自宅待機 に機会を見出す、オンライン学習のマスタークラス:「我々には果たすべき役割がある」

最近、何も考えずにインスタグラムをスクロールしたり、YouTubeでチュートリアルを見たりして過ごしている人は、豪華な著名人たちを講師陣に揃えたオンライン学習プラットフォーム、マスタークラス(Masterclass)の広告を目にする機会が増えているはずだ。

おそらく、ナタリー・ポートマンに演技レッスンを受けないかと誘われたり、ゴードン・ラムゼイに料理教室の売り込みをされたりしているだろう(筆者の場合、ジュディ・ブルームとデビッド・リンチの講座の予告編をよく見る)。現在、マスタークラスには約80人の著名人講師がいて、講師や予告編は広告を見る人の関心によって変わる。しかし、マスタークラスの広告の増加が一部の人々にとって、隔離された奇妙な暮らしの柱になっていることは確かであり、その証拠に、サタデー・ナイト・ライブ(Saturday Night Live)もマスタークラスの広告のパロディを公開している。このパロディ広告では、マスタークラスが新コンテンツ不足に陥り、ジョジョ・シワやティモテ・シャラメのクラスを新設せざるを得なくなっている。

マスタークラスでは3月上旬、既存会員による講座の視聴時間が増えはじめた。同時に、予告編の視聴頻度が増加した。ただし、エンゲージメントがどれくらい増加しているか、新規会員がどれくらい増えているかについては同社は明かしていない。

マスタークラスのCMO、デイビッド・シュライバー氏は、広告が最後まで見られていることについて、「マーケターが夢見ていることだ」と喜ぶ。ただし、現在置かれているような状況を望むブランドはいないとも言い添えている。「我々には果たすべき役割があると実感するきっかけになった」。

マスタークラスは現在の危機の「勝ち組」グループに属する。旅行、小売などの業界は生き残りを懸けて闘っているが、世界中の人々が自宅に閉じこもったことで、大手消費財企業や自宅フィットネス関連企業、ストリーミングサービスやオンライン学習は恩恵を受けている。

広告費を増やしたわけではない

インスタグラムをはじめ、さまざまなチャンネルでマスタークラスの広告を見かけるようになったが、広告費を大幅に増やしたわけではないようだ。現在の広告費は、重要な講座を立ち上げるときと同じくらいだという。マスタークラスの広告を目にする機会が突然増えたことについて、シュライバー氏は次のように説明している。「マスタークラスの会員ではないが、会員と明確な類似点がある人々は(現在)、我々の広告を頻繁に見るのではないかと思う。その結果、実際の広告数が曲解されているのだろう」。

シュライバー氏はマスタークラスのターゲット市場を「キャリアや家庭生活を通して自分の道を見つけようとしている30代」と表現している。マスタークラスの広告が増えたかと該当する人々に質問すれば、増えたと断言するはずだ。

シャーマ・ブランズ(Sharma Brands)の創業者であるニック・シャーマ氏は、ターゲットオーディエンスに広告を見せる頻度が変化した結果かも知れないと分析する。「明確なオーディエンスがいる場合、特に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下では、同じオーディエンスあるいは全体のインベントリー(在庫)が増加する」と、同氏は話す。「そのため、おそらく頻度は上昇している。その結果、人々は同じブランドをよく目にすると感じているのだろう」。

一部の広告主は危機を理由に、広告支出を削減あるいは完全に停止している。そのため、テレビが安価になり、そして「より多くの人々とコミュニケーションを取るには、FacebookやYouTubeのようなデジタルチャンネルを利用するのが『効率的』になった」と、シュライバー氏は説明する。同氏によれば、マスタークラスはほかのD2C(Direct-to-consumer)ブランドと同様、ROAS(広告費用回収率)をメディアミックスの指標にしているという。

そうした変化のおかげで、マスタークラスはヴォーグ(Vogue)のアナ・ウィンターによる「ボスになる方法(Learn How to Be a Boss)」など、重要な講座を立ち上げるときとほぼ同等の広告費、メディアアプローチを維持できるのだろう。そして、人々はマスタークラスの広告が増えたと感じているのだろう。

「いまは攻めで出稿するのが賢明」

Wプロモート(Wpromote)のソーシャル担当バイスプレジデント、ケビン・サイモンソン氏は「資金的な余裕があり、消費者行動の変化と合致している場合、いま攻めの姿勢で広告を出すのが賢明だ」と話す。

マスタークラスの広告を以前より多く見るようになった人も、見ている広告の内容はコロナ危機以前とほぼ同じだ。ただし、広告の最後に、「“buy one, share one”(バイ・ワン、シェア・ワン)」というメッセージが表示されるようになった。4月末まで行われていたこのプロモーションは、新規会員が自宅で退屈している友人や親類ひとりにサブスクリプションをプレゼントできるというものだった。Facebook、インスタグラム、LinkedIn(リンクトイン)、Twitter、YouTubeなどのデジタル広告は変わらず、関心に合った特定講師の予告編を表示しているようだが、テレビ広告ではブランド認知度を高めるためのメッセージを発信し、講師や講座の多様さを宣伝している。

シュライバー氏は相手に合わせたデジタルマーケティング手法について、「現在、約80人の講師陣がいる。オンラインでジュディ・ブルームのファンを探すことは、ただテレビで広告を流すこととは違う」と話す。「Facebook(などのプラットフォーム)を通して得られるツールを用いて、ある人をターゲットに、その人がもっとも関心を持ちそうな講師とつなげることができる。我々にとっては、とても効果的なメディアだ」。

マスタークラスの広告における変化はもうひとつある。4月下旬、(ロサンゼルスの)サンセット大通りの広告板に広告を出したのだ。「記録的な数の人や車がこの場所を通り、広告を見るわけではないことはわかっていた」とシュライバー氏も認める。「それでも、あの通りに広告を出している大手ストリーミングプラットフォームと肩を並べられるのは面白いことだ」。

マスタークラスの未来を考えると、理にかなっているのかもしれない。「私はNetflixやDisney+のようなスタイルのストリーミングサービスと捉えている。ただ知名度が低いだけだ」と、サイモンソン氏は話す。「(彼らは)ストリーミング行動が拡大しているとわかったうえで、より多くのユーザーを獲得するために広告を出しているのだ」。

「自宅待機」時代の影響を受けて

米国が新型コロナウイルスの直撃を受けたことで、マスタークラスは新しい講座の内容を見直し、人々の自宅をより良くするためのコンテンツを優先することにした。インテリアデザイナーのケリー・ウェアストラーによるインテリアデザイン講座、ガーデニングの専門家ロン・フィンリーによるガーデニング講座などだ。

「これらの講座の制作をはじめたとき、このような状況になるとは予想していなかった」と、シュライバー氏は語る。「だが、完成したとき、いまこの瞬間、特に有意義な講座になると確信した」。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)