ニックス・プロフェッショナル・メイクアップは、9月10日から17日まで開催されたNFTのイベント、クリプトファッションウィークの公式ビューティパートナーとして、初めてNFTとして採用されたメイクアップルックを紹介。またレベッカ・ミンコフも参加し、NFTの服を1点披露。ブランドは参加することでどんなチャンスが?
NFTのファッションおよびビューティイベント、クリプトファッションウィーク(Crypto Fashion Week)は、2シーズン目となる今回、大手ブランドパートナーを獲得した。
ニックス・プロフェッショナル・メイクアップ(NYX Professional Makeup)は、9月10日から17日まで開催された同イベントの公式ビューティパートナーとして、初めてNFTとして採用されたメイクアップルックを紹介。またレベッカ・ミンコフも参加し、NFTの服を1点披露した。2021年2月に第1回目のクリプトファッションウィーク開催以降、複数の大手ファッションブランドおよびビューティブランドがNFTの波に加わっている。ブランドとしては、参加することでNFTの宣伝効果や熱心なコミュニティに入り込むチャンスが得られる。一方、主催者はバーチャルなファッションや美容が主流となる未来に賭けている。
「世界がメタバースに向かっていることはわかっている」とクリプトファッションウィークの創設者であるレディ・フェニックス氏は言う。「将来的には誰もがアバターを持つようになる。現実世界でファッショナブルでいたい人は、メタバースでもファッショナブルになりたいと思っている」。
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最終日に開催されたメタ・ガラ
レディ・フェニックス氏のクリプトメディア企業ユニバースコンテンポラリー(Universe Contemporary)が主催するクリプトファッションウィークは、ツイッター(Twitter)のスペースやツイッチ(Twitch)、YouTube、そして独自のウェブサイトで開催された。ライブストリーム、トークショー、NFTドロップなどが行われ、最終日となる9月17日にツイッチとYouTubeでライブストリーム配信による独自のバーチャルファッションショー「メタ・ガラ(Meta Gala)」が行われた。
このメタ・ガラでは、バーチャルファッションとビューティルックを紹介する公式イベント「メタ・ガラ・レッドカーペット」の一環として、ニックス・プロフェッショナル・メイクアップが初のNFTを公開した。ニックス・コスメティクス(NYX Cosmetics)のルックは、特殊効果メイクアップアーティストのミミ・チョイ氏によってまずは実際に作成され、それをホログラムキャプチャーによってデジタルバージョンとアバターが作られた。このメイクアップルックのデジタル版は、ARフィルターのフォーマットでNFTに鋳造され、メタ・ガラのサイト訪問者へのプレゼントとなっており、サイトを訪れた人が応募することができる。そのメイクアップを施したデジタルバージョンのチョイ氏のモデリングがレベッカ・ミンコフの服をまとい、ファッションショーで披露された。
バーチャルメイクアップ・トライオンは「オーディエンスとどのようにつながり、メイクアップの芸術性にいかに命を吹き込むかという点で不可欠な要素だ」とニックス・プロフェッショナル・メイクアップUSAのゼネラルマネージャーであるヤスミン・ダストマルチ氏は言う。同ブランドの完全な製品ポートフォリオは、バーチャルトライオンが可能で、オンラインのシェードマッチングもそのサイト上で行うことができる。「私たちにとって、これはデジタルネイティブな消費者層とつながるためのもうひとつの方法なのだ」。
バーチャルメイクアップの需要は過去2年間で増加しており、とくにテスターが使用できなかったパンデミックの際に顕著だったとダストマルチ氏は説明した。「ニューノーマルな生活が継続しているので、その状況は変わらないと思う」と彼女は言う。「私たちはこの空間で引き続きディスラプトしなくてはならない」。
全ルックのNFTのバーチャルオークション
このファッションショーと同時に、ニックス・コスメティクスのプレゼント応募に加えて、ファッションショーで紹介されたすべてのルックのNFTを対象とした24時間のバーチャルオークションも開始された。各ルックの最低落札価格は1イーサリアム(本記事執筆時点では3377ドル、約37万円)からスタートしている。オークション開始から1時間以内に、ある服には3イーサリアム、つまり1万ドル(約110万円)以上の入札があった。
ニックス・コスメティクスのルックはプレゼントの一環となるが、ナーズ(Nars)やエルフ(E.l.f.)などの美容ブランドは、暗号通貨ではなくクレジットカードでNFTを購入できるビツキ(Bitski)やトゥルーシー(Truesy)などのプラットフォームを通じてNFTを販売している。一方、暗号通貨を使って自社サイトで製品を注文できるビューティブランドはごくわずかだ。
暗号通貨は「まだ模索中のものだ」とダストマルチ氏は述べた。
NFTの未来への高まる関心
ユニバース・コンテンポラリーでは、アートや音楽、スポーツなどのNFTイベントも開催しており、NFTアートの天文学的な価格上昇の最前線にいた。2020年10月に開催された同社のバーチャルアートフェア、クリプトバーゼル(Crypto Basel)では、アーティストのビープル氏による初のNFTアート作品が展示された。その後、2021年3月にクリスティーズ(Christie’s)で彼の作品が6900万ドル(約76億円)で落札されたことで、ビープル氏はバイラルで有名になった。昨年、NFTアートの価格が天文学的なレベルに達したことで、イベント主催者はファッションとビューティでも同様の期待を寄せている。ビープル氏の記録的な販売は、一般の人々やブランドの間でNFTへの関心を引き起こすこととなった。
「いつも出てくるコメントは『右クリックして保存できるようなものが、いまは6900万ドルになる。どうやって?』というものだ」とレディ・フェニックス氏は言う。「それは、人々がデジタルに向かって進んでいる未来のトレンドを本当に理解していないからだ。未来はデジタル所有権やデジタル資産の共同所有権、そして主権と協力とコミュニティに基づく完全なクリエイター経済に向かっている」。
ファッションやビューティにおいて、ブランドは最初のNFTで注目を集めたあと、次に何ができるかかを考えている。
「消費者がNFTを試し続けているなかで、私たちはいまだそれが将来的に何を意味するのかを定義しなくてはならない。しかし将来、NFTが私たちの活性化や計画の一部となる可能性はある」とダストマルチ氏は述べている。
[原文:NYX Professional Makeup and Rebecca Minkoff join Crypto Fashion Week with NFTs]
LIZ FLORA(翻訳:Maya Kishida、編集:山岸祐加子)