いまや10億ドル(約1000億円)を超える市場規模ともいわれるインフルエンサーマーケティング。一見華やかだがフラウド(虚偽)が深刻な問題だ。フラウドの多くはボットを通じて行われ、ブランドやエージェンシーが注目するフォロワー数10万人以下の「マイクロインフルエンサー」が活用しているケースが増えている。
いまや10億ドル(約1000億円)を超える市場規模ともいわれるインフルエンサーマーケティング。一見華やかな世界で、フラウド(虚偽)が深刻な問題となっている。
フラウドの多くはボットを通じて行われる。ブランドやエージェンシーがフォロワー数10万人以下の「マイクロインフルエンサー」に注目するなか、こうしたマイクロインフルエンサーがボットを使ったフォロワーで自分を大きく見せようとするケースが増えているのだ。
8月第2週、インフルエンサーマーケティング事業を手掛けるメディアキックス(Mediakix)が行った調査で、この問題の深刻さが浮き彫りとなった。ブランド各社が人為的にフォロワーを増やすインフルエンサーに騙され、浪費している実態が明らかとなったのである。
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いまではこのような虚偽の行為はありふれた手口となっている。米DIGIDAYが以前にも伝えたように、マーケティング担当幹部はアカウントやエンゲージメントが人為的に購入されて水増しされているのをよく目にするという。インフルエンサーをマネジメントするタレントエージェンシーのバイラルネーション(Viral Nation)は、毎日応募してくる50から100のインフルエンサーのうち、20~30%がインスタグラムでボットを使っているのが現状だと、米DIGIDAYのインタビューで答えた。
メディアキックスの実験
ここでメディアキックスが実際に行った調査方法を一部、具体的に紹介する。同社はフォロワー数が完全にフェイクである偽インフルエンサーのインスタグラムアカウントを2つ作成した。見せかけだけのエンゲージメントを持つフォロワーを購入し、インスタグラム上でこの2つのアカウントでキャンペーンを実施した。
最初のアカウント@calibeachgirl310ではモデルを雇い、カリフォルニアに住むアレクサ・レイという名で、実生活を伝えるインフルエンサーになってもらった。
2つ目のアカウント@wanderingggirlはストック写真のみを使い、アマンダ・スミスという名で、異国情緒あふれる写真を投稿する旅行写真のインフルエンサーを作り上げた。
両者のアカウントで1万5000人ものフォロワー数を購入。フォロワーの購入価格の相場は1000人で3〜8ドル(約300~800円)だ。メディアキックスによると、フォロワー数のこうした急増について、インスタグラムからの警告はなかったという。調査期間は2カ月。フォロワーはそれぞれ、@wanderingggirlは3万人、@calibeachgirl310は5万人に達した。
ブランドとの契約も締結
メディアキックスによれば、どちらのアカウントも4つのブランドと契約を結ぶことに成功したという。契約を結んだブランドの名前は非公開だが、水着メーカー、酒類ブランド、飲食料品ブランドの3社は、上記2つのアカウント、両方ともが契約締結に成功した。オフレコでメディアキックスから送られたスクリーンショットから、これらのブランドと金銭や試供品を提供する契約が実際に結ばれていることが確認できた。
メディアキックスはほかにもこうしたレポートを多数公開しているが、これらのレポートはインフルエンサーマーケティング企業として、クライアントのブランド企業へ問題の認識を広めるため(それは、自社の能力を示すためでもあるのだが)に行ったものだとしている。
「このレポートからわかったことのひとつは、いまのボットは洗練されており、インスタグラムがそれを見抜くのは大変難しいということ。業界の方々には、このことを広く知ってもらいたい。我々の望みはインフルエンサーマーケティングを成功させることであって、このレポートもまた、ブランド企業との仕事の一貫である」。メディアキックスCEOのエバン・アサノ氏はこのように語る。
インスタグラムの見解
また、インスタグラムもこうしたボットによる問題を認識しており、ガイドラインで同じコメントを繰り返し投稿することや、人為的にいいね!やフォロワーを集めることを禁じている。同社の広報担当によれば、ボットはハッシュタグをたくさん加えるため、アカウントあたりで使えるハッシュタグの数に制限を設けているという。また「スパムアカウントはインスタグラムの月間アクティブユーザーのうちのほんのわずかな割合にすぎない」とのことだ。
「インスタグラムは、スパムや偽アカウントをはじめとした不正利用に厳然たる姿勢で対処している。社内には不正行為を監視する専門チームがあり、見つけ次第、アカウントを閉鎖している」と、同社・広報担当者は語る。「当社の基準では自動的にいいね!やフォローを行うサービスはスパムとみなしている。当社は方針に従い、今後もこうしたサービスに対して、積極的な排除に取り組んでいく」。
またインスタグラムの試算によると、月間アクティブユーザーに対するスパムアカウントの割合は、ほんのわずかだという。インスタグラムのユーザー数は、すでに7億人を超えている。
Shareen Pathak(原文 / 訳:SI Japan)