マーケターとエージェンシー幹部は2022年、再びオースティンに向かうことになる。世界最大級の複合フェスティバル、SXSWが3年ぶりに対面式で開催されるからだ。2022年のフェスティバルはオンラインおよび対面アクティビティの混合ではあるが、「リアルライフイベントが中心になる」という。
マーケターとエージェンシー幹部は2022年、ふたたびオースティンに向かうことになる。世界最大級の複合フェスティバル、サウス・バイ・サウスウェスト(South by Southwest、以下SXSW)が、2020年はキャンセルされ、2021年はパンデミックのためオンラインで行なわれたが、3年ぶりに対面式で開催されるからだ。2022年のフェスティバル――3月11日金曜に開幕、20日に閉幕――はオンラインおよび対面アクティビティの混合ではあるが、「リアルライフイベントが中心になる」と、SXSWチーフプログラミングオフィサー、ヒュー・フォレスト氏は説明する。
「ライブ配信するコンテンツもあれば、あらかじめ録画したものを流すものもある」とフォレスト氏は話し、こう言い添える。「2021年の完全バーチャルイベントで得た学びをもとに、そこでうまく行ったことを2022年に活かしていく」。
ブランドスポンサーにはAmazonプライム(Amazon Prime)、ポルシェ(Porsche)、CNN+、ブロックチェーン・クリエイティブ・ラボ(Blockchain Creative Labs)などがおり、いずれも会場に足を運ぶ人々に向けたアクティベーションを実施する。以前は実験的アクティビティの大半がフェス前半に集中していたが、SXSWによれば、音楽ものに関心を示すブランドスポンサーが多かったことを踏まえ、ドクター・マーチン(Doc Martins)やローリングストーン(Rolling Stone)といったブランドのアクティベーションは今回、フェス後半に催される。
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ただし、アクティベーションと実験的マーケティングイベントが対面式に戻るとはいえ、パンデミックに起因する不安を考慮し、授賞式は行なわれない。授賞式の復活は2023年になると、フォレスト氏は語る。
その一方、配信されるパネルディスカッションの視聴だけでなく、オンライン参加者がバーチャルにオースティンを体験できるバーチャルVRエクスペリエンスもふたたび導入する。さらに、会場に足を運んだ人々も同じく、オースティンにいながら、オースティンをメタ体験できるVRエクスペリエンスを利用できる。
遠方で起きるストーリーテリングを意識し、HTCのVIVE(ヴァイブ)はSXSWの会場にいない記者やクライアントに「なおいっそう気を配る」という。「良くも悪くも、ハイブリッドはニューノーマルだ。すべての記者や参加者が対面式に戻ってくるわけではない」と、HTCのVIVE PR部門グローバルコミュニケーションのトップ、ジェフリー・ポールマン氏はeメールで回答した。
物理的な出席は多くなりそう
2022年3月第2週、対面でのSXSW開催を前に、会場に足を運ぶ予定のマーケターおよびエージェンシー幹部らは、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)といったこれまでの対面式イベントよりは忙しくなるのでは、と話す。実際、第2週になって会合やパーティへの参加を促す多くのeメールが届き始めるまで、物理的な出席者数がどの程度になるのかは定かでなかった。
「我々は一度、CESイベントを開こうとしたことがあるのだが、その時はキャンセルするしかなかった」と、インタラクティブ動画プラットフォーム、カーブ(KERV)のCOOマリカ・ローク氏は語る。「2週間前になって、クライアントたちが不参加を表明したからだ。しかし、SXSWではそれと反対のことが起きている。現在、会合の数は増える一方だ。物理的に出席するという声が多く聞かれるし、パーティやイベントの話も次々に耳に入ってくる」。
カーブは土曜にアクティベーションを、日曜にブランチを主催するとローク氏は語る。ブランチへの物理的参加を表明した者は35人おり、すでに同社の予想を上回っているという。
「アウトリーチ[予想を上回る数]に関しては、私も間違いなく同じように感じている」とレイン・ザ・グロース・エージェンシー(Rain the Growth Agency)のクライアントストラテジー部門SVPカイル・エックハート氏は話す。「会合もイベントもパーティも、大半は3月第1週ですでに予想参加人数を越えている」。
コロナ禍の2年を経た3年ぶりの対面式SXSWがどうなるのか? 無論、蓋を開けてみるまではわからないが、会場に向かう予定のマーケターおよびエージェンシー幹部らは一様に、対面でのネットワーク作りに戻れることへの興奮を口にする。「個人的には、やっぱり対面のほうがいい」とエックハート氏は話す。「オンラインでは、対面と比べ、心を通い合わせにくい」。
今後はハイブリッド体験が必須に
ただし、対面に戻る者がいるとはいえ、業界に詳しい者たちは、こうしたイベントの開催には今後も、対面とオンラインの混合が求められることになると語る。
「パンデミックのおかげで、いわゆる地理的障壁を壊すことができた」とMRNエージェンシー(MRN Agency)CEOレベッカ・ヌネツ氏は話す。「たとえばSXSWについても、いまやオースティンに縛られない。世界のどこにいても体験できる。ライブイベントを物理的なイベントの枠を越えてライブにするための暗号は、この業界のリーダーたちには絶対に解けないと思われていた。それがいまはどうだ。2023年か2024年にはもう、カルチャルカレンシーを有するあらゆる物理的イベントは、ハイブリッドエクスペリエンスの付随が必須になっていることだろう」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)
Illustration by IVY LIU