イーロン・マスク氏が支配するTwitterの混乱は、ユーザー層に多くの分裂をもたらした。同プラットフォームの広告収入が昨年から60%近くも減少しているという報道は、ブランドもユーザーも新しい何かを渇望していることを示している。時を同じくしてオンラインディスカッションのもうひとつの拠点であるReddit(レディット)も、APIの変更で広く不評を買い、サイトのユーザーとモデレーターから大規模な抗議活動が起きて同社の評価の引き下げを招くといった独自の問題を抱えている。そのため、Meta(メタ)が7月5日にTwitterの競合となるThreads(スレッズ)をローンチした際、ネット世界は注目した。
公開から12時間以内でThreadsの会員数は3000万人を超えた。サイダー(Cider)、ファッションファイル(Fashionphile)、アリスアンドオリビア(Alice + Olivia)といったファッションブランドは初日にThreadsのアカウントを作成し、定期的な投稿を開始した。Threadsの急成長に対してかなりの脅威を感じたTwitterは、Metaがアプリを構築するために解雇されたTwitterの元従業員を引き抜いたのではないかという疑惑をめぐってMetaに対して法的措置を取ると脅したと報じられているが、Metaはこれを否定している。
Metaはソーシャルメディア広告の手本を示した
ここ数カ月でマストドン(Mastodon)、ポスト(Post)、ブルースカイ(Bluesky)のような他のTwitter代替ツールも台頭しているが、どれもブランドを含むユーザーが大挙して採用するにはいたっていない。マストドンのユーザー数は約1000万人、ブルースカイはまだ招待制で100万人未満だ。いくつかはまだクローズド・ベータ段階であり、普及するには限界がある。Threadsに関しては、インスタグラムのアカウントからThreadsのプロフィールを簡単に作成できるというオプションのおかげで、ブランドや大物インフルエンサーがすぐに飛びついた。
Threadsはまだ黎明期にあるが、マーケティングの専門家たちは、その膨大なユーザーベースとブランドフレンドリーな環境に興奮しているようだ。
「Metaは実質的にソーシャルメディア広告の手本を示したようなものだ。Twitterのモデルを採用してブランドやクリエイターの広告の可能性を最大化しようとは思っていないなどと考えるのは甘いだろう」と話すのは、ミスターポーター(Mr Porter)やタグ・ホイヤー(Tag Heuer)などのブランドと仕事をしてきたデジタルエージェンシー、OKクール(OK Cool)の創業者ジョリオン・バーレイ氏だ。「Twitterのインターフェイスは、ビジネス向けのMetaのようなインターフェイスにくらべて使い勝手が悪いことで有名だったので、仮にThreadsが成功すれば、操作が超簡単なビジネス管理モデルを持つことになり、結果的に、規模の大小にかかわらず、多くのさまざまなビジネスにとって信じられないほど魅力的な存在になると想像している」。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、ビューティ、ファッション業界の未来を探るメディア「Glossy」の記事です。
イーロン・マスク氏が支配するTwitterの混乱は、ユーザー層に多くの分裂をもたらした。同プラットフォームの広告収入が昨年から60%近くも減少しているという報道は、ブランドもユーザーも新しい何かを渇望していることを示している。時を同じくしてオンラインディスカッションのもうひとつの拠点であるReddit(レディット)も、APIの変更で広く不評を買い、サイトのユーザーとモデレーターから大規模な抗議活動が起きて同社の評価の引き下げを招くといった独自の問題を抱えている。そのため、Meta(メタ)が7月5日にTwitterの競合となるThreads(スレッズ)をローンチした際、ネット世界は注目した。
公開から12時間以内でThreadsの会員数は3000万人を超えた。サイダー(Cider)、ファッションファイル(Fashionphile)、アリスアンドオリビア(Alice + Olivia)といったファッションブランドは初日にThreadsのアカウントを作成し、定期的な投稿を開始した。Threadsの急成長に対してかなりの脅威を感じたTwitterは、Metaがアプリを構築するために解雇されたTwitterの元従業員を引き抜いたのではないかという疑惑をめぐってMetaに対して法的措置を取ると脅したと報じられているが、Metaはこれを否定している。
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Metaはソーシャルメディア広告の手本を示した
ここ数カ月でマストドン(Mastodon)、ポスト(Post)、ブルースカイ(Bluesky)のような他のTwitter代替ツールも台頭しているが、どれもブランドを含むユーザーが大挙して採用するにはいたっていない。マストドンのユーザー数は約1000万人、ブルースカイはまだ招待制で100万人未満だ。いくつかはまだクローズド・ベータ段階であり、普及するには限界がある。Threadsに関しては、インスタグラムのアカウントからThreadsのプロフィールを簡単に作成できるというオプションのおかげで、ブランドや大物インフルエンサーがすぐに飛びついた。
Threadsはまだ黎明期にあるが、マーケティングの専門家たちは、その膨大なユーザーベースとブランドフレンドリーな環境に興奮しているようだ。
「Metaは実質的にソーシャルメディア広告の手本を示したようなものだ。Twitterのモデルを採用してブランドやクリエイターの広告の可能性を最大化しようとは思っていないなどと考えるのは甘いだろう」と話すのは、ミスターポーター(Mr Porter)やタグ・ホイヤー(Tag Heuer)などのブランドと仕事をしてきたデジタルエージェンシー、OKクール(OK Cool)の創業者ジョリオン・バーレイ氏だ。「Twitterのインターフェイスは、ビジネス向けのMetaのようなインターフェイスにくらべて使い勝手が悪いことで有名だったので、仮にThreadsが成功すれば、操作が超簡単なビジネス管理モデルを持つことになり、結果的に、規模の大小にかかわらず、多くのさまざまなビジネスにとって信じられないほど魅力的な存在になると想像している」。
安全な場所ではなくなってしまったTwitter
セクシャルウェルネスブランドのハニーポットカンパニー(The Honey Pot Company)でソーシャルメディア&コミュニティ・ディレクターを務めるデジレ・ナタリ氏は、かつてTwitterは同ブランドにとって不可欠なプラットフォームだったと語る。2020年にスーパーボウルの広告にブランドが取り上げられ、Twitterでその話題がバイラルになったことは、ブランドを多くの新規顧客に知ってもらうのに役立ったとナタリ氏は言う。だが、特に有色人種の女性が設立したブランドにとって有害なTwitterの環境や、Twitterの認証スキームには一切お金を出したくないという思いなどから、ハニーポットカンパニーはTwitterでのプレゼンスを完全に失うことになった。
ハニーポットはThreadsのアーリーアダプターであり、最初の4時間で5000人以上のフォロワーを獲得している。
「残念だ」とナタリ氏は言う。「Twitterは私たちにとって本当に大きな存在だったが、黒人や褐色の人間にとって安全な場所ではなくなってしまった。マイクロブログやテキストプラットフォームは、オピニオンリーダーや政策立案者のハブとして本当に価値があると思っている。Threadsがかつてのツイッターのような存在になれるかどうか、興味深く見守っている」。
テキストベースのプラットフォームはブランドの関心を引くか?
テキストベースのソーシャルメディア・プラットフォームにとって激動の時代だ。一方、TikTokやインスタグラムなど、動画や画像ベースのプラットフォームが台頭しており、インスタグラムは2021年の時点でアクティブユーザーが20億人を超え、TikTokは今年初めにユーザー数が8億人を突破した。どちらも多くのファッションブランドの注目を集めることに成功しており、ファッションはインスタグラムでは最大のカテゴリのひとつとなっている。TwitterやRedditが低迷するなか、テキストベースのプラットフォームがファッションブランドの関心を引くという望みはあるのだろうか?
従来、ファッションや美容のブランドは、TwitterやRedditよりもインスタグラムやTikTokでより多くのエンゲージメントを獲得し、販売を成功をさせてきたと、デジタルエージェンシーのパワーデジタル(Power Digital)のファッション担当グループディレクター、サマンサ・シェイネス氏は言う。
「Twitterは『コミュニティ』といった独自のツールや、特定のファッションアカウントをフォローしているユーザーをターゲットにする機能など、高度なターゲティングを実際に提供しているが、ファッションブランドはTikTokやMetaのようなビジュアルファーストのチャネルのほうが収益増につながると考えている」とシェイネス氏は述べた。「買い物客は、ビジュアルや動画のストーリーテリングに惹かれてコンバージョンする傾向が強いため、Twitterのテキストファーストの性質はファッションクリエイティブには貢献していない」。
Twitterは、憎悪的なコンテンツに対する制限を解除したり、多くのセレブリティやブランドを遠ざけるような面倒なプロセスによる課金制認証を取り入れたり、1日にユーザーが見ることのできるツイートの数を一時的に制限したりするなど(この不可解な決定はデータスクレイパーを制限するためだとマスク氏は述べている)、不評な変更を何度となく実施してきた。
一方、Redditはブランドにしてみると、気難しいマニアのような存在だ。Redditのユーザーは、広告活動に対して懐疑的であることで悪名高く、特にほかのプラットフォームから再利用された低品質なコンテンツには批判的だ。
とはいえ、今回の取材に応じたエージェンシーもファッションブランドも、TwitterやRedditのようなテキストベースのプラットフォームには価値があると述べている。
各プラットフォームでユーザーが求めるものを理解することがカギ
「ソーシャルメディアのアプリが登場したり消えたりする一方で、テキストベースのプラットフォームと画像や動画ベースのプラットフォームには相変わらず消費者の需要があるので、これからもずっと共存していくだろう」とバーレイ氏は述べた。
「このふたつはオーディエンスにとってそれぞれ異なる目的を果たすため、ブランドにとってどちらの価値が高いかは一概には言えない。ブランドやサービス、ニッチによって大きく異なる」とバーレイ氏は指摘する。「どんなブランドも、テキストベースのソーシャルメディア・プラットフォームで広告力を活用できる。問題はそのフォーマットではない。ブランドや製品に沿ったエンゲージメントの多いコミュニティを確実にターゲットにして、ノイズを切り抜けるためにプラットフォーム向けのコミュニケーションを調整し、そのプラットフォームにおけるニッチを見つけるられるかどうかだ」。
ハンドバッグ再販プラットフォームのファッションファイルでブランドマーケティング・ディレクターを務めるローレン・レジャー氏は、異なるソーシャルメディアフォーマットを最大限に活用するカギは、各プラットフォームのユーザーが何を求めているかを理解することだと語った。たとえば、インスタグラムでは製品を視覚的にアピールするために、ファッションファイルは販売するハンドバッグを見せることに重点を置く。しかし、RedditやFacebookのようなプラットフォームではユーザーはリサーチモードであることが多い。そのため、ファッションファイルは教育に力を入れている。
ファッションファイルがソーシャルプラットフォームに投稿するテキストベースのコンテンツはすべて、テキストベースのデジタルマーケティングツールの元祖であるブログからきている。ファッションファイルは5年前にブログを立ち上げ、レジャー氏はそれが会社のデジタル戦略を率いていると語った。ブランドマーケティングチームはまずブログを投稿し、それからその投稿の個々の部分(テキストの断片や画像を含む)をFacebookやインスタグラムの短い投稿に使用したり、TikToksのインスピレーションとして活用したりする。
「私たちがテキストベースのソーシャルプラットフォームに投稿するものはすべて、すでにブログ投稿用として事前に承認されている。チームには、ブログの投稿から一部を取り出して好きなように使用できる権限が与えられている」とレジャー氏は述べた。彼女はブログをファッションファイルの「もっとも強固で情報量の多いコンテンツ源」と呼ぶ。
Threadsはまだ広告を掲載していないが、マネタイズ機能を導入する際には、インスタグラムとFacebookの両方を組み込んだMetaの既存の広告インフラに完全に統合される可能性が高い、とナタリ氏は述べた。ハニーポットカンパニーはThreadsのために別のコンテンツ戦略を立てるのではなく、ブランドが現在行っているように、Metaのシステムに任せて自動的に3つのプラットフォームに広告を掲載する可能性が高いという。
現状では広告システムが導入されるまでは、ブランドはThreadsでは主にテストモードとなるだろう。
「ソーシャルメディアマーケティングで重要なのは、それぞれのプラットフォームにいるオーディエンスが求めているものに合わせることだ」とレジャー氏は言う。「ThreadsのユーザーがTwitterのユーザーと同じものを求めているとは思っていない。なぜならプラットフォームが異なるからだ。また、たとえユーザーが同じでも、インスタグラムのユーザーがThreadsでも同じものを求めているとも思わない」。
[原文:Fashion Briefing: Are text-based social platforms still valuable for brands?]
DANNY PARISI(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)