クリステン・ドミニク氏やヴィクトリア・リン氏など、TikTokやYouTube、インスタグラムで数百万人ものフォロワーを持つインフルエンサーを、TikTokの親会社バイトダンス（ByteDance）のアプリ「Lemon8（レモンエイト）」で見かけるようになった。

2月に米国でローンチされたこのアプリで、少数のブランド、そして数多くのメガインフルエンサーやミドルインフルエンサーがアカウントを開設している。RMSビューティー（RMS Beauty）、ユースフォリア（Youthforia）、エッセンス・コスメティックス（Essence Cosmetics）などの美容ブランドも、早々からLemon8でアカウントを開設している。

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「クリエイターがこの新しいプラットフォームに参加しているのであれば、私たちもぜひ参加したい。そして、これは良いソーシャルリスニングだ」と語るのは、RMSビューティーのCOOであるエレイン・サック氏だ。同ブランドはLemon8で週に2回投稿し、2割引のクーポンコードを提供している。

Lemon8のコンテンツは、インスタグラムとPinterestを掛け合わせたようなものと称されており、インスタグラム風のフィードには写真と動画の投稿が可能で、これに「いいね」を付けたりコメントしたり、保存や共有もできる。またPinterestのように投稿にテキストオーバーレイ機能を活用でき、デザインの種類が豊富なことから、インフルエンサーの中には無料デザインツール「Canva（キャンバ）」とも比較する者もいる。

「チュートリアル、服装、レシピ、旅行などにフォーカスしている。これらはすべて、Pinterestで実際に成功してきたものばかりだ」と語るのは、クリエイターマネジメントプラットフォーム「GRIN（グリン）」のマーケティング担当バイスプレジデントであるアリ・ファザル氏。テキストオーバーレイやチュートリアル形式のコンテンツに重点を置くLemon8はPinterest以外にも、ライフスタイルやトレンドなどを共有する中国のソーシャルアプリ「小紅書（シャオホンスウ）」と似ているとIT系メディア「テッククランチ（TechCrunch）」でリタ・リャオ氏は言及する。

TikTokで150万人のフォロワーを持つ美容系インフルエンサーのサラ・ウォラク氏は、4月3日にLemon8のアカウントを開設した。今年3月に米国でのTikTok禁止が議論されたことを受け、数々のインフルエンサーがLemon8について投稿したのを目にしたからだ。立ち上げに際して、同氏はインスタグラムのストーリーにてアカウントを宣伝し、リンクをLintree（リンクツリー）でシェアした。フォロワー数は876人（6月16日時点)だが、同氏にとってLemon8は3番目に注目しているプラットフォームだという。

「少しずつ投稿しているが、徐々に慣れてきて、アプリの仕組みも理解できてきた」と話す同氏は週に1回程度、画面収録し下書き保存したウォーターマーク（透かし）無しのTikTok動画を、Lemon8とインスタグラムのリールの両方でシェアしている。

Lemon8に参加する美容インフルエンサーには他に、スキンフルエンサーのグロウ・ウィズ・アヴァ氏（TikTokのフォロワー数170万人）、ネイルフルエンサーのブレ・シェパード氏（インスタグラムのフォロワー数675,000人）、ライフスタイル・インフルエンサーのジャスミン・グエン氏（TikTokのフォロワー数773,000人）、メイクアップ・アーティストのジャリーサ・ジャイカラン氏（TikTokのフォロワー数101,000人）などがいる。

このアプリのインフルエンサーのほとんどはフォロワー数が1,000人未満、そして多くの場合は100人にも満たない。だが中にはもっと多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーもいる。TikTokで1,200万人以上のフォロワーがいるアンア・シタール氏は現在、Lemon8で21,000人以上のフォロワーがいる。

「TikTokで、Lemon8を見つけた。ある週末（かそれより少し長いくらい）のあいだ、多くの人がLemon8アカウントの開設について話していたからだ」と話すのはユースフォリアの設立者兼CEOのフィオナ・チャン氏。「誰もかれもが試しているようだった」。

Lemon8は親会社がバイトダンスであることは、インフルエンサーやブランドからの注目を集めている。サック氏によると、過去に流行したClubhouse（クラブハウス）やBeReal（ビーリアル）などのアプリは「自分たちには向いていなかった」が、Lemon8に興味を持ったのは親会社の影響だという。「すぐさま『ログオンしてみよう』と思った」と同氏。「TikTokが行ってきたことはどれも素晴らしかったので、ぜひ参加してみたかった」。

今年3月の米議会公聴会で、米国内での使用禁止の可能性をインフルエンサーが懸念していたころ、Lemon8は米国のiOS App Storeでトップ10にランクインした。現在はライフスタイル部門で46位という評価だ。公聴会以降、モンタナ州知事はTikTokの利用を全面禁止する法案に署名し、禁止は違憲だとしてTikTok側がモンタナ州を提訴した。TikTokの親会社がLemon8を所有しているため、将来的には同様の問題に直面する可能性がある。

インサイダー（Insider）のマータ・ビーノ氏やニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、バイトダンスはLemon8にコンテンツを投稿してもらうため、インフルエンサーに報酬を支払っている。また、このアプリに参加するクリエイターとの関係管理のため、グローバルチームも構築中だ。

シドニー・アダムズ氏やマッケナ・アシュクロフト氏、@nk.medaniなど複数人のインフルエンサーは、#Lemon8partnerというハッシュタグを用いてTikTok上でLemon8をプロモートした。シドニー・アダムズ氏の投稿には、インフルエンサーであり恋愛リアリティー番組『バチェラー』にも出演したキット・キーナン氏が「待って、ダウンロードしなきゃ」とコメントし、現在はキーナン氏もアカウントを持っている。

「どんなに新しいアプリが登場しても、クリエイターがすぐに収益化できる方法を提供することが重要だ。そうでないと、トップクリエイターはコンテンツ作成に時間を費やさない」とファザル氏は述べる。

バイトダンスは6月6日時点で、ファッション、ライフスタイル、食品の分野でクリエイターパートナーシップ職の求人を4件、ニューヨークで募集している。米国以外では英国、タイ、ベトナムでも、美容、ファッション、ファミリーの分野のクリエイターパートナーシップ職を9名募集していた。これらの職種には、クリエイターの「ソーシング、アウトリーチ、契約の履行、レポート、分析」の他、コンテンツのパフォーマンス分析や、「アプリの継続的な発展」のためのクリエイター支援などが役割として含まれる。ニューヨークでの求人には「プラットフォームのコンテンツの質を高め、必要な場合には外部向けのグラフィック／ビジュアルを制作するために、クリエイターにコンテンツ（写真／動画）の編集方法を指導すること」の責務も負う。また「クリエイターの成長を後押しし、クリエイターの成果物がビジネスの期待に確実に応えられるよう、当社の成功事例を教育する」ことも求められている。

「彼らはクリエイターたちがこのプラットフォームに参加し、コンテンツを制作することを強く奨励しているようだ。そして、その努力に対する十分な報酬が、確実に支払われるようにしている」とファザル氏は語る。

「かなりの人数が個人宛に『アカウントをお持ちのようですが、このアプリについてどう思いますか？　ダウンロードすることを私に勧めますか？』とダイレクトメッセージを送ってくる」とウォラク氏。「さまざまなプラットフォームに活動の場を広げ、どこでも足跡を残しておくのは良いことだ」。

このアプリの将来性について、専門家の意見は分かれる。

「Lemon8はまだTBD（未確定で詳細は将来決定すること）という意味合いが大きい」とチャン氏はみている。

インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「フォー（Fohr）」が5月に投稿したブログでは、「18万人以上のインフルエンサーのうち、（ソーシャルメディア上で）Lemon8に言及していたのはわずか350人だった」という。そして同社の設立者であるジェームズ・ノード氏は「新しいプラットフォームが出現し、インフルエンサーマーケティング業界で重要な位置を占めるのに必要なだけの規模を獲得できるとは思えない。2年後も私たちはTikTok、インスタグラム、YouTubeのことを話題にしているだろう。劇的に変わるとは思えない」。

一方、ファザル氏は「消費者とクリエイターの双方から、（Lemon8の）将来への明るい兆しが非常に早い段階から見えている」と語る。これらには、アプリに参加するインフルエンサーの能力、インフルエンサーの参加を経済面から奨励するアプリ側の意欲、そしてバイトダンスがTikTokで成功したことで「すでに最高クラスのアルゴリズムで始動できたこと」などが含まれる。

「もしもブランドが現在Lemon8を検討していないのであれば、いますぐに始めるべき。でないと、数カ月後には後れを取ってしまうだろう」とファザル氏は述べた。

［原文：Beauty brands and influencers join Lemon8 with ‘TBD’ mindset］

LIZ FLORA（翻訳：田崎亮子／編集：山岸祐加子）