ハフィントン・ポストの新しいヴァーティカルブランド「ザ・スコープ(The Scope)」は、6カ月間の準備期間を経て、1月頭にローンチされた。これは、独立したサイトではない。あくまでFacebookやTwitterにのみ存在し、そこに投稿されるリンクは、すべてハフィントン・ポストの健康カテゴリーの記事へ飛ぶ。
ハフィントン・ポストはブランディングを変えることで、健康トピックに新しいオーディエンス層を引き込もうとしている。彼らの新しいヴァーティカルブランド「ザ・スコープ(The Scope)」は、6カ月間の準備期間を経て、1月頭にローンチされた。
ザ・スコープは、ただ事実だけを伝える無機質なニュースメディアではない。ライフスタイルのレポーターによるカジュアルな記事から、ワシントンD.C.の記者による政治関連記事まで、さまざまなストーリーが届けられる。また、ザ・スコープは、独立したサイトではない。あくまでFacebookやTwitterにのみ存在し、そこに投稿されるリンクは、すべてハフィントン・ポストの「ヘルシーリビング」カテゴリーの記事へ飛ぶ。
「チームの精神は『すべてのストーリーが健康にまつわるストーリーである』だ」と語るのは、ザ・スコープの編集部員であるメレディス・メルニック氏だ。
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より軽度なレベルの実験
AOLの下、ハフィントン・ポストではひたすらサイトの規模を追求する戦略から離れるような動きが、近年見られている。業界全体を見ても、規模だけを追求するメディアはもはや時代遅れになってきた。比較的小規模で、絞られたエディトリアルのブランドを作ろうと努力するパブリッシャーの数はますます増えている。彼らの多くは、さまざまなプラットフォームを利用して、オーディエンスの様子を伺う。
「これは、より軽度なレベルで実験を行う方法のひとつだ」と、メルニック氏は語る。
ゼロから新しいサイトを作り上げるのではなく、ハフィントン・ポストが保有する要素を利用する形で、ザ・スコープのアイデンティティは形成された。FacebookやTwitterを見ると、ザ・スコープ独自の性格が存在するように見えるもの、サイトのコンテンツはすべてハフィントン・ポスト上に存在していることが分かる。ザ・スコープのFacebook、Twitterアカウントすらもハフィントン・ポストにおけるヘルシーリビングのページデザインを変えたものだ。現在、Twitterでは33万9000人のフォロワー、Facebookでは80万人のファンがついている。
このふたつのプラットフォームのおかげで、メルニック氏のチームは何がオーディエンスの反響を生むか、効率的に試すことができるという。「ソーシャルプラットフォームからはじめることは、このオーディエンス層について知る、非常に良い手法だと分かった」と、メルニック氏は語る。
「量より質」重視の生産体制
生産体制を見てみよう。ザ・スコープには4人のスタッフ・ライターがおり、毎日4つのストーリーを作り出す計画になっている。またザ・スコープは、ほかのアウトレットからのコンテンツもソースとして利用。そこにはロイターのほか、ニューヨークのメディア会社パーチ(Purch)が所有するメディア「ライブ・サイエンス(Live Science)」、ボストン・グローブ・メディアグループが2015年に公開したヘルスケアサイト「スタット(STAT)」との提携関係も含まれている。また過去アーカイブからも記事を再利用。これはデジタルパブリッシャーのあいだでは非常に人気のある慣習だ。
ザ・スコープには無いものがひとつある。それはハフィントン・ポストでは一般的な、外部寄稿者から記事だ。アーカイブ化された過去のものはザ・スコープでもシェアされているが、外部寄稿者による新しい文章をサイトのコンテンツとしてたくさんパブリッシュされることは想定していないという。「我々の焦点ではない。募集もしていないし、探してもいない」と、メルニック氏は言った。
FacebookやTwitter、Snapchatといったプラットフォーム上で読者たちと深い関係性を築くことは難しい。それは多くのパブリッシャーたちが共通認識としてもっていることだが、人々の興味を探るという点ではこれらのプラットフォームは依然として有益である。
さらに2ブランドも展開中
ザ・スコープのほかにも、ハフィントン・ポストはふたつのブランドを立ち上げている。どちらも読者の特性を中心に据えている。ひとつは「キャンセルド・プランズ(Canceled Plans)」、これは内向的な性格のオーディエンスをターゲットにしている。そしてもうひとつは「トゥモロー・インシャラー(Tomorrow Inshallah)」、こちらは若いイスラム教徒のオーディエンスをターゲットにしているという。
これらの試みが、どれかひとつでも成功すれば、メルニック氏と彼女のチームは、さらにサイトを発展させる予定だ。イベント開催、ニュースレターの配信、もしくはほかのプラットフォームへの拡大などが考えられているという(レポーター本人が妊娠に取り組むプロセスを伝える、短いフォーマットでのポッドキャスト番組「IVFML」がローンチ予定だ)。
「誰が、どんな風に反応しているのかという点に私たちは、すごく焦点をあてている」と、メルニック氏は語った。
Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)