結果的には年収や時間、働く環境も自らがイニシアティブを持ってコントロールできるようになる」。焦りや目の前の欲求に左右されることなく、10年先、20年先を見据えたキャリアプランを描くことで、選択肢が増えるというわけだ。

3. 副業よりもまずは本業を

さらに沼崎氏は、現在の副業ブームについても「キャリアアップとのトレードオフになる可能性がある」と述べる。

2017年3月、政府は「働き方改革実行計画」を発表。同計画には「柔軟な働き方がし易い環境整備」のひとつとして、「副業・兼業の推進に向けたガイドラインや改定版モデル就業規則の策定」が挙げられている。これを受け、ここ数年で副業を解禁する企業も多数出てきており、世の中的にも少しずつ副業が容認されつつある。

しかし、こうした状況に対して、沼崎氏は警鐘を鳴らす。「副業をしている方の中には、いま持つスキルの切り売りで仕事を請け負っているケースが多い。そうした状況では、新しいスキルのキャッチアップはかなり難しくなるだろう」。自らのスキルを切り売りすることばかりにリソースを割いてしまうと、ある程度の収入アップは望めるかもしれない。しかし同時に、成長の機会を逃すことになりかねないというのが、同氏の主張だ。

「まずは本業でのスキルアップに注力して欲しい。もしくは、自分がいま成長できる環境にいるのかを問い正して欲しい。本業でのスキルアップができないと、自身の市場価値が下がっていく可能性がある」。コロナ禍でポテンシャル採用が減少傾向にあるなか、ハイスキル層は別として、いまは現在の職場で少しでも自らのスキル向上を図るか、それが可能となるような環境作りを優先すべきだろう。

4. 支援会社での経験を大切に

加えて「広告会社、コンサル会社、SIなどの支援会社から大手事業会社への転職意向が、従来以上に高くなっている点に懸念を感じる」と沼崎氏。こうした求職者の大半は、ある種の幻想を抱いていることが多いという。「幻想とはたとえば、大手事業会社の方が『働きやすそう』『社員に優しそう』『自社データを扱えそう』『予算を握ってるので好きなことができそう』などだ。コロナ禍で先が見えない不安から、こうした偏ったイメージに飛び付くのは、あまりにも危険だ」。

同氏はこうした偏ったイメージを持つ求職者に対し、以下のように提言する。「特別にその会社やプロダクトへの思い入れがない限り、20代や30代半ば位までは支援会社での経験を積むことを推奨している」。その理由は以下のふたつだという。

・事業会社では汎用的なスキルを習得し辛い

支援会社では、業種・業態・規模を問わず多くの経験を積める。また、プロジェクト単位で社内の先輩やパートナー、クライアントから多くのことを学ぶ環境が備わっている。一方事業会社では、その業界やその会社での経験しか積めないことが多く、ノウハウもその会社で蓄積されたものに限られてしまう。20〜30代半ばのうちは、引き出しを増やしておくという意味で、支援側でしっかり経験を積むことを優先して欲しいというのが沼崎氏の主張だ。

・調整業務に追われ、自己実現が困難なケースが多い

また、大手事業会社はプロパー社員が出世し易かったり、組織構造が縦割りであるケースが多い。そのため、中途入社で来た人材がいくら優秀でも、思うようにキャリアアップが果たせなかったり、社内調整に一苦労し、大きな時間を割かれることも多分にあるという。「特にDX関連の職種は、社内外のスタッフを巻き込み、部署を横断するプロジェクトに関わることが多い。そのため、こうした状況に陥るケースが多い」。

こうした提言は、冒頭で述べたように、IBMで事業責任者を務めた経験を持つ沼崎氏だからこそいえることだ。「一概にはいえないが、デジタル人材として中長期的にキャリアを形成していくのであれば、まずは支援会社で経験を積むべきだ。また、広告・マーケティング領域だけではなく、DXや経営周りを支援する会社であれば、広範な領域に渡って、多くの会社で必要とされる経験・スキルを積むことできるだろう」。

5. 慎重な選択を

そして、最後のポイントとして沼崎氏は「キャリアに関する選択は慎重にした方が良い」と語る。同氏によると、世の中にはエージェントに騙されるように転職し、失敗した求職者がとても多くいるのだという。失敗するとキャリアに傷がつき、年齢とともに軌道修正するのが非常に難しくなってしまう。

「求職者の方にはまず、目先の待遇や働き方に飛びつく前に、自らがきちんとキャリアを積み続ける意識を持って行動しているのか、またそれを叶えられる環境に自分がいるかを考えてほしい。人生100年時代。我々も、短期的な不安や不満を解消するのではなく、中長期的に人生を豊かにするためのキャリア構築をお手伝いしたい」。

 

名称未設定-9▼沼崎弘
株式会社ウィンスリー シニアコンサルタント

 

IBMにて、エンジニア、プロジェクトマネージャーとして主に金融機関におけるシステム開発業務に従事。テクニカルセールス部長、営業部長、事業責任者を歴任。ベンチャー企業の取締役、ITに特化した人材紹介事業の立ち上げを経て現職。 人の可能性を引き出すのが得意。

 

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