インテリアデザイナーからファッションアイコンへと変身を遂げたアプフェル氏。100歳の誕生日の5日前、8月24日にゼニオプティカル(Zenni Optical)と協働したアイウェアの新コレクションを発表した。このコラボは、昨年末、ゼル側がアプフェル氏の代理人からコールドコールを受けて始まったという。
大胆なファッションが好きな人にとって、アイリス・アプフェル氏の100歳の誕生日は、本人が計画したとおりに盛り上がるものになるだろう。
100歳のアプフェル氏の意欲的なコラボレーション
インテリアデザイナーからファッションアイコンへと変身を遂げたアプフェル氏は、100歳の誕生日の5日前、8月24日にゼニオプティカル(Zenni Optical)と協働したアイウェアの「アイリス・アプフェル・ゼンテニアル・コレクション(The Iris Apfel Zentennial Collection)」(訳注:ゼンテニアルは、ゼニの社名と100周年を意味するセンテニアルをかけている)を発表した。複数のカラーウェイで展開するフレーム5点からなる同コレクションは、アプフェル氏とゼニが結んだ4年のパートナーシップによる最初のオリジナルコレクションだ。2者の提携は、5月にゼニの既存のフレーム100点にアプフェルがタッチを加えたアプフェル・エディットから始まっている。
ゼニとの協働は、1月以降アプフェル氏が組んだ一連のブランド提携で最新のものである。5月には、ホームセンターチェーンのロウズ(Lowe’s)との室内装飾の4コレクションを発表、ハンドメイド製品マーケットプレイスのエッツィー(Etsy)ではスタイルアソートメントをキュレーションした。まだ多くのパートナーシップが進行中だと本人は語っている。
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ゼニのライフスタイル&ソーシャルインパクト・パートナーシップの責任者であるミシェル・ティクノー氏は、昨年末、アプフェル氏の代理人からコールドコールを受けて協働につながったと述べている。「(アプフェル氏と代理人は)2021年を、彼女にとって意義のあるいろいろなカテゴリーで、さまざまな方法で祝おうと考えていた」。
アプフェル氏いわく、「コーディネートは、自分の個性をアピールするためのシグネチャーアクセサリーがひとつ、またはたくさんなければ完成しない。アクセサリーは大きくてカラフルであればあるほど良い。アイウェアラインを立ち上げるには、素敵なアイウェアパートナーが必要だと思っていた」。
コレクションの第2弾は今年のホリデーシーズンに予定されている新作コレクションで、2025年まで少なくとも年に2コレクションが発表されることになっている。今後、バレンタインデーのコレクション、アプフェル氏の有名なファンとのコラボ、アプフェル氏がデザインしたポーチやスカーフなどアイウェア以外のアクセサリーも期待されている。
パンデミックが後押ししたゼニのビジネスモデル
2013年にローンチしたゼニは、平均価格が40ドル(約4400円)という手頃な処方メガネで知られるD2Cブランドだ。同社が老眼鏡メガネをローンチしてわずか数カ月後にアプフェル氏とのコラボレーションが実現した。パンデミックによって、あらゆる年齢層の消費者がオンラインで初めてメガネを購入するようになっている。また、オンラインで参加者の上半身だけしか映らないZoomがミーティングの新しい場所となったこともビジネスを後押ししている。
ゼニのコラボレーションの相手はほかに、デザイナーのココ&ブリージーやシンシア・ローリー氏、女優のラシダ・ジョーンズ氏、サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(プロアメフトチーム)などのスポーツチーム、eスポーツのコール・オブ・デューティ・リーグがいる。
ティクノー氏は「なぜZ世代のパートナーがいないのか、と言われる。しかし、我々のスローガンは、すべての人のためのアイウェアだ」と言う。ゼニは、偽りなく、親しみやすく、オーディエンスの価値観に訴えかけるパートナーを探しているそうだ。また、パートナーらは「単なる看板」ではなく、パートナーシップにおいて積極的な役割を果たすことが期待されている。現在、同社は男性のオーディエンスを拡大を狙って、男性が共感できる人たちとの協働を模索しているところだ。
アイリス・アプフェル・エディット(Iris Apfel Edit)の5月の売り上げは予想を上回ったとティクノー氏は述べている。購入者は主にZ世代とミレニアル世代と、若年層に偏っていた。エディットは、旅行、フリーマーケット、バザール、大胆な色など、アプフェル氏が情熱を注いでいるテーマ別に分類された。アプフェル氏定番の大きな丸フレームもその中に含まれていた。
真のデザイナーぶりを発揮したアプフェル
ゼンテニアル・コレクションのローンチに先立ち、デザインセッションの撮影のために、サンフランシスコのゼニのチームはフロリダ州パームビーチのアプフェル氏の自宅を4度訪ねた。また、Zoom会議と電話も利用した。いろいろなマーケティングツールのほかにも、チームは親密な会話を捉えたルックブックや動画のために「膨大な量のコンテンツ」を撮影した。「直近の撮影は4つのコレクションのためだった」とティクノー氏は言う。
「(アイリスは一般的な高齢者のように)編み物や裁縫やゴルフで毎日を過ごしているのではない。彼女は仕事をしている。私が知るなかでもっとも多忙な女性のひとりだ」とティクノー氏。ティクノー氏は、パームビーチを訪問した前の週にアプフェル氏が連日8時間も電話をしていたと彼女から聞かされたことを思い出す。そして、ゼニのスタッフが、アプフェル氏の要望に沿って午後9時を過ぎても動画撮影を続けたこともしばしばあった。「彼女は10代の若者よりもエネルギーがある」。
ティクノー氏によると、アプフェル氏は新コレクションの素材として、手作業で磨かれたアセテートの「キャンディストア」にあるような色を選んだという。ゼニの新色には、アプフェル氏のデニム愛からヒントを得たセルリアンが含まれている。スタイルの特徴は、象眼細工の金属刻印と「アイリスが大好きな幅広のテンプル(つる)」だ。コレクションには、5月発表のエディットでアプフェル氏が気に入ったフレームの更新バージョン、そして新しいラウンドシェイプとキャットアイシェイプが加えられた。「アプフェル氏は、ロゴやブランディングなどあらゆる面で我々ととともに仕事をこなした。彼女は真のデザイナーだ」とティクノー氏。
「このコレクションは、他人と違っていて目立ちたい人のものだ。今は変化のない同じ状況を打ち破ることは難しいが」とアプフェル氏は言う。「建築、大胆な色彩や模様や装飾への私の情熱が伝わると思う。私はずっとこれらにインスピレーションを受け続ける」。
気軽な価格帯とマーケティング戦略
度付きレンズとブルーライト遮断レンズ付きで入手できるメガネは、これまでの同社の製品ではもっとも高い価格で45.95ドル〜49.95ドル(約5100円〜5500円)。それでも、ティクノー氏によると、この価格は「ファッショニスタが気分や季節、曜日などに合ったメガネを購入する」ことが可能になるものだという。
同コレクションのマーケティングでは、ゼニはメガネを進呈したファッションとライフスタイルのマイクロインフルエンサーらに依存している。DIYファッションや写真などに特化しているインフルエンサーが将来のコレクションに参加する予定もある。また、同社はアフィリエイトマーケティング、アーンドメディアーティクノー氏いわく、「アイリスは愛されているから」。そして、アプフェル氏のインスタグラムの160万人のフォロワーも頼りにしている。
デジタル以外では、現時点では発表されていない誕生日のアクティベーションが進行中であり、ゼニは5月のアプフェル・エディットの際に使ったマーケティング活動の一部をまた行う予定だ。5月の活動には、機内誌の裏表紙やニューヨークのJFK空港の入口に設置されたビルボード広告も含まれていた。また、ゼニは夏のあいだ、同社のコラボレーター全員を掲載したタイムズスクエアのビルボード広告を打った。
提携先にもインクルーシビティを追求するブランドたち
アプフェル氏とゼニのコラボレーションの実現は、多くのファッションブランドがあらゆる年齢の客にサービスを提供してアピールするために、製品とマーケティングでインクルーシビティを優先している動きと一致している。50歳以上のインフルエンサーと協働するブランドが増えており、ファッションショーに51歳のナオミ・キャンベル氏を起用したマイケル・コースのように、ブランドは年上のモデルを採用しつつある。一方、8月24日、ギャップ(Gap Inc.)は、共同創設者であるドリス・フィッシャー氏の90歳の誕生日を祝い、社員が地元に貢献する特別なサービスデーを発表し、ブランドのソーシャルチャネル全体に誕生日のメッセージを投稿した。
「全体的に業界がインクルーシビティに向けて前進しているのは素晴らしいが、特に年齢に関しては、業界にはもっと行えることがあり、限界を押し広げることができると思う」とアプフェル氏は述べている。「私は年を取ることを受け入れ、素晴らしい人生経験を仕事に生かしている。取り組んでいるプロジェクトに情熱を抱き、心と魂を注ぎ込むことが自分を若く保ってくれるのだといつも言い続けている」。
ゼニによると、同社の2020年の売上高は2019年と比較して29%増加、3億2900万ドル(約361億円)になった。事業開始から7年間の各年で20%以上成長しているということだ。
[原文:For her 100th birthday, fashion icon Iris Apfel aims to celebrate bold fashion]
JILL MANOFF(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)