「水」がいまソーシャルメディア上でトレンドになっている。ウォーターボトルの力を借りて水を飲むよう訴えるコミュニティの増加、SNSで人気のウォータータンブラー、フレーバーカートリッジなどの登場によって、水を飲む訴求が高まっている。
水がいまソーシャルメディア上でトレンドになっている。たとえあなたが誰であろうと、そしてインターネットのどこにアクセスしようとも、なんらかのウォーターボトルの助けを借りてもっと水を飲むように訴えかけるコミュニティがいたるところに存在するのを目にするはずだ。
定番のナルゲン(Nalgene)やそのコラボ商品から、ビーカー(bkr)のボトル、スウェル(S’well)にいたるまで、昔から「ステータス」のあるウォーターボトルは存在していた。2019年には、プカシェルネックレスにビルケンシュトックというファッションのヴィスコ(VSCO)ガールと呼ばれる若者が台頭、彼女たちが必ず手にしていたのが、ハイドロフラスク(Hydro Flask)のウォーターボトルだった。しかし最近の在宅ワークの時代、とくにコンテンツが限られているなかで、これまで注目されていなかったウォーターボトルが脚光を浴びている。ハッシュタグ「#Hydration」は栄養、フィットネス、美容に関するコンテンツとリンクしていることが多く、TikTokでの再生回数は1億6500万回に達している。
SNSで人気に火がついたウォータータンブラー
TikTokで120万人のフォロワーがいるアカウント「@itsmetinx」のクリスティーナ・ナジャール氏は、2020年10月にボトルメーカーのシンプルモダン(Simple Modern)のクラシックタンブラー(Classic Tumbler)をファンに紹介した。彼女いわく、友人(そして元ヴィクトリアズ・シークレット・エンジェル)のジャスミン・トゥークス氏とサラ・サンパイオ氏に影響されて購入したそうだ。「文字通り、私の人生を変えた。赤ちゃんの哺乳瓶みたいにボトルを持ち歩いて、100%水分補給をしている」と2020年10月に投稿したところ、460万回再生され、81万の「いいね!」を獲得した。ストローがついているので彼女はそのタンブラーを「大人のためのシッピーカップ」にたとえている。
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「Tinxが投稿してから2時間後に、友人や家族からテキストがきはじめて、ねえ投稿がすごくバズってるよと言われて、見てるのが楽しかった。それまでは私たちはTikTokをあまり利用してなかったので」と話すのは、シンプルモダンCMOクリス・ホイル氏だ。同社は株式非公開の企業であり、業績も公にしていない。しかしホイル氏によるとTinxのサポートは会社に「好影響」を与えたという。
一方で1913年からウォーターボトルを製造しているスタンレー(Stanley)の場合、愛好者から「クエンチャー」や「ザ・カップ」と呼ばれている「アドヴェンチャークエンチャートラベルタンブラー(Adventure Quencher Travel Tumbler)」が新たな盛り上がりをみせている。最初に人気が出たきっかけは「ザ・バイガイド(The Buy Guide)」というショッピングブログで、現在ではウェブページ全体で「ザ・カップのストーリー」を紹介している。
ユタ州に住むインフルエンサーで母親のレイチェル・パーセル氏もそんなファンのひとりだ(インスタグラムのフォロワー数は110万人)。スタンレーのグローバル・プレジデントであるテレンス・ライリー氏はによれば、最初に人気が出たのは主に口コミによるものだった。2020年11月から2021年6月7日までの間に、クエンチャーは3万3000人のウェイティングリストを獲得し、6月7日に再入荷された際には5時間で完売した。現在、ウェイティングリストは2万3000人に戻っている。以降、同ブランドは有料のインフルエンサーマーケティングに取り組み、ペロトン(Peloton)社のインストラクターであるエマ・ラヴウェル氏やコートニー・クイン氏(インスタグラムのアカウントは@colormecourtney、フォロワー数75万2000人)といったインフルエンサーと協力体制を築いている。ライリー氏はクイン氏のことを「重要な」インフルエンサーと呼び、パートナーシップを結んで以来、彼女が有機的に製品をシェアしていると指摘した。この人気はまだまだ続く。6月23日には「ザ・バイガイド」が12万人のフォロワーに向けてインスタグラムに投稿、ザ・カップが完売する前に注文できなかった人たちに向けた販売促進に貢献した。
水分補給のサポーター的役割
ウォーターボトルや小さなフレーバーウォーター用のキューブを販売するウォータードロップ(Waterdrop)も、インフルエンサーやそのオーディエンスに人気がある。オーストリアのこのブランドは、グレース・アトウッド氏(インスタグラムのフォロワー数16万9000人)やエミリー・シューマン氏(インスタグラムのフォロワー数54万8000人)といった人気のライフスタイル・インフルエンサーと有料のパートナーシップを結んでいる。「ライフスタイル、健康、ウェルネス、ホームの分野で、マクロやミクロを問わず何百人ものミレニアル世代のインフルエンサーと仕事をしてきた」、とブランドのCEOで共同設立者のマーティン・マレー氏は言う。このブランドは「とくに、インフルエンサーとして有名になろうとしている20~30代の若い母親や女性に人気がある」とのこと。この戦略によって、ブランドのインスタグラムのフォロワーは4月に米国でローンチして以降、100%増加している。
インスタグラムではライターのダニエル・プレスコッド氏が「ウォーターカルト(Water Cult)」(インスタグラム上で彼女が作った言葉)というストーリーのハイライトを作成し、ハーフガロン(約1.9リットル)や1ガロン(約3.8リットル)のウォーターボトルを購入してそこに自分をタグ付けした人々を記録している。
クロエ・カーダシアン氏とキム・カーダシアン氏も、「目標を忘れない」「あきらめない」「そのまま続けて」といったやる気の出るフレーズが書かれた自分たちのウォーターボトルを投稿している。クロエ・カーダシアン氏が持っている18ドル(約2000円)のファイダスモチベーショナルウォーターボトル(Fidus Motivational Water Bottle)は、Amazonでは、1万8000近くの評価がつけられており、多くの人が「笑えるほど大きい」とコメントしている。また、実際に水分補給に役に立ったのはこれだけだと力説する人もいる。おもしろいことに、TikTokで34万2000人のフォロワーがいてソーシャルメディアで存在感を示している別のブランドのコールデスト(Coldest)は、そのアマゾンのガロンボトルとの温度維持技術を比較するスポンサー広告を同じプラットフォーム上で展開している。腹話術師でTikTokのフォロワーが180万人いるインフルエンサー、ミーガン・ケイシー氏は、1月にコールデストの宣伝動画を投稿し、製品の違いを紹介している。
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なかなか水分を摂れない人向け商品も
登録栄養士のチェルシー・ゴラブ氏は「どのくらいの水を飲むべきかを簡単に知るには、体重をポンドで表してそれを2で割った量(オンス)」を目安にするといいと説明する(訳註:体重50キロの場合、約123.5ポンドとなり、それを2で割ると61.7オンス=約1.8リットルとなる)。
「水を十分に飲まないと、脱水症状を引き起こし、めまい、頭痛、疲労感、口や肌の乾燥、便秘などの症状が出てきます」(ゴラブ氏)。水分の取りすぎは滅多に起こらないが、それにもリスクがあることに注意しなくてはならない。実は症状がこれらの脱水症状に似ていることがある。
ただしほとんどの人は十分な水分補給にはまだ少し足りていない。なかなか水分を摂れない人のためにぴったりなのが、サークル(Cirkul)だ。サークルはウォーターボトルを販売しているが、主力商品はユーザーがフレーバーの度合いをカスタマイズできるフレーバーカートリッジだ。再利用可能なウォーターボトルと同様に、フレーバーはリフィル10回分まで使用でき、環境に配慮した製品となっている。カートリッジが使用するプラスチックはゲータレードのボトル1本分と同じ量だとサークルの共同設立者ギャレット・ワゴナー氏は説明している。
サークルは2018年にローンチされた会社だが、現在注目されており、2020年12月から2021年3月の受注額が300%以上に成長している。TikTokのハッシュタグ「#cirkulwaterbottle」は現時点で3800万回再生されている。動画では水の色を変えずにフレーバーをつけるこの製品の仕組みに衝撃を受ける人が映し出される。このブランドの「ブリューシップス(Brew Sips)」というフレーバーは、水をまるでラテのような味にすると多くの人が言う。
「特にTikTokやそのプラットフォームでの認知度が向上して、製品が進化していくにつれて、新しい顧客がエコシステムに入ってきます。Z世代やミレニアル世代の人々は、環境に関心がある。この製品はプラスチックが少ないし、ヘルスコンシャスなのだ」(ワゴナー氏)。フレーバーカートリッジのほとんどがカロリーゼロで、ステビアなどの砂糖代替品を使用している。「基本的に人々は水をもっと飲みたいと思っているが、なかなかできずに苦労している」。
[原文‘Water cult’: #Hydration is trending on social]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)