7月25日にロサンゼルスで初めて開催されたGlossyビューティポップイベントでは、5つのパネルディスカッションから美容と文化が交差するこの時代のスナップショットが捉えられた。文化というものは、政治、映画や音楽、テレビか […]
7月25日にロサンゼルスで初めて開催されたGlossyビューティポップイベントでは、5つのパネルディスカッションから美容と文化が交差するこの時代のスナップショットが捉えられた。文化というものは、政治、映画や音楽、テレビから生まれるものだが、これまで以上にソーシャルメディア上では分刻みで定義されている。
Glossyは、クリエイターが美容業界の将来に影響を与えていること、また、彼らの多くが著名なブランドの創業者であることを念頭に置いて、トップインフルエンサーやセレブを招いた。彼らと協働したり、共同設立したブランド創業者らも招待した。この日に学んだ重要な10項目を以下に紹介する。
01.ソーシャルメディアで成功を収めるには機敏性が必要
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ソーシャルプラットフォームは日々変化している。プラットフォームは競い合って、新機能をローンチしたり、刷新したアプリをローンチしたりしている。関連性を保つためにはブランドは機敏でなければならないと述べたのは、トゥーフェイスドコスメティクス(Too Faced Cosmetics)のグローバルマーケティング担当シニアバイスプレジデント、ソマー・テジュワニ氏だ。「ここにいる全員が、6年前にはほとんどの時間をTikTokに費やすことになるとは思いもしなかった。では、数年後にはどうなっているのだろうかと考えなければ。なぜなら、何か(新しいこと)が起きるはずで、それに備えることが重要だからだ。クリエイターなら考えることは、好調になるかはわからないが、その新しいプラットフォームに移行してそれに賭けるのかどうか。プラットフォームが人気になるなら、自分は最初に参入して最初に市場に出る能力を手に入れることになる。ブランドなら、契約に新規プラットフォームをどのように組み込むのかということがある。人気が出るプラットフォームを正確に把握して、それを試して準備をするだけだ。失敗したらそのときはそのとき」。
02.本当に気に入っているプラットフォームに時間を費やしてもいい
機敏であることにはメリットがあり、早期導入者であることは多くの場合、報われるが、自分の強みや視聴者がどこにいるのかを知って粘り強く続けることにも価値がある。「すべてのソーシャルメディアプラットフォームは、まったく同じことをして激しい競争を繰り広げている」と、長年コンテンツクリエイターであり、スキンケアブランド、ナチュリウム(Naturium)の創業者でもあるスーザン・ヤラ氏は、ソーシャルメディアプラットフォーム上で途切れることなく登場する模倣機能について言及した。ヤラ氏のアドバイスは、自分の得意なことにこだわるということだ。「長い形式だろうと短い形式だろうと、自分が得意なことというのはどんなものでも重要だ。注力したいプラットフォームを選択しなければならない」。
03.オーセンティシティがバズワードになるのには理由がある
顧客は、誰が情熱に基づいてブランドを構築しているのか、自分の名前を貸しているだけなのかを嗅ぎ分けることができる。
「バイラルになっても、行動の裏に中核となる理由がなかったり、あまりつながりがない人たちにとって、たとえばトレンドのダンスを何度も繰り返し踊るようなことなら、フォロワーにはその人がどんな人か、また、なぜブランドを始めるのかはわからない。なので、成功を収めるのはさらに難しくなる可能性がある。皆から欲しいと思われて、最初のコレクションは即完売するようなことがあるかもしれない。だが、(消費者は)ブランドを作った理由について創業者のストーリーを追っているのだろうか?そして、そのブランドは創業者が全力を投じて構築してきたものだというのがわかるのだろうか?それとも、(ブランドローンチは)単にできることだったから?」と、イスクラ・ローレンス氏は、インフルエンサー創業の長続きするブランドを構築する際の課題について語った。ローレンス氏はボディ・ヘアケアのソルトエアー(Saltair)をローンチする前に、10年間のモデル業とコンテンツ制作のなかでブランドを創業しないかと何度もアプローチされてきたという。「それは、『マニキュアを作るが、それにあなたの名前をつけたいか?』『ヨガマットを作るが、それにあなたの名前をつけたいか?』というようなものだった。私は断った。私が所有権を持ち、意思決定できる自分自身のブランドを作りたかったから」。
04.インフルエンサーとしてのブランド創業は強力な踏み台
ローレンス氏が述べたように、フォロワーによってブランドの最初の製品が売り切れる可能性はあるが、必ずしも顧客を長期的に維持し続けられるとは限らない。とはいえ、そのような最初の勢いは強力であり、クリエイターによりローンチされたのではない大部分のブランドにとってこれは夢のようである。デシ・パーキンス氏がパンデミックの始まった頃に初めてのブランドである、サングラスを販売するデジ(Dezi)を発表した方法を考えてみよう。「デジを発表したときのことを覚えている。そのときはまだ誰もこのブランドがどのようなものかは知らなかった。ロゴを投稿しただけだったのに、ブランドページで1時間ほどで30万人のフォロワーを獲得した。胸がドキドキして、そして『皆が興奮しているから、実際にどんなブランドかを言うのが怖い』と思った」。幸いなことにデジは好評を博した。
同様に、女性向けウェルネス企業、ラブウェルネス(Love Wellness)の創設者、ロー・ボスワース氏は次のように述べた。「自分のブランドを持っている場合にソーシャルメディアの興味深い点は、初期段階では顧客獲得のために金を払う必要がないことだ。オーディエンスがいて、彼らから愛されていれば、製品を買いたいと思ってもらえる。なぜなら、オーディエンスはあなたの人生やジャーニーに関心があるから」。しかし、その踏み台では到達点に限界がある。「これはクリエイターなら誰もが同感だと思うが、ある時点で、『既存のオーディエンスからは私がやっていることをすでに知られている』という点で頭打ちになると思う」。
05.デメリットもある。打たれ強くなければならない
そして、ここが特にクリエイターが設立したブランドの場合、複雑になるところだとボズワース氏は言う。「新しい人々の信頼を獲得し始めなければならない」。それは、「インターネット上であなたを好きではない人や、あなたについて間違った印象を持っている人」を魅了しなければならないかもしれないと同氏は述べる。確かにこれはすべての起業家に当てはまる。だが、ボズワース氏は、インフルエンサーは特に打たれ強くなければならないと言う。「インターネット上では誰にでも言いたいことを言える。かなりワイルドだ。コンテンツ制作が生活の一部になっている人々にとって、あのようにさらされる可能性があるというのは感情的にとてもつらいことだと思う。ささいな間違いを犯さないかと、いつも恐怖心をある程度感じながら生きている」。
06.ブランドの成長のためには、人気クリエイターの顔だけでは不十分
フレグランスブランド、フラー(Phlur)の共同創業者でコンテンツクリエーターのクリセル・リム氏は次のように述べている。「当社では製品ローンチに私の顔を使わない。これは実際すごく意図していることだ。会社と事業が私や私の名前を超えて成長することが本当に重要だから。自分を通じて会社や製品を知ってもらい購入してもらいたいとは思うが、人から聞いて購入したり発見してもらいたいとも思う。今の私にとっての最大の褒め言葉は、『ああ、フラーの創業者だったの?まったくわからなかった』というものだ」。
07.ブランドコラボレーションは、インフルエンサーに創造的な自由があるときにもっとも効果的
コサス(Kosas)の創業者、シーナ・ザデー=デイリー氏は、ブランドとインフルエンサーのパートナーシップがもっとも効果的に機能するのは、ブランドがインフルエンサーに自由に仕事をさせるときだと理解している。「我々がインフルエンサーと提携するのは、その人のコンテンツがとても気に入っているからだ。また、私が思うには、インフルエンサーはパフォーマーのなかでもっとも才能のあるタイプで、彼らが言うべきことを我々が指図するのではない。我々はインフルエンサーのコンテンツを注意深く研究しており、コンテンツのスタイルが気に入っているから提携している。そして、ブリーフィングをするときは、既存のコンテンツから気に入ったものの例だけを取り上げている。(インフルエンサーが行っていることの)何かを変えようとしているのではない」。もちろん、コサスはキャンペーンのビジネス目標も(ブリーフに)含めているという。だが、コサスは採用したインフルエンサーが「素晴らしいパフォーマー」であることを知っており、彼らにクリエイティブ面での自由を与えてそのブリーフを実行できるようにしている。
08.1回限りのパートナーシップの時代は終わり
ザデー=デイリー氏も、1度限りの投稿ではなく、ブランドとインフルエンサーとの長期的なパートナーシップのファンである。彼女は、コサスが新しい口紅コレクションのローンチのために最近提携したインフルエンサー、ケンジントン・ティロ氏とこの点について話し合ったという。長期パートナーシップは「ブランドとクリエイターの両方にとって相互利益がある」とザデー・デイリー氏。ブランドにとっては、クリエイターがその製品を実際に使用しているところをオーディエンスに示すことができる。「定期的に(クリエイターの)顔に製品が使われているのを見せられるなら、どんなことでも名誉であり恩恵だ。実際に製品が気に入られているということを意味する。(クリエイターらは)製品の見た目が気に入っており、彼らにとっては効果があり、肌に合っているということだ」と同氏は述べている。もちろん、インフルエンサーにとって、特に今日の飽和状態の美容市場においては、ブランドとの関係や好感度が本物であることを証明するパートナーシップは同様にメリットがある。
09.人気のインフルエンサーはやはり話題と売上を促進できる
メガインフルエンサーのお墨付きは依然として売上を促進する可能性がある。大人気のインフルエンサー、アレックス・アール氏から最近お墨付きをもらったパトリック・タ氏のコメントだ。「彼女は、3分間のビデオの最後にメジャーグローバーム(Major Glow Balm)について投稿した。それはスリーパー製品だった。当社の全コレクションの中で私が気に入っているものの1つで、2年以上も前に発売したものだ。私は毎日使っているのだが、実際には売れておらず、販売をやめようかと思っていた。そんなとき、あの投稿があった。(売上が伸びたのを見て)『一体何が起こったんだ?彼女は誰だ?なぜそんな力を持っているのか』と思った。アレックスはとても正直で共感でき、彼女と協働できたことは正直言って(ブランドにとって)もっとも素晴らしいことだった」と、タ氏は、アール氏の支持がもたらした結果について語った。メジャーグローバームが販売中止になる心配はもうない。
10.バイラル性が最終目的であってはならない
特にTikTokではバイラルになりたいという欲求が常に存在している。しかし、グラムジラことステファニー・バレンタイン氏は「バイラルになるのはいまではもっと難しい。人々とつながることが難しくなった」と語っている。彼女からの知恵の言葉は、最終的にはバイラルになることが主な目標であってはならないということだ。「我々クリエイターの多くは、ソーシャルメディアの目的は社交であることを忘れている。次のブランドとの取引を獲得することが目的ではない。コラボを獲得することではない。それは、美容を通じて、知ることのなかった世界中の誰かとつながること。そしてそれこそがパワーなのだと思う。我々はいつも次の金銭を追いかけているので、そのことを忘れてしまう。でも、コミュニティを構築するとき、我々は1分間のバイラルビデオよりもはるかに強力なものを構築しているのだ。それこそが、我々の美容コミュニティの本当の目的であり、注力すべきものだ」。この意見には多くの拍手が送られた。
[原文:Glossy Beauty Pop: 10 learnings about the power of the influencer from the inaugural event]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)