Googleは1月第3週にサードパーティ製クッキーを2年以内に排除する計画を発表した。同社は、本件に関して、ウェブの標準化団体のワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(通称W3C)と提携している。ほかの業界団体とは異なり、W3Cに積極的に参加しているパブリッシャーやマーケターはごく少数だ。
Googleは1月第3週にサードパーティ製クッキーを2年以内に排除する計画を発表した。同社は本件に関して、ウェブの標準化団体のワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)と提携している。だが、IAB(インタラクティブ広告協議会)など、ほかの業界団体とは異なり、W3Cに積極的に参加しているパブリッシャーやマーケターはごく少数だ。
このニュースを発表した1月第3週のブログ記事のなかで、Google Chromeのエンジニアリング担当ディレクターのジャスティン・シュー氏は、ウェブ全体のエコシステムの関係者に対し、W3Cの提案に対するフィードバックを、ソフトウェア開発プラットフォームのGitHubまたはW3Cによる「ウェブ広告事業改善グループ(Improving Web Advertising Business Group)」を通じて行うよう呼びかけた。同グループはGitHubのリポジトリのなかで各提案について議論するとともに、月2回のペースで電話会議を行っている。
パブリッシャーは1社のみ
ウェブ広告事業改善グループには現在60社以上が参加しているが、そのうちパブリッシャーは1社のみとなっている。それがワシントン・ポスト(The Washington Post)で研究実験開発チームの広告エンジニアリングディレクターを務めるアラム・ザッカー・シャーフ氏だ。同氏はワシントン・ポスト紙の代表ではなく、個人として掲載されている(この件についてザッカー・シャーフ氏からの回答は得られなかった)。
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ほかにも家具のネット通販大手ウェイフェア(Wayfair)から2名が参加している。ただし広告主としての参加か、パブリッシャーとしての参加かは不明だ(ウェイフェアにコメントを求めたが、本記事の公開までに返答はなかった)。同グループのメンバーにはGoogleやApple、Facebook、Twitter、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)、マイクロソフト(Microsoft)、IABテックラボ(IAB Tech Lab)などの企業や組織からの参加者も含まれている。Googleのプライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)構想以外にも、ベライゾン・メディア・グループ(Verizon Media Group)やザ・トレード・デスクによるリアルタイム入札のユースケースについて話し合いがもたれている。
カフェメディア(Cafe Media)のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるポール・バニスター氏は、1月第3週のGoogleによる発表まで「ウェブ広告事業改善グループ」を知らなかったという。だが同時に、これまでGoogleは将来的なサードパーティ製クッキーの排除についてその予兆を見せていたと語る。たとえばGoogleは、プライバシーサンドボックス構想を昨年8月に発表し、同社のエンジニアがクッキーを使用しないオンライン広告機能をパブリックフォーラムのGitHubで提案している。
「参加するなら、いまだろう」と、バニスター氏は語る。パブリッシャー各社はプレビッド(Prebid)やW3Cといった業界団体や組織に参加して、活動に貢献すべきだという。ウェブや広告の標準について、「パブリッシャーがもっと参加して活動すれば、影響力を発揮できるはずだ」と、同氏は語る。
パブリッシャーはウェブの標準について、これまで積極的に参加しなかったと、とある専門家は米DIGIDAYに対して指摘する。
4A’s・ANAにとっても不意打ち
ディストリビューテッド・メディア・ラボ(Distributed Media Lab)のCEOデイビッド・ゲーリング氏は「現在、こういった議論に参加できるだけの技術的な知識と、政治的駆け引きに長けたパブリッシャーのエンジニアは非常に少ない」と語る。Googleとガーディアン(Guardian)の役員を務めたゲーリング氏は、Googleとしてもこの議論にパブリッシャーが参加して欲しいはずだと指摘する。プレミアムパブリッシャーはコアビジネスである検索事業にとって重要な存在だからだ。
ウェブブラウザ企業のモジラ(Mozilla)でストラテジストを務めるドン・マーティ氏は「Googleのオンライン技術分野において、大手パブリッシャーはあまり積極的に関わってこなかった」と語る。だがこの傾向も変わりつつあると同氏は指摘する。「未来志向のパブリッシャーは、新たなことを可能にするウェブ技術や組織による取り組みに興味を示すようになりつつある」という。
今回のウェブ上のエコシステムに関わる取り組みについて、広告業界の重鎮である全米広告業協会(4A’s)と全米広告主協会(ANA)は1月16日に次のような声明を発表した。「Googleがデジタルおよび広告業界全体で事前に慎重な協議を行うことなく、このような大きな変更を一方的に宣言することに深い失望を覚える」。ANAグループのガバメントリレーションズ担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるダン・ジャフィ氏によると、両団体の代表はその後にGoogleの代表と会談を行い、同社が広告業界と話し合いに応じることを確認したという。
だがジャフィ氏は今回のGoogle Chromeの発表について「(ほかの業界団体のなかには)驚いている人や、不意打ちをくらったと感じている人も大勢いる」と明かし、次のように述べた。「(いま)重要なことは、コミュニティ全体で機能するものを見出すことだ」。
「市場に緊張関係が生まれる」
世界広告主連盟(WFA)のCEOを務めるステファン・レールケ氏は、サードパーティ製クッキーの使用をやめるという今回のGoogleの決定によって「市場に緊張関係が生まれる」としている。同氏は、これまですでに多くの広告主がサードパーティ製クッキーの段階的な廃止とファーストパーティデータの採用に備えて戦略的な移行に取り組んできたと主張し、そのなかでこういった発表をすると意図しなかった結果をもたらす可能性もあると懸念する。
「(プラットフォームから広告コミュニティへ)協力したいという働きかけは以前よりも高まっている」と、レールケ氏は語る。サードパーティ製クッキーについても「当団体のメンバーとGoogleとのあいだでも話し合いは行われてきた」という。
同氏は業界の垣根を超えた最新の取り組みとして、WFAが主導する「責任あるメディアの実現に向けた世界同盟(Global Alliance for Responsible Media)」を挙げる。この取組にはGoogleやFacebookといったプラットフォーム、P&Gやディアジオ(Diageo)といった広告主、グループ・エム(GroupM)やオムニコム(Omnicom)といったエージェンシーグループが参加している。
Googleはオープンマインド
シュー氏は、Googleの社員として、パブリッシャーや広告主、そしてIABテックラボをはじめとする業界団体を通じて参加した企業を含め、各社が提案に参加してくれたことを嬉しく思うとしている。
「Googleは大手広告業界団体と積極的な協力関係にある。最新のブログ記事も、提案についてさらなる協力を呼びかける内容になっている」。
Lara O’Reilly(原文 / 訳:SI Japan)