「1年前とは劇的に変わった」: デジタルOOH 、プログラマティックによる購入が拡大

デジタルビルボードなどの屋外(out-of-home:以下、OOH)広告は、プログラマティックに対応したデジタルスクリーンの拡大により、この1年でプログラマティックによる購入が実施しやすくなった。

デマンドサイドプラットフォーム(以下、DSP)とサプライサイドプラットフォーム(以下、SSP)の双方が、このテクノロジーの可能性について認識を深めており、ラマー(Lamar)やクリアー・チャンネル(Clear Channel)をはじめとするメディアオーナー側が、メディアプレースメントのスタティックからデジタルへの移行に大きな投資をしたことによる、この10年のデジタルOOHへの流入も、この変化を支えている。

現在は、こうしたデジタルプレースメントの広がりを受けて、SSP横断でインベントリー(在庫)を利用できるようにする動きが盛んになっている。デジタルスクリーンが幅広く利用できるようになったことで、新しい新鮮なコンテンツが行き渡るように、迅速なプログラマティック機能が必要とされている。とはいえ、デジタルOOHにプログラマティック購入を使える機会が増大しても、断片化、ブランドセーフティ、アトリビューションなどの問題をメディアバイヤーたちは心配している。また、デジタルビルボードを典型的なデジタルへの掲載のように扱うことに対し、ビルボードは独自のやり方が必要な特別なメディアだと警告する声もある。

デジタルOOHの最新事情

この半年でデジタルOOHへの関心が高まったと話すメディアエージェンシーの情報筋たちは、購入が従来のOOHよりも簡単迅速になるかもしれない点、ソーシャル広告やディスプレイ広告のような入札可能なほかのチャネルのアルゴリズムと仕組みを使えるかもしれない点、アトリビューションが向上するかもしれない点などを魅力的だと思っている。

アメリカ屋外広告協会(Outdoor Advertising Association of America:以下、OAAA)によると、米国の2018年のOOHの総収益に占めるデジタルOOHの割合は29%で、2017年の24%より増加した(OAAAは、デジタルOOH収益におけるプログラマティックの割合までは明らかにしていない)。また、OAAAによると、OOH広告収益は2019年第1四半期、6%増の17億8000万ドル(約1930億円)だった。

ピュブリシス・メディア(Publicis Media)のVPでメディアテックストラテジストのメーガン・ハルシャイド氏は、「1年前とは劇的に変わった」と話す。「変化という点では、クライアントや広告主からの関心に現れている。このチャネルによる購入に潜在需要があるという認識が、DSPとSSPに広がっている。そうしたデジタル化の投資をメディアオーナーがとにかく進めている。プログラマティック購入の利点が理解されているのだ」と、同氏は語った。

エージェンシーの体制

デジタルOOHのプログラマティック購入の需要が増大し、エージェンシーは、それをチームでどのように管理していくのかを考え出すことが必要になった。ピュブリシス・メディア、デジタス(Digitas)、360iなどでは、プログラマティックチームが引き受けてOOHチームと欠かさず連携している。一方、ファロン(Fallon)のようなもっと小さいエージェンシーは、従来の屋外チームが管理をすることになる。エージェンシーが社内のチームを駆使して新しい方式を編み出すのは標準的なやり方だが、メディアエージェンシーはプログラマティック業務全般の投資を増大させ、デジタルOOHのプログラマティック購入を推進している。

360iの最高メディア責任者のダグ・ローゼン氏は、「動画にしろ、OOHディスプレイのプログラマティックにしろ、プログラマティック全般でかなりの雇用と投資を進めている」と語る。「我々はプログラマティック分野への投資がかなりあり、引き続き増やしている。(メディアの)入札や自動化への対応が全般的に増えているからだ」。

OAAAの最高マーケティング責任者、ステファン・フレイタス氏によると、(ニューヨークの交通局である)MTAのアウトフロント(Outfront)との5万スクリーン契約のようなデジタルビルボードの巨大契約もあって、デジタルスクリーンが急速に増加しており、これがプログラマティックと自動化のニーズを後押ししている。

「SSPとDSPの双方で、多くのプラットフォームの開発と配置が進んでいる」と、フレイタス氏はいう。「OOHメディア企業、もちろんデジタル分野で大きなところがということだが、独自SSPの開発か既存プラットフォームの利用をこぞって進めている。DSP側では、マーケットプレイスで多くのプラットフォームの開発と配置が進んでおり、エージェンシーが直接というものから、OOHの専門グループによるもの、サードパーティのプラットフォームまである」と同氏は語った。

「いまは西部開拓時代」

デジタルOOHにおけるプログラマティック購入ソリューションの増大は、この分野の断片化につながったと、ピュブリシス・メディアのハルシャイド氏はいう。これはプログラマティック購入自体が導入された時に似ており、整理統合が進んでいくと同氏は続ける。

「統合の点では、いまは開拓時代の西部に少し似ている」と、ハルシャイド氏は語る。「こうなっているのはよいことで、広告主からすると長期的にはアクセスと選択肢が増える。さもないと、購入プラットフォームは選択肢がほとんどなく、供給源も少しだけということになってしまう。統合が複数に分かれていることが、市場の開放になっている」。

入札の構造は、2018年秋の時点のものは、オートメイティッドギャランティードの購入により近かったが、メディアエージェンシーが大手DSPと協力している場合、いまはオークションベースのシステムに組み込まれている可能性がある。

潜在的な課題と現状

デジタスでプログラマティックとソーシャルのアソシエイトディレクターを務めるエミリー・スミス氏は、ブランドセーフティ、トラッキング、アトリビューションなど、ほかにも潜在的な課題があるとメールで説明した。

特にアトリビューションは、ヒートマップと位置データにより、広告が配信される人がマーケターによく見えるようになるなど、進化している。とはいえ、その場合も、ある人物が広告を見たのか、それとも単に近くにいただけなのかは、はっきりはわからないだろう。

「10年前や20年前の状況よりはよくなっている」と、360iのローゼン氏は語る。「完璧ではないが、アトリビューションが完璧なチャネル自体がそれほどはない。以前よりはよくなっており、著しい改善が進んでいる」と、同氏は語った。

「バナー同様に扱ってはダメ」

プログラマティックによるデジタルOOHが示す成長とチャンスに、メディアバイヤーたちは胸を高鳴らせているが、デジタルビルボードをありきたりのデジタルへの掲載と同じように扱うことに対しては、警告する声がある。

「屋外には使い方がある」と、ファロンでメディアディレクターを務めるアンディ・ロード氏は語る。「このメディアを考えることなく、メッセージを投げて、回数を重ねるためだけにプログラマティックを使うとするなら、それは問題だ。バナーのように扱うべきではない」。

Kristina Monllos (原文 / 訳:ガリレオ)