アリババ のグローバル展開、 知っておきたい 2つの戦略:要点まとめ

中国EC大手のアリババ(阿里巴巴)が、グローバル企業になるための取り組み一環として国際市場に手を広げている。

アリエクスプレス(AliExpress)は世界150カ国のカスタマーに中国小売業者の商品販売を行うアリババのEC部門だ。5月第2週前半のフィナンシャル・タイムズ(The Financial Times)の報道によると、このアリエクスプレスが、世界中の小売業者向けに国内外の市場で商品販売できるシステムを準備しているという。

  • アリババの卸売市場部門のプレジデント、トゥルーディ・ダイ氏はこの動きは同社の「より幅広いグローバライゼーション戦略」の一環としている。
  • アリババは(4月に中国から撤退した)Amazonがこれまで実現できなかった、国際的なEC市場の形成を目論んでいる。これはアリババのプレジデント、マイク・エバンス氏が2015年にグローバル展開として打ち出した「ニューリテール戦略」の一環だ。
  • 同社が目指すグローバルな事業展開は以下の2本の柱から成り立っている。ECが浸透した市場では、同社が「中国への入り口」と称するTモール(天猫)を通じ、中国のカスタマーに国際ブランドの商品を販売する。ECは発展途上の市場では、ECのマーケットプレイスを構築するか買収することでカスタマーの獲得を目指す。

エバンス氏は、アリババのニューリテール戦略は小売の世界的な未来の形だとしている。ニューリテールでは、「小売バリューチェーン全体のデジタル化」を目指している。中小ブランド、実店舗、地域およびグローバルな販売業者すべてがアリババと同じデータにアクセスでき、同じデジタルインフラを使って同社のECマーケットプレイスを利用できる。この仕組が同社のグローバル展開の中心となっている。

1月に行われた米国小売業界最大の年次イベント「NRFリテールズ・ビッグ・ショー」で、エバンス氏は「当社のグローバル戦略で重視しているのが、ブランドと世界中の中小企業を中国のカスタマーと直接結びつけることだ」と語っている。「中国の消費者市場は巨大で、いまもそしてこれからも多くの企業にとって成長につながる魅力がある。中国に存在するビジネスチャンスの大きさについてきちんと理解していないブランドは世界にまだまだ多い」。

「中国への入り口」戦略

エバンス氏の仕事は、アリババを確たる世界最大のEC企業にすることだ。同社のグローバル戦略を理解するには、それにまつわる多数の要素や役割、優先度について把握する必要がある。

まず、アリババの戦略である「中国への入り口」は、ECが普及した市場で販売している国際的に確立したブランドが、中国のカスタマーにアピールとターゲティングをしやすくする戦略だ。この戦略は複数の取り組みから成り立っている。Tモールは2017年にラグジュアリーパビリオン(Luxury Pavilion)を立ち上げた。高級ブランドのショッピングを行うことが分かっているカスタマー向けに、より高級なカスタマー体験を提供するサービスで、これまでバーバリー(Burberry)やヴァレンティノ(Valentino)、ベルサーチ(Versace)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)をはじめ、80のブランドが参加している。

高級ブランド以外にも、アリババは中国のカスタマー向けに量産ブランドと提携して新商品の開発を行っている。Tモールのイノベーションセンター(Innovation Center)はユニリーバ(Unilever)やマース(Mars)といった国際ブランドと研究開発やデータ面で協力し、中国限定商品を開発している。

また、ECが普及した市場で、まだ十分に確立していないブランド向けに、タオバオ・グローバル(Taobao Global)を展開している。タオバオはアリババの保有するもうひとつの消費者向けマーケットプレイスで、タオバオ・グローバルは中国市場向けのチームを運用できるほどリソースがない中小規模のブランドに販売業者を紹介し、タオバオで商品販売する支援を行う。

「地域から地域へ」戦略

ECがさほど普及していない市場では、アリババは「地域から地域へ」の戦略を採用している。すでに地域のカスタマーを確保している企業を買収するか投資して、中国のカスタマーへの紹介や、インハウスでの橋渡しを行う。これにより他国カスタマーのアリババでのショッピングや、他国企業の販売が容易になる。

アリエクスプレスはこの戦略のなかで重要度を増している。かつてアリエクスプレスは中国国内の中小規模の小売業者が国外販売するためのプラットフォームだったが、現在は国外のこうした業者が、中国を除く世界各国で販売できるシステムとなっている(中国での販売はTモールやタオバオを通じて行うため)。Alibaba.comは世界的なB2B事業を展開しており、企業とサプライヤーネットワークをつなぐことで、国家間の配送にかかる物流コストを削減している。最近では、3月にAlibaba.comとオフィス・デポ(Office Depot)が在庫管理および国内配送での提携を発表している。

昨年、アリババは東南アジア市場に展開するオンラインマーケットプレイスのラザダ(Lazada)を40億ドル(約4400億円)で買収し、アリババの役員をCEOに据えている。さらにアリババはインドのモバイル決済企業ペイティエム(Paytm)の支配権を握っているほか、トルコのECプラットフォーム大手トレンディオル(Trendyol)の少数株式も取得している。

堀を掘るAmazon、橋をかけるアリババ

つまるところ、アリババの戦略は次のふたつに要約できる。大手は味方に引き入れ、規模が小さければ買収する。これにより直接的であれ間接的であれ、ブランド、販売業者、カスタマーをアリババの輪のなかに引き入れているのだ。Amazonが中国やインドといた地域に根付くことができず苦労しているなかで、アリババは中国国内外で2種類のネットワークを構築しようとしている。

エバンス氏は次のように語っている。「Amazonは堀を掘っているが、アリババは橋をかけているのだ」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)