NYに拠点を置くセレブ御用達ラグジュアリーサロン「ジュリアン・ファレル」では、パンデミックの間に犬を飼い始めた裕福な顧客が急激に増加した。この流れから犬用グルーミングブランド「プライド+グルーム(Pride + Groom)」を導入。このほか犬用ブランドの高級化が加速しそうだ。
ヘアカット料金が1000ドル(約11万円)というセレブ御用達ラグジュアリーサロン「ジュリアン・ファレル(Julien Farel)」には、パンデミック後に需要が急増している。ニューヨークに拠点を置くこのサロンは一時、1200人待ち状態であったが、押し寄せているのは人間だけではない。裕福な顧客が、パンデミックの間に飼い始めた「パンデミック・パピー」を連れてくるのだ。
「多くの顧客が、新らたに犬を飼い始めている」と語るのは、サロンのCEO兼共同創設者であるスーリン・ファレル氏だ。ヘアカットやカラーリングに子犬を連れてくる顧客が、増えていることに気付いた。「本当の大流行のようだ」と語る同氏がよく見かけるのは、市場を席巻中のフレンチ・ブルドッグや、ゴールデン・レトリバーの子犬、ドゥードル(ゴールデンレトリーバーとプードルを交配した犬種)などだという。
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過保護な顧客が増加
ファレル氏自身も最近サモエドの子犬を飼い始めた。そんな同氏の目に留まったのは、新しい犬に「美しいリーシュやカラー」を装着し、ゴヤール(Goyard)のキャリーケースで連れてくるといった、過保護なまでに可愛がる顧客だった。そこでサロンで提供するヘアケアのラインナップに、6月から犬用グルーミングブランド「プライド+グルーム(Pride + Groom)」を追加することにした。
プライド+グルームは、ヴォーグ(Vogue)の元編集者であるレジーナ・ヘイムス氏と元アートディレクターのジェーン・ワグマン氏が、広告会社でアートディレクターを務めていたヘザー・パールマン氏、化学エンジニアのパトリシア・マチャド氏とともに2020年4月に立ち上げた一般的なペットショップで売られているシャンプーよりも、もっとこだわりたい飼い主のためのブランド。シャンプーとコンディショナーのセットが60ドル(約6500円)、これにフレグランスを追加したセットは85ドル(約9500円)で販売されている。
パンデミック期にペットの里親応募者が増え、消費者がペットへの支出を増やした時期とも重なり、タイミングは絶妙だった。自分たちのブランドを「ドッグビューティー」カテゴリーと位置付けるプライド+グルームは、抜け毛の多い、少ない犬種向けや敏感肌向けなど、毛や肌のタイプに合わせた製品を提供。人間用の上等なシャンプーに配合されているような、アボカドオイルやカレンデュラ(トウキンセンカ)エキスなどの成分を含んでいる。
犬の美容に特化した「プライド+グルーム」
「飼い犬を人間化するという、大きな流行がある」とワグマン氏。
ヘイムス氏も「生鮮食品から、豪華な家具のようなクレート(持ち運び可能なハウス)に至るまで、あらゆる犬用品の売り上げが伸びている。人々はパンデミック期に癒しを与えてくれた犬のために、犬の暮らしにかかわるすべてのものをアップグレードしたいと考えている」と述べる。だが、グルーミング関連商品については、選択肢が限られていた。
「美容に特化した犬関連の企業が、ほとんど存在していないことに気が付いた」とワグマン氏は振り返る。このブランドのことをファレル氏が知ったのは、サロンの顧客であったヘイムス氏がヘアカットに訪れたときだった。「使用感が良くて香りも素晴らしい、効能が明らかな製品なので、よい贅沢だと思う」とファレル氏は説く。
プライド+グルームが提携するのは、ジュリアン・ファレル・サロンのみではない。同ブランドの製品は司会者のオプラ・ウィンフリーの「オプラズ・フェイバリット・シングス(Oprah’s Favorite Things)」に選ばれ、人間向けのビューティ商品を扱うことで知られるラグジュアリー系の小売店やサロンでも販売されている。Amazon、チューイ・ドット・コム(Chewy.com)、ハイグレードなグルーマーといった従来の小売チャネルのほかにも、ブルーミングデールズ(Bloomingdale’s)、セルフリッジズ(Selfridges)、ニューヨークを拠点とするオンダ・ビューティー(Onda Beauty)でも取り扱っている。母の日には、セレブ御用達のヘアスタイリストであるハリー・ジョシュ氏と協働し、プレゼント企画を実施した。フィットネストレーナーのアイザック・ブーツ氏がハンプトンズ(ニューヨーク州)で夏に運営するポップアップストアでも、販売されている。
セフォラでもペット用商品を販売
「人々は、自身が美容サービスを受けながら、犬用の美容用品を買うということにオープンなようだ」とヘイムス氏。人間用のハイクラスな美容ブランドが、ペット用の商品を高級路線の小売店で発売するというのは、トレンドになっている。たとえば、ウェ(Ouai)は最近、限定販売していたペット用のシャンプーを定番商品として、セフォラ(Sephora)で通年販売し始めた。イソップ(Aesop)、キールズ(Kiehl’s)、ピンク・ムーン(Pink Moon)も犬用シャンプーを提供している。
プライド+グルームのブランディングは、黒と白を大胆にあしらったデザインで、上質感を演出している。同ブランドの創設者たちは、飼い主がバスルームのカウンターに置いておきたくなり、隠そうという気にならないようなボトルを作りたかったのだと、ワグマン氏は語る。「ポイントは、ほかのビューティ製品と同じくらいに飾っておきたいと思う美しい製品であるということだ」。
「犬たちはよい気分になりたい。魅力的になりたい。人は何かを愛するとき、それを人間化するものだ」とヘイムス氏は話す。
[原文:Luxury ‘dog beauty’ is officially a thing thanks to pampered pandemic pets]
LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:山岸祐加子)