豪政府は2月23日、2月中にも議会を通過する予定の法案に変更を加えたことを明らかにした。この変更は、ニュースメディアのコンテンツに対価を支払うことをFacebookに義務付けるものだが、同社にとって有利とみられる条件が盛り込まれたこともあり、Facebookはニュース記事の掲載を再開すると発表した。
Facebookがオーストラリアで、さらに2カ月の時間的猶予を獲得した。この間に分断を生み出して情勢を支配できれば、Facebookは現状を(ほぼ)維持できるようになる。
オーストラリア政府は2月23日、2月中にも議会を通過する予定の法案に変更を加えたことを明らかにした。この変更は、ニュースメディアのコンテンツに対価を支払うことをFacebookに義務付けるものだが、同社にとって有利とみられる条件が盛り込まれたこともあり、Facebookは自社のプラットフォーム上でニュース記事の掲載を再開すると発表した。
主なポイント
- Facebookは、パブリッシャーと個別に商業契約を締結することで「オーストラリアのニュース業界の持続可能性に多大な貢献をした」と認められれば、新法の適用を免除される可能性がある。
- パブリッシャーは、Facebookから支払われるコンテンツ使用料が他社と異なっていることを理由に訴訟を起こすことができない。
- Facebookは、誠意ある調停が60日以内に各パブリッシャーとの交渉を解決できなかった場合に限り、政府による仲裁を受け入れる義務が生じる。
このニュースが流れてまもなく、オーストラリアのメディア企業セブン・ウェスト・メディア(Seven West Media)は、Facebookとの契約締結に向けた同意書に署名したことを明らかにした。Facebookも、やはりオーストラリアの大手パブリッシャーであるナイン・エンターテインメント(Nine Entertainment Co.)との交渉を再開したと発表している。
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米DIGIDAYはFacebookに対し、オーストラリアのパブリッシャーと団体交渉を始める計画があるかどうか問い合わせたが、締め切りまでに回答は得られなかった。
大手による独占
「多大な貢献」という表現が盛り込まれたことは、Facebookにとって大きな進展だ。取引の方法によっては、Facebookは少数の大手メディアと契約を締結し、それをもって法律上の要件を満たしていると主張することで、仲裁者の定めた対価をほかのメディアに支払う義務を回避できる可能性がある。
もっとも、Facebookは小規模パブリッシャーにも対価を支払う意向を明らかにしている。また、よほど規模が小さくない限り、すべてのパブリッシャーがこの法律の下でFacebookと交渉する資格を得られる。具体的には、年間売上高が15万オーストラリアドル(約1250万円)を超える企業に交渉権が認められる。
「小規模なパブリッシャーやローカルパブリッシャーを含め、当社が選んだパブリッシャーを支援できるようにすることで我々は合意に達した」と、Facebookでグローバルニュースパートナーシップ担当バイスプレジデントを務めるキャンベル・ブラウン氏は声明で述べている。「当社はオーストラリアや世界中のジャーナリズムを支援するという目標を一貫して掲げており、今後も世界中でニュースへの投資を続け、当社のようなプラットフォームとパブリッシャーが獲得できる真の価値が考慮されない規制の枠組みを推進するメディアコングロマリットの動きに対抗していく」。
とはいえ、Facebookはさまざまな機会を利用して、パブリッシャー同士を競わせることができる。たとえば、1~2社の大手メディアと契約を結んで、ある程度のニュースをカバーできるようにしておけば、Facebookとの取引機会を逃すことを懸念したパブリッシャーに価格の引き下げを要求できる可能性がある。
「当社が選んだパブリッシャーを支援」というブラウン氏の言い回しは、こうした可能性をかなりオブラートに包んだ表現だ。
パブリッシャーのコンテンツを掲載したプラットフォームがそのパブリッシャーへの対価の支払いを義務付けられたことは、理屈のうえでは非常に重要な成果だ。しかし、これによって状況が大きく変わるかといえば、むしろ現状が維持される可能性が高い。
ドミノ現象
ただし、現状がどれほど変化するかにかかわらず、ほかの政府も同様の措置を検討しており、この影響は世界中に波及するだろう。オーストラリアのモリソン首相は、インド、フランス、英国、カナダの首脳から電話を受けたと述べており、そのいずれもが年内に同様の法案を通過させる可能性がある。
MAX WILLENS(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:長田真)