「バーチャルサービスは我々の強みをより強固にする」:デシエムCEOニコラ・キルナー氏が語る、実店舗の未来

コロナ禍のなか、ビューティ業界は売場でのテスティングやサンプル品の提供ができない状況下で、いかにして顧客を維持・獲得できるのか、試行錯誤を続けている。

たとえば、人気スキンケアブランドのオーディナリー(The Ordinary)を抱えるデシエム(DECIEM)は、いわゆるハイタッチカテゴリー(顧客と企業との信頼が重要視される領域)の多くと同じく、店員の専門知識とインタラクティブなテクノロジーを融合した、バーチャルなカスタマーエクスペリエンスを方向転換の軸としている。

同社が4月に立ち上げたプログラム、デシエム・アット・ホーム(Deciem at Home)は、eコマース顧客が、現在は在宅勤務中の地元ショップ店員と繋がれるようにするもので、バーチャルスキンケアコンサルテーションと、商品のレコメンデーションを無料提供している。実施回数はすでに20万強、1日平均で2500回にのぼる。また、1回の平均購入額が37%増加しており、これもバーチャル動画プラットフォームのヒーロー(Hero)を利用した効果だという。

売場におけるテスティングの先行きが不透明ななか、答えはこうした混合型ソリューションにあるのかもしれないと、デシエムCEOニコラ・キルナー氏は、米DIGIDAYの兄弟サイト、モダンリテール(Modern Retail)に語った。本稿では同氏がバーチャルサービスと店舗再開についての姿勢を述べたインタビューをお送りする。なお、読みやすさと長さを考慮し、発言には編集を加えてある。

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──デシエムはD2C界で高評価を確立後、近年は実店舗での販売においても実績を残してきた。コロナ後の世界において実店舗の役割はどう変わる?

スキンケア業界では、人と人との繋がりが非常に重要な要素だ。だからこそ、我々は実店舗に今後もフォーカスしていく。いまのところ、店舗の大半については7月中の再開を考えているが、各地域の状況は今後も注視していく。ただ、新規開店については、依然として様子見の段階にある。たとえば、我々はロサンゼルスへの進出を予定していたが、現在のところ保留としている。これはつまり、違うオプションも視野に入れていくということであり、たとえばポップアップなら、より迅速な展開が可能になるだろう。

──デシエムは10以上のブランドを持ち、さらに新規ブランドをふたつ立ち上げ、それが幅広い顧客の獲得に繋がっている。ソーシャルディスタンスを保持しなければならないいま、バーチャルカスタマーエクスペリエンス機能は、複数の子会社やブランドを持つ企業が細分化されたマーケットの要求に応えるのに、どのように役立つのか?

(バーチャルカスタマーエクスペリエンス機能は)デシエム・アット・ホームの複数ブランドを持っているという強みを、より強固なものにしてくれることは間違いない。顧客はブランドごとの違いをより実感しやすくなる。また、セフォラ(Sephora)などのリテーラーと同じように、顧客とじかに触れ合える接点としても機能している。全体として、より良いサービスの提供を可能にしてくれていると考えている。コンサルテーションのレビューが平均4.9/5星と高評価を得ているのがそれを証明している。

──デシエム・アット・ホームを今後、実店舗戦略にどのように融合していく?

クリック&コレクト(ECサイトで商品を購入し、リアル店舗や宅配ボックス、ドライブスルーなどの自宅以外の場所で商品を受け取るようにする仕組み)ならば、顧客はオンラインショッピングの手軽さを享受しながら、店に行って実際に商品を見るという選択肢が持てる。このサービスがあれば、世界中のオーディエンスが、近所に店がない場合でさえも、店員と1対1の繋がりを持つことが可能になる。またこれは、実店舗の再開にとっても欠かせない存在になるだろう。今後、コロナ禍が落ち着いたあとでも、社会的連帯の構築にとって重要なツールになる。

──実店舗を持つ小売企業が直面している大きな課題は、返品数の最小化に欠かせない試供品をどう扱っていくかだ。店舗でのテスティングの代わりに、個別包装したサンプル品を送付しているところもあるようだが、同様の取り組みを実施する計画は?

そうした形でのサンプルの送付はしない。その慣行が環境汚染の大きな要因となっているのは明らかであり、これは実際、コロナ禍以前から問題となっている。購買者に対しては、以前から1年間無料で返品を受けつけており、半分使用済みのものであっても認めている。これには然るべき理由がある。

スキンケア商品の場合、アレルギー反応の有無を確かめるには、使いはじめから数日間以上、様子を見る必要がある。また、売場でのテスティングは質感や付け心地を体感するのには良いが、長期使用による影響や効果は十分には確かめられない。世界が変わったのは事実だが、商品の効果を保証していくことが最善の方法であることに変わりはないと、我々は考えている。

[原文:‘Stores will continue to be a big focus’: Deciem CEO Nicola Kilner on the future of virtual services

GABRIELA BARKHO(翻訳:SI Japan、編集:Kan Murakami)