Vice Mediaは大人になろうとしている。2500人の従業員のうち、10%を削減したのに引き続き、CEOのナンシー・デュバック氏は、好調な事業分野を中心にViceを効率化し、収益を悪化させているサイトを断念し、スポーツやファッションといった中核ではない編集分野に深くテコ入れをする組織改革を発表した。
Vice Mediaは大人になろうとしている。
2500人の従業員のうち、10%を削減したのに引き続き、CEOのナンシー・デュバック氏は、好調な事業分野を中心にViceを効率化し、広範囲にわたって収益を悪化させているサイトを断念し、スポーツやファッションといった中核ではない編集分野に深くテコ入れをする組織改革を発表した。つまり、Viceは、14億ドル(約1400億円)の投資に見合うビジネスの構築を模索するなか、不良から模範生徒へと変わろうとしている。昨年3月にCEOに就任したデュバック氏は、Vice共同創設者シェイン・スミス氏の自由気ままで、もう1杯飲もうぜ的なノリからの決別を示唆している。
「Viceの問題の大部分は経営上の洞察力の問題だと考えている。つまり調整や成熟したプロセスなどのことだ。スミス氏のCEO在任期間後半では、『我々はこれをして、あれはしない』というようなことを明言する経営幹部のリーダーシップが十分に発揮されなかった」と、元幹部のひとりは述べている。
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大量解雇の背景
デュバック氏は2月1日、スタジオ、テレビ、デジタル、ニュースと同社の広告代理店であるバーチュー(Virtue)を含む5つの個別の事業単位にVice Mediaを集中させることを告げる文書を従業員宛に送った。その組織改革には、約2500人の従業員の10%に相当する最大250人のレイオフが含まれている。ちなみに、Viceはそれとは別に世界的に500人のコントリビューターを雇用している。
事情通の情報筋によると、同日にアメリカ、イギリス、メキシコではじまり、今後数週間で世界的に展開される予定であるこの人員削減は、ほかの分野のなかでもとりわけ、Viceのデジタルビジネス、海外事業、および中核ではないエディトリアル・バーティカルに集中するだろうという。ある情報筋は、国際市場における「大量解雇」に備えるよう米DIGIDAYに伝えてきた。
この動きにより、サンダンス映画祭において1400万ドル(約14億円)でAmazonにアダム・ドライバー主演のドラマ映画、「The Report」を販売したそのスタジオ部門、今年20の新規クライアントを獲得したその広告代理店バーチュー、そして、2018年に9つのエミー賞ノミネーションを獲得したそのニュース部門を含め、デュバック氏が成長の機会を認めている中核事業分野への投資がViceにとって可能になる。
今後の期待領域
事情に精通している情報筋によると、バーチューの売上はこの5つの新部門のなかでもっとも小さいという。スタジオ部門がもっとも多く、ニュースとデジタルがそれに続く。同社のケーブルチャンネル、Viceチャンネルの拠点であるテレビは、5つのうち4番目だ。Viceの広報担当者は、もっとも小さいのはバーチューの売上ではないと、のちにコメントしているが、その詳細を提示することは拒んでいる。
事業拡大がどこからもたらされるのかに関係なく、Viceはその収益を拡大する必要がある。ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)によると、同社は2018年に収益目標を再度達成できなかったため、厳しい監視の目が向けられているという。ベンチャーキャピタルから14億ドルを調達した同社は、2018年に6億ドルから6億5000万ドル(約600億円から650億円)の利益を上げたと報道されているが、5000万ドル(約50億円)ほど目標の未達となっている。Viceは前年の2017年には、利益目標から1億ドル(約100億円)の未達となっていた。
Viceの目標未達によって、Viceの資本の21%を所有しているディズニー(Disney)は、その投資価値を1億5700万ドル(約157億円)切り下げた。
同じ期間にViceは、自社が所有し運営しているプロパティにおけるデジタルオーディエンスが減少するのを確認している。コムスコア(Comscore)によると、Vice Mediaのユニークな月間ビジター数は、前年同期比16%減の6600万人ということだ。
ガバナンスの強化
現在、大きな変化が起きようとしている。
Viceのデジタル・プレジデント、ジョシュ・コグスウェル氏が2月1日、デジタル部門は「新しい統一されたブランド構成の下、Viceのカバレッジをさらに強化しサポートするための正しい方法を模索している」という回覧を従業員に送っている。その回覧では、さらなる改革と同時に、改革に対する投資と人員配置が約束されていた。
Vice Mediaの改革は、グローバル事業において特に欠かせないものだ。事情通の情報筋によると、去年の春までCEOを務めていたスミス氏の下では、Viceの海外事務所のビジネスリーダーたちは、これらのキャンペーンを実施することになっているチームとあまり相談せずに販売することが認められていたという。
それにより、各海外事業は有機的かつ独自の条件で成長することができた。しかし同時に、複数の事業部が独自に生みだすさまざまなレベルの開発が、Viceがグローバルなキャンペーンを遂行する妨げになることもあったと情報筋たちは述べた。事業部を一元管理することで、これらの問題が解決されることになるだろう。
少し大人になった
いろいろな意味で、今日発表された組織改革は遅きに失した感がある。いくつかの点で、その生意気な感受性と尖った精神で名を馳せたViceは大人になりつつある。その生意気さはセールスミーティングに持ち込まれていたが、A + Eネットワークス(Networks)の元CEOであるデュバック氏がスミス氏の代わりにチーフエグゼクティブになってからは、Viceはその戦術から少し距離を置いていると、複数のエージェンシーの情報筋はいう。
「彼らがやってきて、『これが気に入らないなら、くそくらえだ。ほかにこれを売り込んでやる』と、よく息巻いていた」と、あるエージェンシーの情報筋は語り、Viceがカスタムコンテンツに関する議論で打ち合わせをリードすることはあっても、最近はもっと融通が利くようになってきたと付け加えた。