ブランドを守るため、広告主はいま何をすべきか?:Yahoo! JAPAN 井上大輔氏 ✕ IAB Tech Lab デニス・バッカイム氏

デジタル広告の発展とともに、その品質を巡る課題が問題視されている。たとえば、ブランドセーフティという観点では、広告掲載先がアダルトなど不適切なコンテンツだった場合、広告主のブランド価値が毀損され、消費者との信頼関係に影響を及ぼしかねない。しかし、日本と欧米とでは、その関心度の高さや対策の進度に差があるようだ。

2019年11月28日に開催された、アドテック東京のキーノートセッション、「我々は明日から何をすべきか? – IAB Tech Labと語る、海外における広告品質のトレンドと日本の目指すべき未来 -」。このテーマにふさわしいフロントランナーとして、IAB Technology Laboratory(以下、IAB Tech Lab)※1のエグゼクティブ バイス プレジデント デニス・バッカイム氏が来日した。同氏を招いたのが、IAB Tech LabのボードメンバーでもあるYahoo! JAPAN(以下、ヤフー)だ。

DIGIDAY[日本版]は、アドテック東京での講演を終えたバッカイム氏と、同セッションのナビゲーターを務めた、ヤフー株式会社 メディアカンパニー マーケティングソリューションズ統括本部 マーケティング本部長 井上大輔氏のふたりにインタビューを実施。広告品質をめぐる日本と欧米の動向について、話を訊いた。

向かって左からヤフーの井上氏、IAB Tech Labのバッカイム氏

向かって左からヤフーの井上氏、IAB Tech Labのバッカイム氏

日本と欧米における意識の違い

日本のインターネット業界において、ここ数年、デジタル広告の品質が大きな話題となっている。「GLOBAL Media Charter」※2の日本語版を、日本アドバタイザーズ協会(JAA)が発表したり、ヤフーが「広告品質のダイヤモンド」※3を定義したりするなど、デジタル広告の品質向上に関心が集まる動きが出てきている。

しかし、「日本における、広告の品質向上への対策にはまだ課題があるように思う」と、バッカイム氏は指摘する。「アドテックのセッション中に私が投げかけた、アドフラウドやブランドセーフティの対策をしているか、という問いかけに、手を挙げた人が1000人を超える聴講者の中で数名だったのは印象的だった」。

他方、インテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science:以下、IAS)が2019年8月に実施した調査によると、アメリカではブランド責任者やマーケティング担当者の37%が、ブランドセーフティについて「自分たちに責任がある」と考えているという。広告主が責任を自認しているからこそ、「配信先として望ましいメディアをホワイトリスト化したり、第三者計測ツールを導入し、適切なターゲットに広告が届いているかを検証したりするなど、ブランドの価値を守るための対策が進んでいる」とバッカイム氏は語る。

向かって右からヤフーの井上氏、IAB Tech Labのバッカイム氏

参加者に、アドフラウドやブランドセーフティの対策をしているか問うバッカイム氏

広告品質を重視すべき理由とは

なぜ広告品質を意識しなければいけないのか。IASが2019年8月に実施した調査によれば、日本の消費者の65%が「低品質、あるいは安全ではないコンテンツ環境(テロ、暴力、アダルトなど)に広告が表示された場合、そのブランドの使用はやめる」と回答している。

さらに、「誰がその広告について責任を負うべきなのか」という問いに対しては、66%が「どこに広告が表示されるかは、広告主に責任がある」と回答。広告主の意図せぬ場所に表示されてしまった広告の場合でも、消費者は広告主にネガティブな印象を持つ可能性がある。消費者との信頼関係を維持するためには、日本の広告主も自らの評判を守るために必要なこととして、どこに自社の広告が掲載されているかを、積極的に意識する必要があるのだ。

バッカイム氏も、「欧米では、広告主が広告品質の健全化について取り組むことは、消費者のためでもあり、ひいては広告主自身のためでもある」と述べている。

「広告主は、まず何をするべきか」

日本の広告主は、広告品質の健全化に向けて、具体的に何をすればよいのか。その糸口は、セッション終盤の井上氏とバッカイム氏のやり取りから見て取れる。

井上氏は、バッカイム氏に次のように質問する。「日本でも、外資系や一部の大手ブランドはブランドセーフティなど広告掲載面の品質担保を重要視している。しかし、CPAやCPCといった実績のほうに意識が行きがちで、そこにはあまり予算をかけない企業も多いのが実情だ。予算に制限があり、かけたくてもかけられない広告主もいる。そのような場合、まず何をするべきか」。

セッション中、ヤフーの果たすべき役割について言及する井上氏

セッション中、バッカイム氏に対し質問を投げかける井上氏

 

この問いかけに対し、バッカイム氏は次のように応えた。「アメリカやヨーロッパでは、IASやMOATなどのパートナー企業の第三者計測ツールを活用し、広告掲載面の品質や、広告がどこに表示されているか、誰に表示されているかを確認している。メディアに対して抑止力をきかせるためにも、まずはそうした手段について知識を身に着けるべきだ」。

「それを踏まえて、自分たちはブランドセーフティを重視していることを消費者にも訴え、自分たちが考える適切なメディアに出稿していく。これは上記のような抑止力にも繋がるし、ある意味自分たちへの戒めともなる」と、バッカイム氏は続ける。

インターネット広告の品質向上は、無論ブランドセーフティやアドフラウド対策だけで実現できるわけではない。それらに加えて、ビューアビリティ、プライバシーなどさまざまな課題を包括的にとらえ対策を講じる必要がある。そのためにも、まずは知識を身に着けること、知識で武装することが重要だ。

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※1 IAB Tech Lab:広告主、代理店、メディア、テック企業などが参加している、デジタル広告の国際標準仕様を定めるNPO団体。デジタル広告市場拡大のため、世界共通で利用できる技術インフラを築いている。ブランドセーフティ、ビューアビリティ、プライバシーなど、IAB Tech LABが掲げる国際標準仕様ポートフォリオの詳細はこちら
※2 WFA(世界広告主連盟)が、広告品質の課題に対して、アドバタイザー、エージェンシー、メディア、プラットフォーマーが守るべき原則をまとめたもの
※3 Yahoo! JAPAN「広告品質のダイヤモンドの取り組み」

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Written by DIGIDAY Brand STUDIO(滝口雅志)
Photo by 合田和弘
Source:Integral Ad Science 2019年8月「The Ripple Effect オンライン調査」