インフルエンサーとブランドとの関係は、ここ2年間で変化のスピードが加速している。ブランドは競争に勝つために何をしているのか。インフルエンサーマーケティング業界の動向を探るため、Glossy Influencer Forcastでは精鋭のマーケティングリーダーたちを招き、3つのトレンドに注目した。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy+」の記事です。
インフルエンサーとブランドとの関係は、過去10年にわたってつねに進化してきたが、ここ2年間で変化のスピードが加速している。Covid-19のパンデミックによってデジタルマーケティングが注目を集め、TikTokやツイッチ(Twitch)などのプラットフォームが「旧来の」ソーシャルネットワークに挑戦し、マーケターはZ世代の消費者の心をつかもうと躍起になっているが、ひとつだけ確かなことがある。それは、ブランドはこれまで以上にインフルエンサーを必要としており、その状況はすぐには変化しそうにないということだ。
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では、ブランドは競争に勝つために何をしているのだろうか。2022年のインフルエンサーマーケティングを形づくるトレンドは何か、そしてその先に待ち受ける課題は何か。こうした問いに答えるべく2月16日に開催されたGlossy インフルエンサーマーケティング・フォーキャストでは、インフルエンサーマーケティング業界の動向を(バーチャルで)探るため、精鋭のマーケティングリーダーたちを招いた。まず注目したのは以下の3つのトレンドである。
・消費者は同じ価値観を持つブランドを求めている。ブランドがインフルエンサーに求めることも同じだ。
・ブランドは、インフルエンサー戦略を補完するためにPRを微調整している。
・ブランドは、明確な目標達成のためにさまざまなインフルエンサーを活用している。
これらのテーマの分析に加え、インフルエンサーマーケティング・フォーキャストで注目された会話のハイライトや、イベント中に登場した重要な話題を紹介する。
消費者は同じ価値観を持つブランドを求めている。ブランドがインフルエンサーに求めることも同じだ。
ここ数年、特にZ世代の消費者が主導する価値観重視の消費へのシフトが顕著であることは、マーケターなら誰でも知っていることだ。その結果のひとつとして、ブランドはどのインフルエンサーと提携するか、より意図的に判断するようになっている。膨大なフォロワー数を抱えるインフルエンサーにももちろん活動の場はあるが、そうした基準がすべてではないことをブランドは認識している。
ビークマン1802(Beekman 1802)のCMOブラッド・ファレル氏は、ブランドが潜在的パートナーを評価する方法について語った。それはビークマンが同社のモットーとしている思いやりの精神を体現しているインフルエンサーを探し出すことを意味している。また、インフルエンサーのチャネルにおける会話のトーンにも注意を払っている。それとは別にビークマンでは、ソーシャルプラットフォームを積極的にモニターして、ブランドや製品の潜在的なファンであることを示すコンテンツを持ったインフルエンサーを探している。「本当にターゲットにしているのは敏感肌に悩んでいる人々で、特にそうした人々に向けて、肌を変えて変化をもたらすと思える製品を開発している」とファレル氏は述べた。
エグゼクティブインタビュー
ビークマン1802のCMOであるブラッド・ファレル氏は、ビークマンの価値観にマッチするインフルエンサーを特定するために採用している方法論と戦術について語った。
Glossy:(インフルエンサーのキャット・スティックラー氏との)パートナーシップから学んだ重要なポイントや教訓、あるいはそれがビークマンの将来のパートナーシップにどう反映されるかについて教えてほしい。
ブラッド・ファレル:インフルエンサーのパートナーシップはすべて異なり、その関係もそれぞれ違う。キャットがすばらしかった点は、私たちがTikTokを始めたばかりの頃に、彼女が最初のVIPインフルエンサーだったということで、それは真に頼りになるものだった。彼女は製品が好きで、私たちのチームのことも気に入ってくれて、すばらしい関係を築くことができた。さらにコンテンツに関しても、お互いに時別なものを感じている。
もうひとつの教訓は、そのレベルの人が行うオーガニックな投稿を、ほかのコンテンツで再現してみることだ。とはいえ毎回、投稿のたびにそれをやるのは無理だ。だからそこから明らかに学べることは——、最初のオーガニックな投稿が起こしたマジックを再現するのは非常に難しいのは当然のことだ。だがそれはインフルエンサーと協力し、会話をすることでもある。インフルエンサーたちが何を望み、自分たちは何を望んでいるのかを問い、双方にメリットがあることを確実にする。
Glossy:双方にとってメリットがあるといえば、適切なインフルエンサーのパートナーを見つけるために、ビークマンが独自に作成したインフルエンサーの評価基準があるとのことだが、それはどのような内容なのか?
ファレル:かなりしっかりした評価基準を作成している。まず当社の顧客と小売パートナーにフィットしているかどうかを考えることから始まる。おそらく多くの人が考えるような定量的な数々の分析にも注目している。たとえば、米国内で親近感があるかどうか。なぜなら、当社はほとんど米国を重視しているからだ。しかしそこからさらに一歩踏み込んでいる。トラッカー(Traackr)を通じて、インフルエンサーがほかのブランドでよい結果を出しているか、本当にうまくいくエンゲージメントを提供しているか、といったことを理解するために、VIT、つまりブランドバイタリティスコア(Brand Vitality Score)を確認している。そういう意味で、あれは私たちにとって非常に便利なツールだ。それからさらなる定性分析も行う。ふたつのコア顧客グループにフィットしているか、私たちが顧客と呼んでいる「隣人」の世界観に合っているか。
最後に、私たちのモットーは「思いやりのなかに美しさがある」であり、思いやりの価値を本当に信じているので、思いやりのエクササイズというのを行っている。全員で部屋に座って、こう言う。この人は思いやりの価値観を表しているか? これには全員一致で同意しなくてはならない。私たちはみんなで順番に、インフルエンサーのコミュニティ内のすべてのコメントを読んでいく。それは、そのインフルエンサーだけが思いやりを示しているのではなく、インフルエンサーのコミュニティ全体に思いやりがあるのかを確認するためだ。インフルエンサーのプラットフォームで起きている会話は、思いやりを中心にしたものかどうか。なぜなら、それが私たちの価値観であって、そうした価値観を強く信じているからであり、私たちのパートナーにもまた、その価値観を体現してほしいと思っているからだ。
Glossy:インフルエンサーと一緒に仕事をするとき、ブランドとともに思いやりの原則を強化するために、どのように思いやりの要素を高めているか?
ファレル:私たちの登録インフルエンサーになるために、インフルエンサーたちはある意味で思いやりを表現している。私たちは従来のビューティインフルエンサーとは異なるかもしれないが、そうした思いやりを象徴する人を探している。そんなすばらしいインフルエンサーのひとりに、ケイティ・ベス・ミーダナー氏(ハンドルネームは@cappybears)がいる。彼女は、特別なニーズを持つ猫の世話をしていて、本当に優しい人のひとりだ。彼女のコンテンツは、スキンケア製品について語る際、非常に共感を呼ぶ。彼女はこのブランドが大好きで、それが思いやりについてのブランドであることも気に入っている。彼女が私たちの製品について話すと、かなり高いエンゲージメントを得ることができ、まさにインパクトがみられる。価値観を共有できるこうした人を探すことが違いを生むし、ブランドとしてのフィルターとなる。だれもが、話題になっている大物インフルエンサーと話をしたがるが、ブランドとして差別化できるのは、特別で独自性のある人たちだ。そうした人のコミュニティは、本当にその人が言わんとしている言葉に耳を傾ける。その人がブランドを信じていれば、それは本物としてコミュニティに伝わる。ケイティ・ベス氏のような人々は、つねに有機的に私たちについて投稿している。ROIの観点からも、このような関係が築けることは本当に役に立つ。
ブランドは、インフルエンサー戦略を補完するためにPRを微調整している
ほかのどの関係でもそうだが、ブランドとインフルエンサーとの間でも第一印象は重要だ。ブランドが特定のインフルエンサーと仕事をしたい場合、ほかのブランドもそのインフルエンサーに接触していると考えるのが賢明である。これはセレブリティインフルエンサーだけでなく、フォロワー数が比較的少ないマイクロインフルエンサーにも当てはまる。
PRを完全に回避するためにインフルエンサーを活用しようとするブランドもあるが、PRはインフルエンサー戦略にとって効果的な支援となり得る。E.l.f.ビューティ(E.l.f. Beauty)のパトリック・オキーフ氏は、インフルエンサーの注意をつかむためにPRボックス(注釈: インフルエンサーに送るプレゼントボックス)を慎重にキュレーションする方法について語った。うまくいけば、その効果は強力なものとなる。E.l.f.の場合、ブランドのPRボックスがユーザー生成コンテンツを高める火付け役となっており、今日のデジタルマーケティングのパズルの重要なピースとなっている。
ビークマン1802のファレル氏も、ブランドの価値を伝えるためにPRボックスを活用したことが、ビークマンとキャット・スティックラー氏とのパートナーシップを始動させる要因のひとつとなったと考えている。「彼女のようなレベルの人は、毎日大量のボックスを受け取っている」と彼は説明した。「彼女に当社の製品の箱を送ったが、思いやりダイアリーと思いやりに関する書籍も同封したところ、彼女は『この人たちと話をしなければ』と思ってくれた。それが本当に目立っていたからだ」。
エグゼクティブインタビュー
E.l.f.ビューティの統合マーケティングコミュニケーションのトップに立つパトリック・オキーフ氏は、ブランド全体のマーケティングの成功にPRがどう寄与しているかを説明した。また、同ブランドのPRとインフルエンサー戦略のダイナミクスについての洞察も提供した。
Glossy:PRの働きについて触れたい。貴社ではPRを機能させるために何をしているのか?
パトリック・オキーフ:その質問はいいね。我々のエージェンシーであるシャドウ(Shadow)とともに毎週ミーティングを行って、ホワイトスペースを探している。まず我々のコミュニティに耳を傾け、人々が何を話しているのかを理解し、消費者が何を言っているのかを検討する。そして「どうすれば、それをPRストーリーに変換できるか」と自問する。それがまさに我々の戦略だ。それから正直言って、TikTokで起きていることのおかげで(出版社による製品の)まとめには確実に入る。ポアレスパテプライマー(Poreless Putty Primer)は、ヒーロー商品だ。編集者はその商品ついて喜んで書いてくれる。そんな調子で我々はいつも有機的に取り上げられている。だがもう一度言うが、我々は消費者の声に耳を傾け、ホワイトスペースを見つけ、ストーリーを作り上げているのだ。
Glossy:発信しているコンテンツをどのように定義しているか?
オキーフ:インフルエンサーの観点からは、とにかくPRボックスからスタートする。インフルエンサーがボックスを手に取り、必要とするものを制作し、成分について話し、効能について語り、特徴について説明し、我々が発信しているものが何であれ、コミュニティから真に共感が得られるものであることを確実にする。これはかなりパワフルなことだ。我々からではなく、我々のスーパーファンから情報が発信されるのだ。我々のFacebookには約7000人のグループがある。このグループはブランドに対してとても情熱的で、E.l.f.のことが大好きで毎日投稿してくれている。我々がしていることは、そうした人たちの作品を取り上げ、我々のプラットフォームでそれを賞賛すること。つまり、そうした人々もストーリーの一部なのだ。人々が我々の製品をどのように使っているかを教えてくれる。要するに、それによってブランドが売れ、eコーマスにもつながっていく。
Glossy:インフルエンサーにボックスを送る際、投稿の仕方や発言に関して何らかの指示を行っているか?
オキーフ:一切していない。そうしたスーパーファンがどんな人たちで、どんなことを支持しているかをわかった上でその人たちのことを気に入っているので、そのスーパーファン自身の声でなくてはならない。何を言うべきか我々に指示されるような状況には置きたくない。それは我々の姿ではないからだ。
ブランドは、明確な目標達成のためにさまざまなインフルエンサーを活用している。
私たちが目にしている大きなテーマのひとつは、ブランドがより広範で多様なインフルエンサーのプールを受け入れていることだ。このトレンドの背景には、いくつかの要因がある。まず、さまざまなオーディエンスにリーチする効果的な方法であること。それぞれのオーディエンスが、信頼しているインフルエンサーから共感できる言語でメッセージを受け取ることができる。また、ブランドは自分たちの本来の専門領域をはるかに超えたカテゴリーのインフルエンサーとも提携している。エクター・チョープラ氏とパトリック・オキーフ氏は、E.l.f.ビューティがツイッチを使ったり、ゲームを活用したりして、新世代のインフルエンサーを育成する方法について語った。一方、インビューティ・プロジェクト(InnBeauty Project)のインフルエンサーリレーションシップおよびソーシャル戦略ディレクターのエリカ・リボティ氏は、同ブランドのインフルエンサーパートナーには、スターのメイクアップアーティスト(ドラマ『ユーフォリア(Euphoria)』のドニ・デイヴィ氏)、皮膚科医(ザイオン・コー・ラム医師)、TikTokの有名人(ティンクス氏)などがいると述べている。
マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーの台頭も独特のトピックであり、スピーカーたちは、これらのコミュニティを活用することのメリットについて、魅力的な洞察を共有してくれた。「製品レビューや製品を深く掘り下げるすばらしいコンテンツ制作や、投稿のコメント欄での活発な会話を目にしている。それがコンバージョンにつながっている」とリボティ氏は指摘している。「もうひとつはマイクロインフルエンサーだ。特にTikTokでは、だれでもバイラルになれる。私たちがプレゼントしたマイクロインフルエンサーや、自分で製品を購入したマイクロインフルエンサーがレビューを投稿し、それが何十万から何百万回と再生されるのを見てきた。これはすべて有機的なものだ」。
エグゼクティブインタビュー
BFAインダストリーズ(BFA Industries)のクリエイターパートナーシップおよびエクスペリエシャル・バイスプレジデントとして、ネイカ・コルボーン氏はイプシー(Ipsy)などの既存ブランドのほか、アディソン・レイ氏のアイテムビューティ(Item Beauty)やベッキー・G氏のトレルーチェビューティ(Treslúce Beauty)といったセレブリティ創業者が率いるブランドのインフルエンサーリレーションを統括している。ブランドがそれぞれの目的を達成するにあたり、さまざまなタイプの異なるインフルエンサーがどのように役立つのか、コルボーン氏は自身の考えを述べた。また、パートナー候補を吟味する際のヒントも共有した。
Glossy:それぞれのブランドでパートナーとしているインフルエンサーのタイプや、制作しているコンテンツのタイプについて少し教えてほしい。
ネイカ・コルボーン:そのエリアはつねに重なっているが、イプシーの場合、パートナーを組んでいるインフルエンサーのタイプは、美容が大好きで、本当にいろいろなことに興味があって試してみたいという層に向けて発信してくれる人だ。したがって、すべての人に美的センスを喚起させるようなインフルエンサー、あるいは好きなように自分を表現できる、自己表現を優先するという考えをみんなに想起させるようなインフルエンサーとパートナーシップを結ぶことがある。たとえば現在はベイリー・サリアン氏と提携している。しかし同時に、年齢、肌の色、ジェンダーなどに関して多様性を感じさせるマイクロインフルエンサーと組むこともある。ボクシーチャーム(BoxyCharm)の例でいえば、かなりおしゃれで大胆なルックにフォーカスしている。今月はハルッシュ・アケミヤン氏とのパートナーシップを予定しているが、ハルッシュをフォローしていれば、彼女が非常に大胆なルックを好むことはご存知かと思う。
Glossy:各ブランドのインフルエンサー戦略にはそれぞれ独自の目標がどのように反映されているのか?
コルボーン:各ブランドの目的を理解することは非常に重要だ。その一方で、一般的に(インフルエンサーとともに)ブランド認知を高めて成長していくことに力を入れているが、ブランドの目的ごとに異なっている。
イプシーやボクシーチャームの場合、目標は成長かもしれない。アイテムビューティやトレルーチェのような新しいブランドでは、ブランド認知度を高めたい。成長のためには、忠実なフォロワーのいるインフルエンサーを活用するし、マイクロインフルエンサーやナノインフルエンサーにも頼ることもある。そうした人たちはコンバージョンが非常によく、熱心なオーディエンスがついているからだ。
そして市場に出たばかりのブランドの認知度向上については、とにかく注目度を高めたい。そこで、セレブリティやメガ・インフルエンサー、マクロ・インフルエンサーを活用する。たとえば、アイテムビューティやトレルーチェは、創業者自身が非常に多くのフォロワーを持っていて、インフルエンサーやクリエイターとして彼女たち自身が大活躍している。年4回開催されるグラムバッグX(Glam Bag X)のプログラムのキュレーターに関しては、美容やメイクアップが好きで、かつ多くのフォロワーがいる人と提携している。このように、より大規模なクリエイターやインフルエンサーを活用することで、ブランドの認知度を高め、コミュニティを成長させることに貢献している。
Glossy:コンテンツクリエイターやインフルエンサーとの提携を契約する前に、評価という意味ではどのようなデューデリジェンスを行うのか?
コルボーン:私はいつもクリエイティブパートナーシップはアートとサイエンスだと言っている。まず直感があり、その直感を事実、数字、エンゲージメントで立証しなくてはならない。自分の直感では、この人物はすばらしい、この人のコンテンツはすごいと思ったとしても、その人物のオーディエンスのデモグラフィックはブランドと合致しているか、年齢、性別、居住地は適切かといったことを知る必要がある。つまり最初の事柄は直感に基づくアートの部分だ。自分のブランドアイデンティティを知っている、ブランドの目的もわかっている。自分の直感は、この人はフィットしそうだと言っている。そうしたら次にそれを立証していく。コンテンツのパフォーマンスや、クリエイターがもっとも得意とするプラットフォームはどこかなど、深く探って数字を見ていく。また成果物に基づいて、どのような投資対効果が得られるかも知りたい。これはあまり楽しいことではないサイエンスの部分だが、どのクリエイターと契約するにせよ、事前に必ずやるべきことだ。
知っておくべき情報
まだ明確になっていないかもしれないが、スピーカーが口をそろえて言うメッセージのひとつは、インフルエンサーマーケティングは最終的な収益に貢献するということだ。インビューティ・プロジェクトのエリカ・リボティ氏は、インフルエンサーとの関係だけでなく、チームのキャパシティが許す限りは一般のフォロワーとも1対1の関係を育むことの価値を強調している。こうした個人的な交流は、トップインフルエンサーとの永続的な関係につながり、ユーザー生成コンテンツを作るようファンを刺激する。リボティ氏は、インフルエンサーがブランドについて投稿することと売上との間に直接的な相関関係があると述べている。
インフルエンサーマーケティングの効果は、パートナーシップのコストが増加する理由のひとつであり、それはマーケターが直面する課題のひとつに過ぎない。ビークマン1802のブラッド・ファレル氏は、「過去に仕事をした人のなかには、今では1年ちょっと前の3~4倍の金額を要求してくる人もいる」と話す。特にほとんどのブランドがすでにTikTokを利用しているか、その方向に向かっている今、注目を集めるための競争も激しくなっている。
トラッカー(Traackr)のCEOで共同創業者であるピエール=ロイ・アサヤグ氏は、マーケティングファネルが崩壊し、カスタマージャーニーの各段階がますます短くなっていることについて語った。しかし彼はブランドに対して、この破壊の時期をプラスに活かすよう促している。「私たちはカードをシャッフルしているだけだ。新しい勝者が台頭し市場の大きな分け前をつかむ多くのチャンスがある一方で、ほかのブランドは廃業するか、脇に追いやられてしまう」。
アサヤグ氏はブランドに対して、リスクを取ることを奨励し、「速く失敗すること」から学ぶことを受け入れるように勧めている。この考えに賛同したブラッド・ファレル氏は、ビークマン1802がTikTokで成功したのは、足かせを外し、チームメンバーにテストと学習をする権限を与えたからだという。そしてE.l.f.ビューティのチーフデジタルオフィサーであるエクター・チョープラ氏は、インフルエンサーマーケティングで成功するための直感が備わったチームを構築するためのアドバイスをしている。「同じマインドセットを共有するすばらしいスーパーヒーローたちに囲まれること」とチョープラ氏は言う。「そうした人たちは、新たなフロンティアを追い求め、そのすべてを征服するという同じ使命を帯びている」。
注目の言葉
スーパーグレート/Supergreat
ソーシャルビューティコマースの次の大きな話題としてもてはやされている有望なアプリ。このアプリは、短い動画と買い物可能なライブストリームを統合し、他のプラットフォームがこれまでに達成したよりもシームレスな体験を作り出すことを目指している。スーパーグレートは、カーリー・クロス氏やヘイリー・ビーバー氏などを含む投資家から1000万ドル(約11億5600万円)以上の資金を調達している。
おわりに
インフルエンサーの状況は、ブランドにとって間違いなくますます複雑になってきている。カテゴリーでもっとも人気のあるインフルエンサーとのコラボレーションを追い求めるだけの時代は終わったが、それは悪いことではない。ブランドは、さまざまな専門分野のインフルエンサーと協力してオーディエンスを拡大しており、インフルエンサー業界の民主化は、ブランドにとって刺激的な意味を持つ。ほとんどどの消費者でもバイラルなTikTokコンテンツを作成することができ、ブランドのスーパーファンによって作成されたユーザー生成コンテンツの普及は、強力な収益の原動力となり得るのだ。
この先に向かう道は、ブランドの価値をさらに強化し、価値観が共鳴するインフルエンサーを精力的に探すことだ。その価値観を反映した製品をデザインすること、そして、その製品を愛し盛り上げてくれるインフルエンサーを選ぶ際には、オープンマインドでクリエイティブになること。何にもまして2022年のインフルエンサーマーケティングは明白だ。すべてのパートナーシップがうまくいくとは限らないし、それでいいのだ。ただし傍観者の立場をとっても何もいいことはない。さっそくその状況から抜け出して、インフルエンサーのプールを構築し、成功への道を少しずつ調整していこう。
[原文:The 2022 influencer marketing forecast: Strategies for beauty, fashion and luxury]
IAIN SHAW(翻訳:Maya Kishida 編集:猿渡さとみ)