Netflixの広告対応プラン、テック大企業の分割…:2020年に「起きないこと」は?

新年早々、バラ色の眼鏡をかけて、「業界はこんな具合になる」と華々しい未来を予言するのはたやすい。

しかし、我々の業界はメディアである。そこで、あえて2020年に「何が起きないか」を率直に語る方が有意義だろう。

以下、米DIGIDAYの記者たちが、2020年起きないだろうと思っていることを端的に語った。

Apple News+の盛り返しはないだろう

プロダクトに何か欠陥があるときに、上から新しいペンキを塗ることは解決にはならない。2019年のローンチ時には大きな話題を生み出したApple News+だが、その内容は依然として基本的にはテクスチャー(Texture)と同じものだ。複数の雑誌パブリッシャーの集まりによって運営されたテクスチャーは何年にもわたってオーディエンスをスケールするのに苦しんだ。Appleが最大限活用すると約束をしていた、Apple News+独自の配信面での強みは、いまのところそれほど役に立っていない。参加パブリッシャーたちから大きなマーケティング上の手助けが得られる可能性も低いだろう。彼らの多くは彼ら自身のサブスクリプションを売りたいからだ。さらに、テクスチャーとのすでに存在した契約のために、Apple News+に取り組まざるを得なかったパブリッシャーたちも多く、彼らは今後抜けることも可能だ。また有料コンテンツプロダクトに対するAppleの2回目の挑戦(Apple TV)も、うまくいかない可能性があるように見受けられる。ーマックス・ウィレンズ

Facebookは政治的広告に関して方針を変えるだろう

コンサルティング企業ボレル・アソシエイツ(Borrell Associates)によると、2020年の政治的なオンライン広告の支出額は29億ドル(約3180億円)に達すると予測されている。これは2016年の政治キャンペーンによるデジタル広告の支出の2倍以上となる。TwitterやTikTok(ティックトック)といったプラットフォームははっきりと政治的広告を禁止し、Googleは政治的広告のターゲティングに制限をかける。巨額の広告支出の多くをFacebookが受け取るのは間違いないだろう。

Facebookが例外的な存在となっているのは、ただプラットフォーム上で政治的広告の表示を許していることだけが理由ではない。Facebookは政治的な文言のファクトチェックをすることも拒否しているのだ。これは一部の政治的団体からの批判を集めた(そして、ほかの政治団体からは賞賛を集めた)。それでも、ワシントンにおいて州、そして連邦両方からの調査に直面するなかで、Facebookは不必要な重荷を取り除きたいだろう。政治的広告の支出が2020年に大幅に高まるなかで、悪意を持って誤った情報や分断を生もうとする行為は確実に見られるだろう。

現時点では、Facebookのエグゼクティブたちは、政治的広告に関する方針についてお互いに異なる意見を持っていると報じられている。それでも近いうちに何らかの妥協点が必要となるだろう。ターゲティング、特に悪評の高い「マイクロターゲティング」が最初に(もしくは唯一)停止される可能性は高いように思われる。ーララ・オライリー

Netflixは広告対応プランの導入はしないだろう

映画『ミーン・ガールズ(Mean Girls)』における登場人物グレッチェン・ウィナーズが「フェッチ(fetch)」という言葉を流行らせようとして失敗するのと同じように、広告主たちはNetflix(ネットフリックス)に広告を導入させようと必死だ。机上の理論としては広告導入は理にかなっている。Netflixは、ディズニープラス(Disny+)やHBOといった存在を引き離すために会員数を増やす必要がある。値段の安い広告対応プランはその解決策となる可能性がある。彼らのコンテンツ制作費は収益において大きな負担となっており、広告のようなマージンの高いビジネスは展望を明るくするかもしれない。この2019年にもNetflixのエグゼクティブたちは広告は絶対に導入しないと宣言している。もちろん、Tumblr(タンブラー)のように、方針を変える事は業界のなかでは珍しくはない。Netflixに広告対応プランができると願っている人たちは、このエグゼクティブたちの宣言を無視しているだけでなく、広告ビジネスを開始するにあたってかかる費用も無視している。さらに言えば、コンテンツ制作費を軽減するためにNetflixはプロダクトプレイスメントの交渉を行ってきている。広告を導入してしまうと、広告ができないことによって広告主たちから得ている、こういった収益を減らしてしまうだけだろう。ーティム・ピーターソン

統合IDソリューションはCookieの代替とはならないだろう

2019年、いわゆる統合IDソリューションに対して大きな期待と議論が起きた。ユーザIDを統合して利用するという考えは、数年にわたって存在してきたが、それに対する興味は今年ピークに達した。ブラウザによるトラッキング対抗措置によって防止されず、かつデータプライバシーに準拠した方法でオンライン・オーディエンスを特定する方法を業界全体が躍起になって見つけようとしている。さまざまに異なるユーザー特定ツールやサードパーティーのCookieを使ってマッチングするのではなく、コミュニティに存在する企業を集めた大きなグループでひとつの共通のIDを持つというのがその考えだ。この種類のCookieを使うことがますます困難になっている業界において、統合IDは代替策として期待を持たれている。しかし統合IDは、Cookieが使えなくなった後の解決策になれない。事実、統合IDは依然としてCookieに頼っている。デジトラスト(DigiTrust)の統合IDが11月にFirefoxブラウザにブロックされたのはそれが理由だ。IDソリューションの多くがそうであるが、Cookieに基づいたIDソリューションは長期的には解決策にならないだろう。ーセブ・ジョセフ

議会は連邦プライバシー法案を通さないだろう

2018年6月にカリフォルニア州で消費者プライバシー法が可決された。それ以来、広告業界は連邦レベルでのプライバシー法を議会が通すことを期待している。各州が独自のプライバシー法を持ってしまうと、業界がさまざまな法の違いに配慮しながら対応しなければいけなくなるからだ。しかしこれは実現しないだろう。大統領選が行われる年には実現しない。民主党と共和党はいまだに、連邦のプライバシー法が州のプライバシー法に取って変わるべきか、そうでないかについて意見が分かれている。先月だけでも、提出されたふたつの法案を見てみると、プライバシー違反に対して個人が企業を訴えることができるべきか、そうでないかといった重要な項目において異なる意見が提示されている。議会が連邦プライバシー法案を通過させるためには、投票にかける法案がどのようなものかについてまず合意を得る必要があるだろう。ーティム・ピーターソン

テック大企業は分割されたりはしない

Amazon、Facebook、Apple、そしてGoogleといったテック大企業たちを規制するべきだという声が無視できないほどの大きさになったのが2019年だった。欧州の保護主義が見え隠れするひとつの例として、業界人たちが心配しながら遠巻きに見ていたGoogleやほかの企業を競争阻害的だという理由で分割するという考えは、以前であればまったくもってて不可能と一蹴されていたが、アメリカでもその声が上がるようになっている。政治的な観点からは魅力的な発言として捉えられるかもしれないが、企業を分割するという法的な事案は多額のコストがかかり、複雑で、しばしば結果に失望させられるものだ。Googleを異なるビジネス群へと分割するという考えは、彼らの事業がお互いに絡み合っているモデルであることを無視している。たとえば、無料で使えるAndroid OSだが、Googleマップ(Google Maps)やGメール(Gmail)といったプロダクトの支援となっている。こういったプロダクトを衰退させてしまうことは、消費者にとって最善ではない。Googleが買収したダブルクリック(DoubleClick)のように、過去の買収事案を分割するケースの場合は、内部でそれほど絡み合っていないビジネスであれば比較的容易だろう。また、FacebookはFacebook、ワッツアップ(WhatsApp)、そしてインスタグラム(Instagram)をより密接に絡み合わせようとせわしなく取り組んでいる。分割作業が複雑になることを無視しても、企業がより小さな規模に分割されたからといって顧客に対する過剰な監視を防いだり、ユーザープライバシーに対する態度が改善することはないだろう。ールシンダ・サザン

Twitterのブルースカイはそれほど多くのトラフィックを受けないだろう

12月、TwitterのCEOであるジャック・ドーシー氏はブルースカイ(Bluesky)のローンチを発表した。これはソーシャルメディアがよりeメールのような形で運営されることで、問題点を解決しようとする彼の理想論的なビジョンだ。分散化することで、ユーザーがどのネットワークを使っていてもお互いにコミニケーションをとることができるという。ドーシー氏は、「5人のオープンソースアーキテクト、エンジニア、そしてデザイナーのチームを採用し、オープンで分散化されたソーシャルメディアのスタンダードを開発しようとしている」とのことだ。この影響は広範囲に及ぶ可能性がある。我々がソーシャルメディアで見るレコメンレッドコンテンツの種類を削減し、ヘイトスピーチやほかの種類の嫌がらせを抑制するのも容易になる可能性を持つ。しかし、彼がほかのソーシャルメディアプラットフォーム、特にFacebookを説得できるかどうかが最大の課題となるだろう。彼らのこれまでの歴史を鑑みると、ブルースカイを実現するよりもそちらの方が難しいかもしれない。ーディアナ・ティング

トリビューン・パブリッシングはオールデン・グローバル・キャピタルの手中に陥るだろう

自社のコラムニストたちによる嘆願、トリビューンの役員会に新しいオーナーを見つけてほしいと願うスタッフたちからの公開書簡、そしてジャーナリズムを観察する人たちの願いもむなしく、ヘッジファンドのオールデン・グローバル・キャピタル(Alden Global Capital)はトリビューン・パブリッシング(Tribune Publishig)の保有株をこの夏増やすだろう。これはオールデンが32%の株式保有を増やせないという同意の期限が切れるからだ。この悲観的な見通しを支えている最大の理由は12月頭にトリビューンが行った発表にある。役員会を6人から8人に拡大し、ふたつの追加された席はオールデン側の人物に与えられるものだった。ほかのオーナーの誰もふたつの席は得ないこと、そしてオールデンはこれに際し、追加での支払いを行っていないことからも、オールデンの欲しいものを獲得するという意思、そして役員会はそれに従うだろうことが示唆される。ーマックス・ウィレンズ

インフルエンサーとインフルエンサーマーケティングは消えない

しかし、インフルエンサーたちも過去数年間繰り返してきたやり方を今後も使い続けるというわけにはいかない。高度に編集され、鮮やかに撮影されたインスタグラムの写真、だけではもはや成功につながらない。代わりに、クリエイティブかつエンターテイメント性が高いインフルエンサーたちがもっとも成功を収め、報酬を得ることになるだろう。Snapchat(スナップチャット)がARレンズのクリエイターに大きく投資をしているのもこれが理由だ。そしてTikTokで有名になるためには、短い動画フォーマットでどれだけイノベーティブになれ、かつエンターテイメントを提供できるか、が重要であるのも同じ理由だ。ーディアナ・ティング

ブランドたちがデジタル支出を実際に減らす事はない

2019年、デジタルの成果はまたも疑われることになった。アディダス(Adidas)や、オールド・ネイビー(Old Navy)、そしてトップショップ(Top Shop)といったブランドたちが、自分たちの媒体割合がデジタルに偏りすぎていると公に語ったのだ。彼らはまたブランド構築よりもパフォーマンスマーケティングに頼りすぎていたとも述べた。これは事実かもしれないが、現時点でデジタルに彼らが支出している額を実際にマーケターたちが引き戻す可能性は低い。マーケティングは最高責任者たちが余分なコストを削減しようとするときに最初に目をつけられるのが典型的な部門だ。そのためマーケターたちは常に自分たちの価値を証明することに躍起だ。そんななかで、トラッキングができ、成果をはっきりと示すことができる分野に予算を割り当てたいとマーケターたちが考えるのは自然だろう。業界のアナリストたちがブランドが取り組むべきものとして挙げている「ブランド構築」マーケティングはトラッキングの成果の証明も容易ではなく、マーケターたちが自分たちの価値を証明する役にも立たない。ビジネスの世界はあくまでも短期で結果を求めている。これが長期的にはブランドにとってネガティブな影響を持つ可能性はあるが、これらのブランドでマーケティングを運営する職についてる人たちは通常、約18カ月ほどしかその職に滞在しない。それが変わらない限りは、デジタル支出はマーケティングのトップであり続ける可能性が高いだろう。ークリスティーナ・モンロス

最高マーケティング責任者の職は廃止されない

最高マーケティング責任者たちにとっては面白い時代になった。マクドナルド(McDonald’s)のような、最高マーケティング責任者のポジションを廃止しその権限を非最高責任者職へと渡す企業がある。その一方で、最高マーケティング責任者にはさらに幅広い種類のスキルが必要だと考える企業もある。オペレーションとプラットフォームを理解し、ますます複雑になる顧客の視点をの全体像を紐解くことが必要だからだ。どちらの視点に立つにしても、最高マーケティング責任者のポジションはますます幅広い内容を意味するようになった、との合意が業界にはある。そのため業界関係者のあいだでは、このポジションが本当に必要なのかどうか、と話題になる。長いマーケティングの歴史を誇るコカコーラは2017年に最高マーケティング責任者のポジションは要らないと判断を下したが、2019年の終わりにはポジションを復活させた。最高マーケティング責任者は、ポジショニングとブランディングの問題であるということを一連の廃止と復活の流れは示唆している。皮肉なことに、この問題に役立つのがまさに最高マーケティング責任者ということだ。ーセブ・ジョセフ

Digiday Editors(原文 / 訳:塚本 紺)
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