Twitter の D2C クラスタ、「健全」な議論が活発に:「初期のTwitterのような良い雰囲気」

はじまりはマンハッタンの会議場の舞台裏だった。

その場にいたのはニュースレターのリーン・ルクセ(Lean Luxe)の創設者ポール・マンフォード氏、2PMの創設者ウェブ・スミス氏、ハウス(Haus)のCEOであり創設者のヘレナ・プライス・ハンブレヒト氏だ。そしてこの3人をクライアントとしているD2Cストラテジスト兼コンサルタントのマルコ・マランディス氏が話に加わった。ついで自分のTwitterプロフィールに「D2Cの人」と記載しているニック・シャーマ氏が、バークボックス(BarkBox)とチャチャマッチャ(Cha Cha Matcha)の社員と連れ立って参加した。さらにヨッポ(Yotpo)のeコマースとD2Cを担当するクレイトン・チャンバース氏もたびたび会話に加わる。いずれもオンラインでもオフでも知人同士で、彼らを結ぶ共通点はD2Cブランドだ。

D2C業界の台頭は、ビットコインやオンラインマーケティング、アドテクといったテック系業界と同様、熱烈な支持者と彼らに従う人間たちを生み出した。こうしたネットワークはいずれも一見すると似通っている。Medium(ミディアム)に投稿するメンバーもいれば、FacebookやTwitterに投稿するメンバーもおり、どのメンバーも特定の業界に興味があって、皆がその良さを周囲に伝えるだけの知識を持っていると自負している。D2Cのネットワークはほかより少しばかり多様で、フォロワーを増やしつつある。

「ニッチであることが心地よい」

D2Cには間違いなく派閥意識がある。メッセで同じイベントに参加しているときはとりわけそれが目立ちやすい。尋ねられれば、自分たちがいかにインクルーシブ(包括的)であり、グループ全体が多様性に富んでいるかを誇る。プライス・ハンブレヒト氏は周囲の男たちを少しばかり冷やかすように、「友愛精神のようなものはある」と指摘する。

この寄せ集めのグループにあって、もっとも特徴的なのが、DNVBブランドに普通以上の関心を示していることだ。彼らはオンラインのチャネル上で、この成長途上にある業界のブランドへの愛情と賞賛、助言を行っている。カスタマー獲得やブランド戦略についてよく話題に上がるのが、アウェイ(Away)やワービー・パーカー(Warby Parker)といった企業だ。投稿しているのはD2C企業で働いている人、保有している人、ジャーナリストやコンサルなどで、数千人のフォロワーがいる人もいれば数百人の人もいる。

「ニッチであることが心地よい」と、マランディス氏は語る。参加者の大半は「基本的にナルシストではない」という。

ネットワーク内部の人間たちは、直接メッセージを送り合ったりSlackのプライベートグループを利用したり、ときにはお酒を飲みながら、成長している企業や事業提携の失敗の噂などについておしゃべりしている。同じ街に住んでいれば、一緒に出かけることもある。9月第2週にD2Cグループの大規模な集会がマンハッタンで流行のボクシングフィットネスのクラスで行われた。参加者はもちろん、集会後に写真を投稿している。ソーシャルネットワークであると同時にプロの友人が次々に集まるグループでもあるのだ。


ニューヨークで早朝から「D2C Twitter」グループが集まってトレーニング。

「みんな仕事の一助になれば」

Twitterのような公の場ではもったいぶった話をする。7月にはマランディス氏が自身の考えを18行にもわたる一連のツイートで表明している。主題は、ブランドが商品の枠組みを超えて拡大すべきという話だ。「毎日たくさんのD2Cブランをど見てきて、気づいたことがいくつかある。1. 柔軟なカテゴリーが一番強い 2. 優秀な創設者はソリューションにこだわらない 3. 優秀な企業はバーティカル企業以上に野心的」と、同氏は語る。

マランディス氏は、消費財にとどまらないサービスを追求し、大きな価値を実現しうる企業としてアウェイやクイップ(Quip)といた企業を挙げている。TwitterのD2Cクラスタのユーザーがこれに気づき、リツイートした。そして4日後にはリーン・ルクセが「マルコ・マランディス氏のまたしても注目すべきツイート」として拡散している。

こういったツイートによってマランディス氏は注目を集め、3月には800人だった同氏のアカウントは現在3300人近い。この増加は、ソーシャルネットワークにおけるD2Cの勢いとも同調している。「マルコ氏はひと晩で注目を集めた」と2PMのスミス氏は語る。「近頃では、注目に値する分析を投稿するユーザーは多い。こういった投稿がリーン・ルクセや2PMによって取り上げられ、サウスバイサウスウエスト(South by Southwest)のパネルに招待されたりする」。ほかにもシャーマ氏やチャンバース氏のように、TwitterのD2Cクラスタに参加したことで注目度を高めているケースもある。

TwitterのD2Cクラスタではこういったデジタル関連の意見が頻繁に飛び交っている。「全員がスレッドを投稿した週もある」とマランディス氏は振り返る。大きな注目を浴びることもある同氏だが「あまりツイート数は多くない」という。実際、同氏にとってTwitterは自分の考えを整理するための場なのだ。マランディス氏は、ツイートするにあたってまずノートを見て考えを整理してから、その一部をコピペする形でTwitterアカウントで投稿しているという。「面白いと思うことを投稿している」という同氏は、「これがみんな仕事の一助になればと思っている」と語る。

「非常に優れた場所だ」

食前酒ブランドのハウスの創設者、プライス・ハンブレヒト氏は、活動にはあまり積極的に参加していないという。同氏は自身の活動について、コミュニティのやや外側に位置しながら、中核グループによる「D2Cの修士課程」を受けている、と表現している。ハンブレヒト氏は会社を作り上げるかたわら、DNVB業界について理解を深めるため、2PMのようなサイトにも注目している。コミュニティ内でとりわけ活発なメンバーは「業界に精通している」と同氏は語る。

グループはD2Cの話題のみを取り扱っており、Twitterによくあるゴタゴタからは切り離されているという。「いまのTwitterでは落ち込むような投稿を目にすることが多い」と、ハンブレヒト氏は語る。「D2Cクラスタは、初期のTwitterのような良い雰囲気を保っている」。

ベイン・キャピタル(Bain Capital)のバイスプレジデント、マグダレナ・カラ氏も、グループの活気は魅力的だとしており、次のように述べている。「似たような分野にいながら、異なる考えをもつ人と話せる非常に優れた場所だ」。

メンバーたちと、オンラインでの交流の仕方には独特の雰囲気がある。彼らは起業を愛しており、厳しい業界のなかで成長を続けている。数年前からTwitterはビジネスユーザーに注目されるようになり、有害とまではいかないまでも、不愉快なソートリーダーシップや売り込みを目にする機会が増えた。一見すればTwitterのD2Cクラスタもこうした滑稽で自己満足的なグループになってしまう危険をはらんでいるように思える。ビジネス上で話題になっているからと自分たちに必要ないことについて講釈をたれたり、自分たちの優秀さについて誇示したりといった要素が入り込みそうに思えるものだ。

そういったものを排除し、D2Cグループをほかと異なるコミュニティとして維持しているのがスミス氏らだ。「業界全体にとって良いことを見つけ出そうと全員で努力している」と、同氏は語る。「陳腐にならないようにしつつ、人材についてできるだけインクルーシブであろうと努めている」。

「D2C業界はスポーツのようなもの」

そして、同意だけではなく意見が異なる場合でも活発に言葉がかわされる。「メンバーは誰にでも優しいわけではない」と、ハンブレヒト氏は語る。「怒りっぽい子供の集まりのような側面もある。間違っていると思えば率直にそう言うし、健全な貢献をしていないと思えば、即座にこき下ろされる」。Twitterは自己顕示にあふれている。「話題になんとか入り込んで名を成そうとしている人間が非常に多い」と、ハンブレヒト氏は指摘する。D2Cクラスタではこういった余計なものを排除するための自助努力が行われていると同氏は語る。「非常に率直で、健全な議論がかわされている」と、カラ氏は語る。

いかなるグループであれ、成長を続けると派閥意識が芽生えるのは必然だ。「ある意味で、D2C業界はスポーツのようなものになった」と、スミス氏は表現している。「スポーツであればフィールドに選手がいて、スタンドには観客がいるものだ」。だが、DNVBを信奉しつつも入り込みにくい環境にしすぎないよう注意していると同氏は語り、次のように述べている。「来てくれるだけでも良い。そして我々が成し遂げようとしていることに対して、誠実に貢献してくれることが大切だ」。

こういった考えのもと、グループには誰でも参加できるようになっており、メンバーは増え続けている。D2Cのメンバーの多くは自分たちの会社に没頭しており、オンラインでは関係を切らないためにたまにコメントをするにとどめている一方で、ずっとオンラインにいるようなメンバーも存在する。マランディス氏はSlackのグループでものすごい数のリンクを投稿した参加者たちに冗談めかして、「どうやったらこんな大量に読めるんだ? 君たちバイスプレジデントじゃないの?」と、つっこみを入れたこともあるという。

「万能の解決策にはなりえない」

プライス・ハンブレヒト氏は、自分にとってオンライングループは癒やしの場になっていると明かす。ビジネスに関するシリアスな話題を持ち出す人もいる一方で、ニッチな話題をめぐってTwitter上で喧嘩しているメンバーもいるという。「見ていて楽しい」と同氏は語り、次のように述べた。

「結局なところ、真剣に考えすぎる必要はない。Twitterは会社の作り方について万能の解決策にはなりえないのだから」。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)