いまどきの買い物は、ブランドと商品の選択肢が多すぎて、時に圧倒されてしまう。そこで、新たなパーソナルスタイリングアプリのマダ(Mada)は、ショッピングを右か左にスワイプするだけの簡単なものにすることを目指している。いわばマッチングアプリのTinder(ティンダー)の買い物版だ。
いまどきの買い物は、ブランドと商品の選択肢が多すぎて、時に圧倒されてしまう。そこで、新たなパーソナルスタイリングアプリのマダ(Mada)は、ショッピングを右か左にスワイプするだけの簡単なものにすることを目指している。いわばマッチングアプリのTinder(ティンダー)の買い物版だ。機械学習技術を利用して、ユーザーの好みにあった衣料やスタイルを提案する仕組みとなっている。
Madaのリリースは、Z世代とミレニアルの約75%がモバイルで買い物し、ファッション関連企業の多くがファッションのゲーム化を試みる、現在のトレンドとリンクしている。Madaがこれから参入する市場では、すでにスティッチフィックス(Stitch Fix)などの新興企業がデータサイエンティストとタッグを組み、テクノロジーを利用して、顧客が本当に着たいものや買いたいものを高精度で予測しようと取り組んでいる。Madaの場合、ユーザーがスワイプするほど、テクノロジーが顧客の好みをよりよく学習する。アプリはすでにApp Storeに申請されていて、近いうちに無料でダウンロード可能になる見込みだ。
「AIと機械学習を取り入れれば、(企業は)エンゲージメントと生産性をアップさせ、顧客の期待と競合他社を上回ることができる」と、IoT企業SOTIで商品戦略担当バイスプレジデントを務めるシャシュ・アナンド氏はいう。「データを収集して有意義なインサイトを抽出することで、企業は適切なタイミングで個別化されたよりよいオファーを顧客に提案できるようになるだろう」。
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ブランドパートナーは2600社超
Madaの目標は、ブランドをもっと簡単に発見できるようにして、ショッピング体験をゲーム化し、究極的にはブランドの商品販売を促進することだと、創業者でCEOのマディソン・セマージアン氏は話す。
現在、同社のブランドパートナーはノードストローム(Nordstrom)やメイシーズ(Macy’s)からドレーパージェームズ(Draper James)まで2600社を超え、アプリの成長に合わせて、さらなる増加をめざしている。現在フルタイム社員5人と約25人の契約社員からなる同社は、ブランドを引き入れるまでのアプリ開発に約2年を費やし、昨年3月に最初のブランド契約が結ばれたと、セマージアン氏はいう。
Madaはアフィリエイトリンクを利用し、ブランドパートナーの売上の一部を収益としている。だが、セマージアン氏によれば、同社が財政面での成長の主軸と位置付けるのは、衣料品販売ではなく、トレンドと顧客の好みに関して収集するデータとテクノロジーだ。ブランドがMadaに参加するプロセスは「2クリック」で完了すると、セマージアン氏は語った。
Madaにおけるユーザー体験
Madaの新規ユーザーは、最初にスタイルに関する10の質問に答える。好みのスタイルや自分の体型、ファッション面でどれだけリスクを冒せるかなどだ。それが済んだら、スワイプ機能を使いはじめる。左は却下、右は保存または「いいね!」だ。着こなし写真のほとんどは、トップ、ボトム、靴、アクセサリーの4つか5つのアイテムからなる。スワイプするごとに、アプリは機械学習によって個々のユーザーの好みのスタイルを理解し、より個人に合ったブランド、スタイル、価格帯のアイテムを提示するようになる。
「現在のアルゴリズムではスタイルクイズを利用しているが、ユーザーの回答が正しいとは限らないことはわかっている。学習はむしろ、ユーザーの(アプリ上での)行動に基づく。スワイプの結果や、アイテムをどんな風に入れ替えるか、さらには画像の閲覧時間などだ」と、セマージアン氏。App Storeで正式に配信される前に、Madaは6カ月のテスト期間を設けた。ベータテストアプリのテストフライト(TestFlight)を使ってバグを修正し、約500人のモニターたちがアプリをどう利用するかを見極めた。同社は現段階では有料マーケティングを実施しておらず、メディア露出と口コミを頼りに利用者を伸ばしていく方針だ。
Madaは、アルゴリズムにスタイリングを学ばせるため、少人数のスタイリストとも提携しているという。
「子どもが母親のメイクを見て覚えるように、アルゴリズムはスタイリストから学ぶ。(アルゴリズムは)スタイリストが着こなしを完成させる様子を観察して、250通りの着こなしを25万通りに複製する」と、セマージアン氏はいう。
「騙して買わせるつもりはない」
着こなしを左右にスワイプするだけでなく、Madaのアプリでは400万以上のアイテムを閲覧し、購入することができる。アパレルアイテムが画面に表示されるたび、ユーザーはたとえばレジーナ・ピョウ(Rejina Pyo)の399ドル(約4万4000円)のセーターをMadaのカートに入れたり、クリックでブランドのウェブサイトに移動して購入できる。Madaのアプリの商品ページには、どの企業が注文のフルフィルメントを行うか(先の例ではレジーナ・ピョウ)や、在庫の寡多も表示される。
「在庫数が少ない場合、人々の購入意欲がわずかに上がることがわかっている。だが、我々はユーザーを騙してモノを買わせるつもりはない。一部のブランドがやるように、本当はもっと在庫があるのに『残り1着』とは言わない。可能なかぎり透明性を追求したいのだ」と、セマージアン氏は語った。
Katie Richards(原文 / 訳:ガリレオ)
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