ユニリーバ 買収戦略の核は、プレミアムビューティブランド:eコマース事業規模「倍増計画」の中身

オランダとイギリスを本拠とする大手一般消費財メーカー、ユニリーバ(Unilever)が近年、とりわけプレミアムビューティ&ナチュラル製品分野において積極的な成長戦略を実行している。その狙いは、eコマース事業の成長、拡充データに基づく経営方式の確立、そして海外市場へのさらなる進出にある。

2015年以来、ユニリーバは29社を獲得しており、この4月にも、ビタミンブランドであるオリー(Olly)の買収計画を、金額は非公開だが、発表した。5月12日には、同社が 米スキンケアブランドであるドランクエレファント(Drunk Elephant)の買収を1億ドル(約110億円)で検討している旨をブルームバーグ(Bloomberg)が報じた。同社は新興ブランド獲得に伴うリスクを恐れていない。発表によれば、2018年、買収に投じた総額は14億5000万ドル(約1595億円)、2017年は55億ドル(約6050億円)に上る。一方、ライバルP&Gが2018年度に投じた買収総額は、わずか1億900万ドル(約119億円)だった。

個々の具体的な数字は伏せているが、過去のアーニングコール(電話会見)におけるユニリーバ幹部らの発言によれば、買収した企業は「全体として」2桁の売上増となっているという。

「ユニリーバはいくつかの競合他社に比べて、[買収に関し]少々積極的な姿勢を見せている」と、eコマース分析会社プロフィテロ(Profitero)のストラテジー&インサイツ(戦略&洞察)部SVP、キース・アンダーソン氏は指摘する。「私の見るかぎり、被買収企業の救済という意味でも、彼らはおおむね良い仕事をしており、その姿勢は古くは[2000年に買収した]Ben & Jerry(ベン&ジェリー)の頃から見られる。それら小企業に、成功要因である企業文化や経営モデルをある程度保持できるよう、自主性を与え、自由度を持たせている」。

ユニリーバの買収戦略の核

ライバルP&Gの場合、ニッチなD2Cブランドをさらに獲得し、小ブランドならではのオーガニックな魅力の取り込みを狙っていると報じられた。それと異なり、ユニリーバが進める買収戦略の核は、D2Cモデルの活用ではない。

広報によると、同社は基本的に「高成長セグメント、つまり新たなチャンネルおよびインフィル[社会経済活動の活発な地域]において、さまざまな能力または存在感を発揮している分野」のなかから買収候補を探す。同広報はさらに、ユニリーバは現在、プレミアムビューティブランドに、そしてeコマース界における同社の存在感とデジタル能力の向上に寄与できるブランドの獲得に、とりわけ関心を寄せている、とも語った。

新ブランドを社内に一から構築するのではなく、買収すれば、新たな商品分野への参入、そして成功の鍵を握る主要地域での成長をより迅速に実現できる、というのが同社の考えだ。

ビューティ関連分野に関心

ユニリーバが2015年から2018年にかけて獲得した25の企業のうち、13社がビューティ/パーソナルケア商品を主力とする。うち6社――ダーマロジカ(Dermalogica)、ケイト・ソマーヴィル(Kate Somerville)、リヴィング・プルーフ(Living Proof)、アワーグラス(Hourglass)、レン(REN)、ミュラド(Murad)、ガランシア(Garancia)――を、同社はプレミアムビューティブランド部門プレスティッジグループ(Prestige Group)として、ひとつにまとめている。

「ユニリーバが買収したブランドはいずれも、ビューティ/パーソナルケア分野におけるトレンドの象徴にほかならない」と、英国際市場調査会社ユーロモニター・インターナショナル(Euromonitor International)のビューティアナリスト、ケイラ・ヴィレナ氏は指摘する。植物由来の素材を売りにするイタリアの大手スキンケアブランドであるエクイリブラ(Equilibra)の獲得は、まさしくその一例だと、氏は語る。

ユニリーバがビューティ/パーソナルケアに高い関心を示す理由はふたつある。ひとつは、同分野に関する専門知識/技術の存在、もうひとつはeコマースの事業規模の倍増計画だ。ビューティ/パーソナルケアは同社最大の事業分野であり、収益の40%を占める。一方、eコマースの収益は現在5%だが、同社はこれを今後5年間で10%に増大する目標を掲げている。CEOアラン・ジョープ氏――ビューティ/パーソナルケア部門のトップを経て、昨年11月に就任した――によれば、同社のプレミアムビューティ/パーソナルケアブランドはいずれも、オンラインによる消費者への直接販売により、大いなる売上増が望めるという。

コンテンツドリブンでデータ主導

「私が思うに、テクノロジーが有効な現在、顧客への直接販売(D2C)はきわめて理に適っている。サブスクリプションなら、連続的に収益が望める。つまりダラーシェイブクラブ(Dollar Shave Club)方式だ。また、弊社のプレスティッジグループがそうであるように、[1回の]高額販売で、高マージンを手にすることもできる」と、ジョープ氏は今年1月、第4四半期アーニングコールで語った。「ダヴの石鹸を1個ずつ、オンラインで顧客に直接販売していく方式に、明るい未来は見えない」。

CEOとしてジョープが重視する点は、ほかにもある。拡充データに基づく経営方式の確立、そして「コンテンツドリブンの、ターゲットを絞り込んだ、データ主導の」マーケティングキャンペーンだ。CEO就任以前、ジョープ氏は同社のいくつかのブランドに関し、オンラインコミュニケーションとデータ分析を手がけるデジタルセンターをマンハッタンに新設している。

ブランドを社内に一から構築する代わりに、既存のそれを買収すれば、新たな顧客データ一式を簡単が手に入る。また、顧客フィードバックに基づく迅速な新商品開発や反復処理に習熟した人材を小企業から取り込むことも可能となる。

世界的に拡大する機会

投資家およびアナリストに向けてインドで行なわれた昨年12月のプレゼンテーションにおいて、ジョープ氏はシュミッツ・ナチュラル(Schmidt’s Naturals)――米オレゴン州を本拠とするナチュラルパーソナルケア製品ブランドで、ユニリーバが2017年に買収した――を、顧客フィードバックに基づく反復処理に長けたブランドの好例として挙げた。

ジョープ氏いわく、「シュミッツはこれまで、データドリブンマーケティングを存分に活用してきた。いわゆるマス広告は打っていないに等しい。そしてその知見が、我々のコンシューマーブランドの拡大に役立っている」。今年の第1四半期、ユニリーバはシュミッツ・ナチュラルを北米でもっとも急成長を遂げた1社に挙げている。

ユニリーバCFOグレイム・ピットケスリー氏も、今年はじめ、投資家に対して「弊社が買収するのは一般に、北米に堅い基盤を持つ企業であり、その基盤を手に入れ、世界的に拡大する機会の有無が検討材料となる」と語っている。ユニリーバの総商取引の内、北米が占める割合は16%だが、60%はほかの新興市場で生まれている。だからこそ、ユニリーバは現在、海外市場進出に積極的なブランドを物色している。

ユニリーバへ売却を決めた理由

オリーのCEOエリック・ライアン氏は、それこそがユニリーバへの売却を決めた理由のひとつだと語る。氏によれば、2018年、オリーの売上は1億ドル(約110億円)に上り、収益性は高かったのだが、ユニリーバのような大企業の力を借りないかぎり、自らが望むかたちでの海外市場進出は不可能だと感じていた。また、ベンチャーキャピタルの支援を受けた競合他社に先を越されるのでは、との懸念もあったという。

ライアン氏いわく、「2年後に中国に行ってみたら、オリー[のライバル]的存在が5社、すでに進出していた、という事態だけは避けたかった」。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)