WeWork 、今度は「リテール事業」に進出:コミュニティの特性をフル活用

ニューヨークにあるWeWork(ウィワーク)本社で先日、WeMRKT(ウィマーケット)というWeWork内の店舗ネットワークに出品を検討するためのプレゼンが行われた。瓶入りのガスパッチョ、環境に優しいパッケージ素材の天然水、中身に合わせて大きくなる財布、その他、コワーキングを向上させるべく特別に企画された製品など、10社の製品が検討された。

23カ国77都市の287カ所からなるネットワークと26万8000人のメンバーを擁するWeWorkはいま、切り口を変えて、自社が小売業者になろうとしている。

フィットネスのソウルサイクル(SoulCycle)の共同創業者で、2017年にWeWorkのパートナーになったジュリー・ライス氏は、「WeWorkのコミュニティが集まったり、好きな物について語ったり、ほかのメーカーの話に加わったりするための、もうひとつの行き先にこの小売店舗がなってきている」と話す。「小売りが瀕死の状態にあるなか、心を込めて、愛着を持って、使おうという人のことを考えて作られるものを生み出すことで、我々が小売りを蘇らせていく」と、同氏は語った。

WeWorkが店舗を運営

WeWorkは、コミュニティの精神を中心に据えた小売ブランドを構築し、WeWorkのコワーキングスペースで働く人々のニーズに合わせた商品を店舗で販売したいと考えている。WeWorkによると、メンバー企業が商品を開発するので、お互い支え合うことに関心がある企業たちが、互いに商品を購入するのだという。消費財のスタートアップが初期の売上を得る手段になるし、新興ブランドにとってはマーケティングの底上げ、流通、テストのチャネルにもなる。WeWorkとしては、新しい事業分野への進出であり、ネットワークの規模を支えに収益チャネルを構築する。収益は卸売りモデルに基づいており、売上げの一部をWeWorkが取る。注文、供給、流通については、メンバー企業がWeWorkの卸売りのパートナーと直接、取引する。

創業8年のWeWorkは、もともとシェアオフィスを提供していたが、より長期の滞在施設(WeLive)、ジム、スクールと、事業をどんどん拡大してきた。小売りについては、テナントは、どこでやっているか聞いたこともないブランドを求めるのだと、WeWorkは断言する。評価額350億ドル(約3.9兆円)と報じられているWeWorkだが、中核の地主モデルを超えた拡張が可能なことは、まだ証明はできていない。

WeWorkが店舗を運営するという考え方は新しいものではない。各地のWeWorkには2013年以降、オネスティマーケット(Honesty Market)――メンバーがスナックや飲み物を入手できるセルフサービスのストア――が備えられている。今回は、このオネスティマーケットのコンセプトを次の段階に進めようというものだ。そして構想されたのが、健康的なスナック、事務用品、衣料品、テクノロジー製品など、仕事の生産性を高めるようにデザインされた商品を取りそろえた有人の店舗だった。商品のなかにはWeWorkとの共同ブランドもある。

入念に選定された市場

WeMRKTは、ニューヨークのハドソン通り205にあるWeWorkに最初の店舗を出し、その後、ニューヨークにさらに3店を展開している。ライス氏によると、今後2年間で500店以上を開店する計画で、eコマースストアも予定しているという。

「建物には(同じ)理由でそこにいるメンバーが何十社もあるのだから、素晴らしい事例になる」と、ライス氏はいう。

WeWorkを拠点にしている各社は、WeWorkの店舗に商品を置くのは、単に流通が増える以上のことなのだと話す。先日のニューヨークのコンペで勝利したトリオ・ガスパッチョ(Tio Gazpacho)は、Amazonとホールフーズ(Whole Foods)でもすでに販売をしている。しかし、WeWorkのメンバーに販売することで、中心的な客層に素早くリーチできる。

「こちらが実に入念に選定されている市場なのに対し、Amazonは選択肢に圧倒されることがある」と、トリオ・ガスパッチョの事業開発マネージャーのスィーオ・カロジェラキス氏。「我々のターゲット市場はWeWorkのメンバーだ。すなわち、忙しくて、飛び回っていて、健康的なスナックを求めている人たちだ」と語った。

起業家狙いには好都合

より大きな小売業者が見ているところで信用を構築する機会だと、WeWorkを捉えているところもある。ニューヨークを拠点とするアクセサリー企業でWeMRKTのコンペに参加したベンカイ(Bennkai)は現在、バーチボックス(Birchbox)やボムフェル(Bombfell)のようなサブスクリプションサービスに注力している。そのオーナーのベンジャミン・キラリー氏にとって、WeWorkは、大きな流通チャネルに拡大する前に反応が良さそうな顧客のグループにリーチを広げるための方法ということになるだろう。

「(WeWorkの)市場でうまくいけば、よりオーソドックスな小売チャネルに道が開けると思う」と、キラリー氏は語る。「流行を発信する雰囲気のなかに商品を展示すれば、従来からある小売業者が試験的に扱ってくれる可能性は高くなる」。

DTC(直販ブランド)のメンバー企業が、好意的なオーディエンスに商品をマーケティングできるようにすれば、WeWorkにはロイヤルティの面で得るところがある。

「WeWorkはユーザー属性を見ると、とても起業家が多い市場であり、同じ起業家たちを捕まえるにはもってこいの場所だ」と語ったのは、マーケティングコンサルタントのジャッジ・グラハム氏だ。店舗をどのようにマネタイズするのか、商品を販売するメンバーのためにいかにして豊富なフィードバックデータを生み出すかなどを考えることが、長期的には必要になるだろうと、同氏は続けた。WeWorkは、セールスレポートとWeWork会員から集めたフィードバックを提供する計画で、従業員がSlackのチャンネルを通して集計するとしている。

Amazonの成長に類似

商用不動産投資企業のイントゥ(Iintoo)でマネージングディレクターを務めるジェフ・ホルツマン氏は、WeWorkの小売り進出は大きな可能性を秘めており、Amazonが複数の事業分野で成長しているのに類似している部分があると語った。そして、成功し続けるためには、WeMRKTの規模が大きくなったときに、メンバーに対していまの店舗在庫が妥当なのかを慎重に検討することが必要になると続けた。

「短期間のオフィス賃貸としてスタートしたWeWorkは、これからどんどん展開していくことがわかっている」と、ホルツマン氏は語る。「ブランドとしてのWeWorkがクールであり続けられるか、人々が求めるものを提供できるかが課題だ。WeWorkが何を市場に投入するのか、すべての小売業者は注意を払うべきだろう」。

Suman Bhattacharyya (原文 / 訳:ガリレオ)