記事のポイント Googleは2024年下半期に本気でサードパーティCookieを完全廃止する予定で動き始めており、エージェンシー各社もそれを認識している。 エージェンシー各社はデータポイントの不規則性を追跡し、サードパ […]
- Googleは2024年下半期に本気でサードパーティCookieを完全廃止する予定で動き始めており、エージェンシー各社もそれを認識している。
- エージェンシー各社はデータポイントの不規則性を追跡し、サードパーティCookieでのターゲティングに代わる手法を探求しており、機械学習やAIの利用が検討されている。
- マーケティングミックスモデリング(MMM)に再び注目も。ユーザーレベルのデータではなく集計データを使用することでプライバシー規則への対応を模索している。
2024年はついに、サードパーティCookie廃止への移行を目撃する年になるのだろうか?
テック企業がタイミングをずらしてきたにもかかわらず、エージェンシーは何年ものあいだ、プライバシーやコンプライアンスツールや測定基準を開発することで、この避けられない事態に備えてきた。しかし、米DIGIDAYが話を聞いたエージェンシーの何人かは、Google側のこれらのプライバシー変更のいくつかが、今回は本当に起こっていると話している。Googleは、2020年1月にサードパーティCookieを段階的に廃止すると発表して以来、この数年間で何度もその延期を繰り返してきた。
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Googleは2023年に、プライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)のスケジュールを更新し、2024年第1四半期からChromeユーザーの1%を対象にサードパーティCookieの無効化を開始すると述べた。このタイムラインが予定通りであると仮定すると、サードパーティCookieを完全に廃止する計画は2024年下半期に実現することになる。
メディアモンクス(Media.Monks)で機械学習およびAIソリューション担当シニアディレクターを務めるマイケル・ヌヴー氏は、「私がGoogleについて語ることはできないが、今回は非常に真剣なようだ」と述べている。「彼らはユニバーサルアナリティクスのGoogleアナリティクス4(Google Analytics 4)への移行を進めている(中略)古いデータでさえ、移行しなければ、それはすべて今後数か月のあいだに消えてしまう」
消費者についてのデータ指標の進化
Googleがこれらのツールをリリースし、プライバシーに関する法律がデータの収集方法を変えるにつれて、エージェンシーは、消費者が自分のデータを共有するためにどのような選択をするかについての絞り込みを進めている。その一部は、キャンペーンのテスト、クライアントのための法的およびコンプライアンスの監視、異常検知(データの不規則性)、および人々の個人識別情報が適切に使用されていることを確認することにまでおよぶ、とヌヴー氏は説明する。
これらの疑問への答えは、トラフィックのパターンによって異なる。
ヌヴー氏はDIGIDAYの取材に対してこう答える。「むしろ戦略的意味合いが強い。ユーザーがChromeからアクセスしてくるのであれば、強固なサードパーティCookieベースを持つ可能性が高く、一方でSafariやFirefoxからアクセスしてくるのであれば、それは減少するだろう」。
多くの場合、ブランドはサードパーティCookieの使用を避けられる方法でキャンペーンを実施することで、この問題を「回避」している、とヌヴー氏は付け加える。「彼らが積極的にそれを求めているわけではない。Googleと多くのDSPは、サードパーティCookieに依存する機能を削除し始めている」とヌヴー氏は述べる。現在から最終的なCookie廃止までのあいだに、ブランドはさまざまなチャネルでより多くの効率性テストを行わなければならないだろう、と同氏は付け加える。
メディアモンクスはまた、(異なるレートでのデータの増減など)機械学習を使ってデータポイントの不規則性を探して、ユーザーを追跡するためにサードパーティCookieで行っていたことを置き換えようとしている。Cookieを使ってさまざまなウェブサイトを横断して人々を追跡し、不規則性を見つけるのではなく、限られたデータポイントでそれを行わなければならない。
「機械学習とAIは、それらの変換を確実に実行するために使用できるツールだ」とヌヴー氏は言う。
カスタマージャーニーとパーソナライズ化
レイザーフィッシュ(Razorfish)のデータサイエンスおよび分析担当エグゼクティブバイスプレジデント、シシ・チャン氏は、その他の変化について、特にカスタマージャーニーデータの分析方法において「コンプライアンス指標の普及」が始まると考えている。つまり、ファネル全体で離脱段階を測定する代わりに、コンプライアンスの変更に関連するパーソナライズされたコンテンツにおいて、人々がどのように離脱しているかに注目することになる。
「XからYへの離脱を評価するのではなく、パーソナライゼーションの取り組みAからパーソナライゼーションの取り組みBへの離脱、そして、こうした取り組み全体を通じてユーザーがオプトインした割合のように、関連するコンプライアンス指標を評価することになる」とチャン氏は話す。
「我々は、体験がどのようにプライバシーとデータに準拠しているのか、また、より良いデータの価値交換を促進するために、ユーザー体験を再構築する機会がどこにあるのかを理解するのに役立つように、時間をかけて進化していくのを見ていくことになるだろう」。
消費者がコンテンツに「知覚価値」を見いださない場合、エージェンシーはオプトアウトの変化率を見て、より多くを理解できる、とヌヴー氏は付け加える。同氏は、広告が最適化されている場合、より多くの同意が見られることが多いと述べる。「彼らが見たいと思う以上の広告を送りすぎることは、不気味の谷を越えて、気味悪くなるほど洞察力のあるものを人々に送ることになり、いずれにせよ実際には逆効果だ」
MMMへの回帰
より多くのエージェンシーが、マーケティングミックスモデリング(以下:MMM)を使用した新しい測定機能を検討または採用し始めている。MMMは、過去のデータに基づいて売上を見直し、影響とROIを決定するために使用される統計的アプローチだ。これらのMMM手法は、コスト削減に役立ち、ユーザーレベルのデータよりも集計データを使用して、プライバシー規則への対策になるという。
メディアカルチャー(Media Culture)のCOOジャレド・ハリントン氏は、コンプライアンス対策の場合、消費者情報の匿名性を保ちつつ、マーケターにデータを提供する「コホートレベル」のものよりも集計モデルへの依存に回帰することを意味する可能性があると述べる。
MMMは「最も意味のある測定形態のひとつ」だとハリントン氏は言う。
MMMはかつては、過去のパフォーマンスを長期にわたって見るために、マーケティングの影響を総合レベルでみる点で、よりハイレベルなものであったが、高価で非効率的になりがちだったとハリントン氏は指摘する。また、個々の消費者データセットに基づく測定では、粒度に欠けていた。
現在、新たなアプローチがこれらの課題に実際に対処しており、「我々は現在、MMMを使用して、毎日頻繁に起こる細かい最適化の意思決定に情報を提供する段階にきている」とハリントン氏は言う。これによりエージェンシーは、匿名化されたデータを使用しながらも、強力な測定ツールをクライアントに提供することができる。
Antoinette Siu(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:分島翔平)