※この記事は、ミレニアル世代のビジネスパーソンを主要ターゲットに、政治、経済、金融、テクノロジー、企業戦略、スポーツなど幅広い分野のニュースを日々配信している「Business Insider Japan」からの転載です […]
※この記事は、ミレニアル世代のビジネスパーソンを主要ターゲットに、政治、経済、金融、テクノロジー、企業戦略、スポーツなど幅広い分野のニュースを日々配信している「Business Insider Japan」からの転載です。
法人カードで急成長しているUPSIDER(アップサイダー)と、次世代のインターネットTVで業界に新しい風を吹き込んでいるAbemaTV社(アベマTV)。BtoBとBtoC、設立間もないスタートアップと日本を代表するメガベンチャーの子会社というように、業態やターゲット、企業規模がまったく異なる2社だが、ある共通点がある。それは、挑戦し続けること、そして効果的にタクシー広告を出稿していることだ。両社はタクシー広告にどのような可能性を見出したのか。マーケティングのキーパーソンに狙いを聞いた。
タクシー広告は、クライアントにとって営業の武器になる
上杉桃子(うえすぎ・ももこ)氏/UPSIDERマーケティング責任者
法人カードの「UPSIDER」やビジネスあと払いサービス「支払い.com」を提供するUPSIDERの設立は2018年。スタートアップ企業ということもあり、創業当初はプロダクトや営業にリソースを投下する必要があり、マーケティングに予算がついたのは設立3年目からだったという。まとまった予算をどこに使うべきか。マーケティング責任者の上杉桃子氏が選んだのは、タクシー広告だった。
「私たちは社会を変えようと努力するすべての方の挑戦を金融の側面から支援しています。特に創業したばかりのスタートアップなど、まだ過去の信用が積み上がっていない方々は法人カードをつくれないことがあり、ぜひサポートしたいと考えています。立ち上げ初期からスタートアップ企業のバックオフィスの方々の口コミで利用が広がりましたが、『スタートアップ向けの法人カード』といえばまずUPSIDERと想起されるレベルまで認知を広げるために、意思決定層が乗車する機会が多いタクシー広告に出稿することにしました」(上杉氏)。
そこで、初の出稿に選んだ媒体がタクシーサイネージメディア「GROWTH(グロース)」だ。内容は「UPSIDER」を利用するユーザー企業へのインタビュー動画6本だった。初のタクシーCMに戸惑いもあったが、制作チームと議論を重ねて満足いくものができたという。
「制作のクリエイティブディレクターの方から『UPSIDERのロゴを小さくして、出演いただくユーザー企業のロゴをもっと目立つようにしたほうがいいのでは』と提案いただきました。自分たちのプロダクトを広めたいという気持ちはありましたが、もともと私たちは挑戦者を応援する会社。その思いを理解してくれていて、とてもありがかったですね」(上杉氏)。
クライアントの顧客のことまで考えてタクシー広告をプランニングする姿勢は、「GROWTH」を運営するニューステクノロジーにも共通している。同社で営業を担当するコンサルタントの宮城幸氏はこう解説する。
「タクシー広告がリーチできる母数は必ずしも多くありません。そう考えると単にリーチを広げるという目的だけで終わらせず、ほかの視点も入れ込んだほうがいい。その一つがクライアント様の営業支援です。クライアント様が顧客に営業するときに、『知ってる、あれ見たよ』『CMに出演させてもらってうちの宣伝になった』と思ってもらえたら、それがクライアント様の利益にもつながるはず。あまり表に出していませんが、そうした意識でプランニングし提案しています」(宮城氏)。
「挑戦者を支える世界的な金融プラットフォームを創る」をミッションに掲げるUPSIDER。
配信も工夫をした。UPSIDERを強く印象づけるために、連続して動画を放映。まるでタクシサイネージをジャックしているような体験をつくることができたという。上杉氏は効果を次のように明かす。
「広告を見てお問いあわせいただいた方だけでなく、イベント出展時に『タクシーで見ましたよ』という声がきっかけで話が進む企業様も多かった。月間決済額は私が入社した2022年4月と比べて数倍に成長。タクシー広告が貢献してくれているのは間違いありません」(上杉氏)。
目と耳で情報を受け取れるのがタクシー広告の強み
徳山宗佑(とくやま・そうすけ)氏/AbemaTVマーケティング本部CEグロース室室長
タクシーの乗車はビジネスユースが多く、BtoB企業がタクシーサイネージに出稿するのはわかりやすい例。では、BtoCのビジネスであるインターネットTVは何を目的に出稿したのか。「ABEMA」は番組宣伝の純広告やメディアタイアップを「GROWTH」で展開。その狙いをAbemaTVマーケティング本部CEグロース室室長の徳山宗佑氏はこう語る。
「タクシー利用者はタイムパフォーマンス意識が高い方が多い印象です。タクシーに乗って移動を時短すれば新たな可処分時間が生まれますが、その可処分時間を有効活用いただけるという点で、ビジネスパーソンもお楽しみいただけるコンテンツを幅広く配信している『ABEMA』とタクシー広告は相性がいい。また、『ABEMA』はスマホなどマルチデバイスで提供しているので、移動の多いビジネスパーソンも場所にとらわれることなく気軽にご視聴いただけます。その点でもタクシー広告と親和性が高いと考えました」(徳山氏)。
MLBや甲子園などあらゆるスポーツ情報のタイアップ広告を放映。
徳山氏が成功例としてあげたのは、2022年にテレビ朝日とタッグを組んで全試合生中継した「FIFAワールドカップ カタール2022」のタイアップ広告だ。
「ワールドカップのタイアップ広告は、LiSAさん書き下ろしの番組公式テーマソング『一斉ノ喝采』や川平慈英さんのナレーションが印象に残ったという反響が多かったです。タクシー広告は、街頭ビジョンやほかの交通広告と比べて、プライベートな空間で目の前にあるモニターの映像を受け取る構造のため、情報やコンテンツが受け取り手の印象に残りやすい。目と耳でコンテンツを受け取れる『GROWTH』ならではの効果を感じられた取り組みでした」(徳山氏)。
この広告のプランニングにも裏話がある。メディアタイアップは「GROWTH」のオリジナル情報番組「HEADLIGHT」の中で配信される。メディア枠は数週間前に事前収録するが、ワールドカップの進行はリアルタイム。「頑張れニッポン」と応援しているのに、実際にはすでに日本代表が敗退していると、うまくかみ合わないおそれがある。そこで「GROWTH」側は次のような工夫をした。
「実験的に日本代表が勝ったパターンと、勝ち負けに触れないパターンの両方をつくりました。そして試合の翌日には結果に合わせたパターンを流して違和感がない仕様に。タクシー広告は家で自分の好きなタイミングで見るのと違って、偶発的に遭遇するもの。そのタイミングで時節性をきちんととらえた情報が流れると、ユーザーからの注目度は増すはず。実際、見た方からは『生放送みたいでした』と反響をいただきました」(宮城氏)。
時節性や更新性のある情報がユーザーの役に立つ
二つのパターンを用意したABEMAの取り組みは、あくまでも実験的なものである。ただ、もともと「HEADLIGHT」は番組そのものが時節性を重視したつくりになっているという。
「毎週乗っているのに動画の内容が毎回同じだと、次第にBGM化して乗客に見られなくなってしまう。そこで『HEADLIGHT』では最新イベントや新商品を取材して、更新性のある情報を流しています。それとセットになっていることでタイアップ広告もより見ていただきやすくなると考えています」(宮城氏)。
オリジナル番組「HEADLIGHT」のプラットフォームに乗せることで、ユーザーは押しつけ感を抱くことなく、クライアントが伝えたい情報を受け取ることができる。この関係ができれば「GROWTH」の広告媒体としての価値も高まる。まさに三方良しだ。タクシーサイネージを中心として共生関係が構築されつつあるが、「GROWTH」はここで進化を止めるつもりはない。最後に宮城氏は今後の展望を語ってくれた。
「『HEADLIGHT』は今年10月で1周年。既存のフォーマットが仕上がってきましたが、今の形にこだわるつもりはありません。たとえば年間を通してタイアップのミニ番組を配信するのもおもしろいし、最近は訪日客のタクシー利用が増えているので、インバウンド向けのメニュー開発も検討しています。今はスマホがあれば何でも検索できる時代。だからこそ「興味の一歩外側」にある情報をクライアント様と一緒にタクシーで発信して、ユーザーの役に立てるような仕掛けを今後も考えていきたいですね」(宮城氏)。
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