Amazon マーケットプレイス統合のウワサと、その狙い:「ブランドいじめのように感じる」

Amazonの統合型販売システム、ワンベンダー(One Vendor)が近く導入されるというウワサが流れている。このシステムは、Amazonのプラットフォーム上で販売を行っているブランドへの支配的な影響を継続するひとつの方法だ。

Amazon上で販売を行うブランドクライアントと仕事をしたことがある情報筋によると、このシステムは6カ月以内に発表される予定だという。Recode(リコード)によってはじめて明らかにされたこのシステムは、Amazonのふたつのマーケットプレイスを統合するものとなりそうだ。ふたつのマーケットプレイスのひとつは、ファーストパーティーセラー向けのもので、ベンダーセントラル(Vendor Central)と呼ばれ、もうひとつは、サードパーティーセラー向けのもので、セラーセントラル(Seller Central)と呼ばれている。このふたつを統合することになるという。社内的には、リテールマネジメントチームの統括者がシニアバイスプレジデントのダグ・へリントン氏のみの1人体制となった。

ワンベンダー導入の狙い

ワンベンダーがどのように運用されていくのかについての詳細に関する情報は少ない。Amazon自身は、そのようなシステムは存在していないという。しかし、元Amazonの従業員で、Amazon上で販売を行うブランドクライアントの手助けをしているエージェンシーの経営者によると、ワンベンダーは効率を重視した方法(ふたつのマーケットプレイスを運用するよりも、ひとつのマーケットプレイスを運用する方が容易である)であると同時に、ブランドのAmazon上での見え方を管理する方法でもあるという。つまり、ブランドによるAmazonの広告への投資を拡大してもらう方法であり、メディアを意識した方法と捉えることもできる。

Amazonのコンサルタント会社であるヒンジ(Hinge)のCEO兼創業者であり、Amazonの元主席事業開発マネージャーであるフレッド・キリングズワース氏によると、ワンベンダーは、ブランドがAmazon上でどのように販売したいかの選択肢を効率的になくしていくだろうと語る。ブランドは現在、プライム配送やAmazonでサポートされるコンテンツやマーケティングなどの特典が付いているベンダーセントラルを利用するか、より正確なカスタマーインサイトを得られるものの、需要やインベントリーの管理についてはブランドの負担が増えるセラーセントラルでオンラインストアを出店するかを決められる。Amazonとクライアントのやり取りから判断するとワンベンダーは、どのブランドがどこで販売するのかをコントロールするものとなりそうだ。これは、Webサイトで正規製品を探している顧客にとって良いことだ。

「不正なセラーの管理やブランドの権威が大きな問題になっていることを考慮すると、プラットフォームをひとつに集約することは、模造品を排除するというブランドの課題の制御や軽減が容易になるだろう」と、キリングズワース氏は言う。

ブランドいじめに見える

しかし、当該ブランドにとって、この提案には一抹の不安が残る。一方で卸売業者(ホールセラー)にとっては、Amazonが在庫管理や出荷を担当してくれるため、Amazon上の運用はより簡単になる。最近、サードパーティーマーケットプレイスが更新され、特に卸売ブランドにとっては、自社のWebサイト上でeコマースの運用や物流の管理をできるため、より良い環境となった。Amazonのエージェンシー、ボブスレーマーケティング(Bobsled Marketing)の創業者であるキリ・マスターズ氏によるとAmazonは、ここ1年で開発を進め、セラーセントラルに多くの付加機能を追加。すなわち、サードパーティーセラーは、顧客のデータや振る舞いに関する洞察を無料で得られ、Amazonでより適した広告のオプションを選択できる。

Amazon上でサードパーティーに販売しているブランドにとっては、選択肢があることは重要だ。なぜなら、これらのブランドはAmazon上に商品を掲載することから得られるものがあることを理解しているが、卸売取引でAmazonに自社製品の価格を設定できるようにしたくないブランドもあるからだ。Amazonを利用している企業の半分以上がサードパーティーであることを考慮すると、このような構造の転換はAmazonに困難をもたらす可能性がある。

以前はAmazonでサードパーティーセラーであったブランド創業者は背景の説明を求められ、「我々のような小規模でニッチなブランドにとっては、これは良い取引とは言えない」と答えた。「Amazonが『やり方は私たちが決める。顧客が事業をどのような方法で行っていても、私たちにとってより良い選択をする』と言って、ブランドいじめをしているかのように感じられる。(卸売の)関係を強要されるなら、それは価格破壊につながり、ブランドとしてそれは心地よいものではない」。

ARAという高価なシステム

言うまでもないが、Amazonが卸売ブランドを援助しようと、背後でどれだけ広告を出したとしても、Amazonが提供するそれらの取り組みの結果として、どれだけのデータや洞察につながるかは分からないと、この創業者は付け加えた。卸売業者向けのデータフィードシステムであるAmazonリテール・アナリティクス・プレミアム(Amazon Retail Analytics Premium:以下、ARA)を利用するには、リテーラーの売上の数%に該当する費用を要し、ときには、年間で何万ドルもの費用を要することもあると、マスターズ氏は語る。また、このシステムは、コンバージョンの価値やクリックシェア、顧客がほかにどんなものを購入しているかなどの指標に関しての洞察を提供することによって、卸売業者がより明確な顧客像を描き、それに応じて戦略を変えられるようにするものだという。無料のARAの基本バージョンからは、基本的な売上やトラフィックデータしか分からない。しかし、サードパーティーセラーはセラーの製品を購入している顧客のタイプをより明確に把握し、無料でそのデータにアクセスできる。

卸売業者は、その費用に加えて、売上の数%をAmazonによる協力のために支払う。Amazonはこの資金を使用して、Webサイト上でブランドの販売促進を行う。しかし、卸売業者は、この資金の用途やその成果がはっきりと分からないと、しばしば不満を漏らす。

「価格設定を行うことができる、収益性を確保できる、または、インベントリーが利用可能であるなどの理由で、このサードパーティーマーケットプレイスが、自社にとってより有益なものであると判断してきた多くのベンダーにとって、これは、その選択ができなくなったことを意味する」と、マスターズ氏は言う。「Amazonから見れば、これは厳密には驚きではなく、新しい規格だ」。

Amazonのふたつの目的

ワンベンダーの導入によって、Amazonはふたつの意味で実質的に最良の成果を得られる。LGやダイソン(Dyson)、ロレアル(L’Oréal)などの高級ブランドは、自然と卸売業者としてワンベンダーに参加し、需要の高い商品は常に在庫があり、予定通りに出荷されることと、これらのブランドがAmazonのWebサイト上の広告において、常に大きな存在感を持つことを、Amazonは保証できるだろう。しかし、Amazonは自社で特に何もしなくてもそれらの販売から15%のマージンを得られる。そして、いまのところはAmazon独自の条件が課せられる。それでもこのビジネスは維持されるだろう。

しかし、卸売業者とサードパーティーセラーは概して、いま以上の負担を背負わなければならなくなるだろう。Amazonはマネジメントチームを縮小し、これらの卸売ブランドへのサポートを無くすことで、卸売業者との関係に、これまで以上に干渉しないアプローチを取り続けると、キリングズワース氏は言った。つまり、卸売業者はサードパーティーセラーとほぼ同じように独立して事業を維持する必要が生じたことを意味するという。

「ブランドの負担は増えるだろう」と、キリングズワース氏は言う。「Amazonの立場で見た場合、私は今後ほかにどのような変化が起こるかを考えている。Amazonは常に規則や運用方法を変えているのだ。今回の変化は何が起こることを示しているだろうか? 企業は何億ドルもの資金をこのWebサイトに投じてきた。ひとつの小さな変化が大きな影響を及ぼす可能性がある」。

Amazonによる不正排除

しかし、サポートに対するこの変化にも良い面がひとつあるといえそうだ。Amazonはすべての卸売ブランドに対してARA Premiumを無料で提供する可能性があると、キリングズワース氏は言う。また、Amazonはブランドが自社で効率的に運用するための、さらに多くのツールを提供し、データの共有から受け取る料金を少なくすることによって、ブランドの事業を軌道に乗せるだろうとも説明した。

ほかに良い点として考えられることは、Amazonが不正なセラーあるいは模造品を締め出すことだろう。

「ブランドが顧客の視点を通して、Amazonがこのように取り組む価値を理解しはじめたとき、ブランドは、『なるほど、Amazonと協業する必要がある。Amazonの提示する条件を理解する必要がある』と、言いはじめるだろう」とマーケットプレイスイグニッション(Marketplace Ignition)のCEOであるエリック・ヘラー氏は言った。

Hilary Milnes(原文 / 訳:Conyac