昨年からポートフォリオを一新し、アドテク企業からパブリッシャー支援のリーディングカンパニーへの転換を図ろうとしているのがFLUXだ。2021年3月から新ミッションを掲げ、経営基盤の強化を図るなど、着々とその地歩を固めつつある。CBDOである平田慎乃輔氏に、2022年以降に同社が目指す姿を聞いた。
混沌とした世界情勢に比例するかのように、パブリッシャーの直面する課題も多岐にわたっている。
GoogleやAppleによるサードパーティCookieの規制強化、ブランドセーフティ対策、改正個人情報保護法への対応など、パブリッシャーはアドテクやコンテンツによるマネタイズだけでなく、同時に顧客のプライバシー保護やデータマネジメントにも向き合っていかなければならない。
そうしたさまざまな課題を抱えるパブリッシャーの強力なパートナーとなりうるのが、ヘッダービディングソリューションのリーディングカンパニーであるFLUXだ。現在FLUXは、ヘッダービディングをはじめとするパブリッシャーのマネタイズ支援プロダクトを提供する企業というポジションから、マネタイズそのものを自動化をする、ノーオペレーションソリューションを提供する存在への転換を図ろうとしている。
2021年3月31日にはシリーズAでの10億円の資金調達を実現。「テクノロジーを、カンタンに。企業と人の可能性を最大化する。」という新たなミッションの実現に向け、同12月には経営体制を一新して、経営基盤の強化を図るなど、着々とその地歩を固めつつある。FLUXが目指す「パブリッシャー支援のリーディングカンパニー」とはどのような姿なのか。同社の取締役CBDO(Chief Business Development Officer:最高事業開発責任者)である平田慎乃輔氏に聞いた。
――2021年末に経営体制を一新し、パブリッシャーの広告収益化だけに留まらず、マーケティング全体に領域を広げているかと思います。その意図は?
FLUXは2018年の創業から2020年までヘッダービディングソリューションに特化して取り組み、その領域ではリーディングカンパニーと言われるポジションまで成長することができました。それに伴って、クライアントであるパブリッシャーのご相談に答える形で、周辺ツールの開発、実装を行い、2021年にはプロダクトの数が18まで増えました。
そこで昨年は、そのプロダクト群を「収益」「データ」「CMS」の3つに整理し、プロダクトを組み合わせて、パブリッシャーごとに最適な課題解決を提案できるようにしました。これにより、クライアントのニーズにきめ細かくなり応えられるようになりましたし、「痒いところに手が届く会社になったね」という感想も多くいただいています。
――現在のメディア市場の状況をどのように捉えていますか。また、2022年以降はどのように変化していくと見ていますか?
2008年のリーマンショックを契機に登場したと言われるRTBと、それが発展したヘッダービディング。このふたつを超える革新的なアドテクは、しばらくは出てこないでしょう。メディアビジネスをグロースさせる起爆剤となり得るテクノロジーは特になく、停滞しているのが今の市場状況だと思います。それに加えて、サードパーティCookieやITP(Intelligent Tracking Prevention)の廃止、GDPRや改正個人情報保護法の施行は、パブリッシャーの収益にマイナスの影響を与えています。
我々としては、この数年に1度の激変期に小手先のアドテクで対応するのは、本質的な問題解決にはつながらないと考えています。パブリッシャーならば、まずは自社サイト、自社ユーザーに正面から向き合うことが大事ではないでしょうか。
良質なコンテンツの重要性は当然の話として、それをどう届けるか、どのように対価を受け取るかまでを含め、全体を見直す必要があります。今やパブリッシャーは、アドテク、コンテンツといった個々の要素だけでなく、マネタイズそのものにも本腰を入れて向き合っていかなければならないのです。
――そうした変化が2021年のリブランディングにも影響しているのですね。
今後はマネタイズだけでなく、幅広い領域でパブリッシャーのサポートに取り組んでいくことは事実ですが、「パブリッシャーの収益向上に寄与する企業でありたい」という点は変わりません。2021年末に新たに策定したミッションは、「テクノロジーをカンタンに」です。FLUXとそのプロダクトを活用することで、パブリッシャーのマネタイズにおける「負担」を限りなく減らしてほしい。今後は、パブリッシャー向けSaaSのリーディングカンパニーを目指していきたいと考えています。
――FLUXを活用するとは、具体的にどういうことでしょうか?
パブリッシャーの広告収益に携わる担当者は、平均してせいぜい各社2名程度です。わずか数名のリソースで情報収集をし、課題解決のためのプロダクトをプロトタイピングで作り上げるのは、物理的に無理ですし、リスクも費用も無視できません。であるならば、課題の段階で我々にご相談いただけば、その後の時間もコストも節約できます。
つまり、FLUXにご相談いただければ、課題に関連する海外も含めた最新情報の提供・共有、解決策の提示、そのタイミングで解決に最適なプロダクトをご提案することができます。その課題解決の過程で、クライアントが納得する世界観を一緒に作っていきたいと思っています。プロダクトを作るというリスクも含め、パブリッシャーの課題をまるごと引き受けられるところが、我々の最大の強みだと自認しています。
また、プロダクトはノーコードであることが当たり前になりつつありますが、それですら導入する側には様々な負担、定期的にバージョンをチェックし、細かいところをチューニングし続けるといった運用が必要になります。そこで我々は、ノーコードからさらに進み、「ノーオペレーション」を志向することで、パブリッシャーのマネタイズにおける自動化を目指しています。
――パブリッシャーをサポートする、情報提供とプロダクト提供を行う企業はここ最近急増しています。そのなかでFLUXの競合優位性は、どこにあるとお考えですか?
実は我々には競合企業はいないと考えています。まず、FLUXはクライアントであるパブリッシャーに、最適な情報とプロダクトによる課題解決方法を提供する企業です。パブリッシャーの支援を謳う企業の多くがコンサルティングを提供していますが、我々はコンサルタントではなく、あくまでもプロダクトを有する「相談相手」なのです。ここが、我々と他社の大きな違いであり、我々に競合はいないと考える最大の理由です。コンサルティングに比べると、我々への相談は割安で費用対効果も高い。契約継続率はSaaS企業の一般的なチャーンレートが5%と言われているなか、我々は0.2%を誇っています。
もうひとつ強調したいのが、我々のポートフォリオは幅広く充実しており、まったく同じポートフォリオを持つ企業はほかにいない点です。CMSだけでなく、CMP(Consent Management Platform:同意管理プラットフォーム)も持っているので、個人情報保護法、GDPR、CCPAにも対応できます。DSP/SSPとはおよそ40社と契約している。そしてなにより、パブリッシャー出身のメンバーが多い。コンテンツとの折衝経験が豊富で、クライアントの課題感を具体的に把握し、解決することができるメンバーが揃っていると自負しています。
――では、FLUXが今後目指す立ち位置を教えてください。
FLUXはパブリッシャーをサポートする存在ではありますが、サプライサイドに位置する側というわけではありません。サプライサイドとデマンドサイドの間にあって、ややサプライサイド側に寄った位置にいると自認していますし、今後もこのポジションをキープしたいと思っています。単独企業がサプライとデマンドの両方を兼ねていると透明性の問題が出てきますが、この立ち位置だからこそ、双方に対してフェアな姿勢を維持することができるという見方もできます。バランサー的なポジションにいることが、FLUXの事業の特徴であり、強みだと思います。
加えて、FLUXのクライアントには多種多様なパブリッシャーが存在します。デマンドサイドから見れば、FLUXを利用すればサプライサイドを通して実現したいことを、すべて叶えることができるといっても過言ではないでしょう。
もちろん、パブリッシャーに提供する価値をさらに充実させていくことも重要です。今後、我々が日々キャッチアップしている最新情報の提供を核としたパブリッシャー同士のコミュニティを形成し、そのなかで、相互に情報共有することで日本のメディア業界のレベルを上げていきたいと考えています。パブリッシャー支援のリーディングカンパニーとして、業界全体の底上げに関わることには、今後も積極的に取り組んでいくつもりです。
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Written by Written by DIGIDAY Brand STUDIO(内藤貴志)