「 D2C ブランドたちは、もっと情報共有を行うべき」: GGVキャピタルのロビン・リー氏

マーケティングミックスの多様化を目指すeコマースブランドやD2C(Direct-to-Consumer)ブランドが増えている。そんな彼らに必要なのは、さまざまなチャネルでの取り組みに関する情報をもっと共有することだと、GGVキャピタル(GGV Capital)のプリンシパル、ロビン・リー氏は考えている。

「P&Gやユニリーバ(Unilever)のような巨大ブランドは、この点で強みを持っている。膨大な数の代理店と提携しているからだ」と、リー氏は米DIGIDAYの姉妹メディア、モダンリテール(Modern Retail)の取材で述べている。だが、若いブランドがマーケティングや広告の取り組みを社内で強化しようとしても、ほかのブランドがどのようなチャネルで上手くいっているのかを教えてくれるパートナーはそれほど多くない。

GGVキャピタルは中国と米国にオフィスを構え、さまざまな業界でシード投資やシリーズ投資を行っているベンチャーキャピタルだ。そのため、複数の企業でうまくいった取り組みを知ることができる。また、自社のポートフォリオ企業に対し、新興ブランドでは接触して情報を得ることが難しいような企業の幹部と話をする機会を提供できる。

リー氏は、リソースの共有をさらに進めるための戦略として、eコマース起業家のコミュニティ「エボルビングE(Evolving E)」を設立した。エボルビングEでは、GGVキャピタルのポートフォリオ企業を対象に、ピンタレスト(Pinterest)、レディット(Reddit)、YouTubeなどのプラットフォームでのマーケティング手法を学べる「マスタークラス」ワークショップを頻繁に開講している。また、7月末にはTikTok(ティックトック)に関するワークショップも開催する予定だとリー氏はいう。偶然だが、TikTokの親会社であるバイトダンス(Bytedance)もGGVのポートフォリオ企業だ。

GGVキャピタルでリー氏が投資している主な分野は、eコマースと小売だ。同氏は現在、美容ブランドの持株会社グロー・コンセプト(Glow Concept)とD2Cランジェリーブランドのライブリー(Lively)で役員を務めている。過去には、ファンクション・オブ・ビューティ(Function of Beauty)、ボックスト(Boxed)、ポッシュマーク(Poshmark)、イボタ(Ibotta)への投資にも携わっていた。米DIGIDAYはそのリー氏に、ブランドがマーケティングミックスの多様化をうまく進める方法や、D2Cビジネスをはじめたブランドが成功する可能性について、同氏の考えを尋ねた。回答は読みやすさのために若干の編集を加えてある。

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――ブランドが適切なコストで顧客を獲得できる計画を立てているかを判断するにあたって、ブランドにどのようなことを期待している?

データや事例を集めるだけなら、はじめのうちはFacebookやインスタグラム(Instagram)を利用するのがもっとも簡単かもしれない。どちらも非常に多くのユーザーを抱えているからだ。最初の段階ではそれでもいいだろう。しかし、(そのチャネルの)限界がどこにあるのか、もし資金がなくなったらどうなるのかを考えておく必要がある。オフラインのチャネルや昔からある屋外広告などのチャネルを利用する結果になったときに、どれほど利益が失われてしまうのかといったことをだ。

いまは実店舗の家賃を払っていなくても、最終的には多くのデジタルブランドが、ごく普通の消費者にリーチするためにオフラインに向かわざるを得なくなる。そうなれば、実店舗を持っていないことの優位性はもはや存在しない。デジタル店舗に支払っている家賃に、オフラインの実店舗の家賃が加わることになるのだ。

私がこのエボルビングEのコミュニティを運営しているのは、GGVキャピタルのポートフォリオ企業に含まれるeコマース起業家のためだ。我々はこのコミュニティで、チャネルや多様化に関するマスタークラスを数多く開講している。ピンタレストは、多くの小規模ブランドがまだ十分に取り組んでいない場所のひとつだ。Googleのキーワードは、いまも非常に重要性が高い。アフィリエイトももちろん重要で、そのための戦略を早い段階から構築することがとても大切だ。レディットは、うまく活用しているブランドやプラットフォームの数がまだ少ない。我々のポートフォリオ企業を見ると、YouTubeでの取り組みを行っているところさえ十分な数に達していない。

――インハウスでの取り組みを増やしているブランドが、エージェンシーと提携することなく、マーケティングに関してより幅広いインサイトを獲得するにはどうすればいいだろうか?

我々は、ポートフォリオ企業と一緒になってこの問題に取り組もうとしている。その最初のステップがワークショップの運営だ。その結果、彼らはピンタレストやレディットやTikTok(などのプラットフォーム)との関係を自力で構築し、自ら学習できるようになった。

また、(マーケターが)ほかのマーケターと話ができるような独自のネットワークを構築する必要がある。ほとんどの場合、彼らが同じ顧客をめぐって競い合うようなことはないし、同じ予算を争うこともないはずだ。我々から見れば、彼らは相互の交流はもちろん、リソースの共有さえ十分ではない。だからこそ、我々は自社のポートフォリオ内でこうした取り組みを拡大しようとしている。

単にブランド担当者やパフォーマンスマーケターを雇うことと、成長を実現するための人材採用方法を理解することは、(必要なスキルが)まったく異なっている。また、データとインサイトを担当するチームを強化することがきわめて重要だ。我々は、ポッシュマークやイボタでその成功例を目にしてきた。彼らは早い段階から、こうしたデータインサイトチームを作っていたのだ。ブランドはデータを集めて情報に基づく意思決定を行い、広告支出に対する収益(ROAS)を明らかにする必要があるが、私の考えでは、このような問いに答えられる企業は多くない。

――D2Cの現状に関するあなたの考えを教えてほしい。これからさらに多くの統合が見られるようになるだろうか? オンラインでブランドを構築することの限界はどこにある?

実際のところ、ハリーズ(Harry’s)のような成果を上げることはできない。同社は非常に多くの資金を調達し、何年もの時間をかけてあのような成果を達成した。

いまでは、ブランドが大きく成長することが難しくなっている。メイクアップブランドの世界で抜きん出た存在になったり、新たなヨガ製品の企業を打ち負かしたりするには、どうすればいいだろうか。そのための取り組みをいままでと違うやり方で行うには、コミュニティを取り込むことと、さまざまな販売チャネルを取り込むことが必要になる。単に買収について話しているのではない。しかし、いま抱えているユーザーを活用するだけで販売を拡大できるだろうか。ライブリーは、同社のファンで同社に代わって製品の話をしてくれるアンバサダーを7万人抱えている。では、そのようなことを可能にする新しいモデルは何なのだろうか。

この分野で数十億ドル規模の成果を上げるのは、非常に困難になるだろう。そして、ブランドが行き詰まっている場合、その理由は彼らがあまりの多くの資金を調達したことにある。多くのD2Cブランドがすべきことは高い収益性の実現であり、実際にはそれほど多くの資金を集める必要はない。

本来、彼らの製品は利益率が高いはずだ。したがって、たとえウォルマート(Walmart)やターゲット(Target)などの小売企業で製品を販売していたとしても、あらゆる注文や購入で高い利益率を実現できるだけのマージンを確保する必要がある。だが、実際には多くの起業家がこう考えている。「我々の見積もりでは、1人の顧客の生涯価値は400ドルだ。だから、いまはそうでなくても、このユーザーに300ドルちょっと使うことができる。最終的には、彼らから100ドルを稼ぐから」と。このような状況を作り出すために多額の資金を注ぎ込むベンチャー企業が見られるのは、これが理由だ。だが現実には、いまもそんな状況にはなっていない。

問題は、規模が大きくなるほど、リーチする人々が筋金入りのファンやアーリーアダプターではなくなるということだ。大衆市場のユーザーへのリーチを増やすにつれて、自社の製品を頻繁に買ってくれる人や自社を強く支持してくれる人は少なくなる。これが、資金を集め過ぎてしまうことの問題だ。彼らは、達成できる成果を自ら大きく狭めてしまっている。

Anna Hensel(原文 / 訳:ガリレオ)