「人々は インフルエンサー を馬鹿にするのが大好きだ」:ある旅行関連インフルエンサーの告白

インフルエンサーマーケティングは、いわばワイルドウエスト(開拓時代のアメリカ西部)だ。「インフルエンサーのバブル崩壊は、秒読み段階だと思う」と語る、某高級ホテル・マーケティング担当者もいる。

しかし、すべての事態を把握してついていくのは、企業にとってもインフルエンサーにとっても困難だ。インフルエンサーはただ商品の写真を投稿し、企業からもらった小切手を換金するだけの気楽な商売だと想像しがちだが、彼らに言わせれば、実態はそんな生易しいものではなく、骨折り仕事もたくさんある。

ある旅行関連インフルエンサーによれば、コンテンツとブランド契約を管理するのは、小規模事業の経営に近いのだが、ブランドは必ずしもそれを理解していない。匿名を条件に本音で語ってもらう「告白」シリーズ。今回は、とある旅行関係のインフルエンサーを迎え、ブランドとの契約の秘訣や、コンテンツの著作権保持が引き起こすやっかいな問題について聞いた。ブランドはインフルエンサーの存在をもっと真剣に捉えるべきだと、彼はいう。なお、読みやすさを考慮し、発言内容には多少編集を加えた。

──インフルエンサーとしての仕事内容は実際どんなもの?

ややこしい雑務の寄せ集めだ。私はライターで、写真家で、マーケターで、広告主で、自分自身の広報担当でもある。ウェブサイトも運営しているので、そちらの問題にも対処しなくてはならない。何もかもを少しずつやっている。1日のある程度の時間はソーシャルメディアに費やすが、自制するようにしている。自分自身のビジネスを続けるために必要なあらゆる雑務に押しつぶされないように、そうする必要があるのだ。

──インフルエンサーの仕事は、小規模事業の経営に似ている?

100%そう感じている。インボイスをきちんとつける、契約書にサインする、そのために内容を確認する。どれも必要なことだ。いくつかのキャンペーンの契約書は自分で書いた。どんなことも自分でやらなくてはならない。ただ写真を投稿するだけではないのだ。ブランドと仕事をするとき、たとえば何かの販売や取引を促進するキャンペーンだとしたら、まずキャンペーンとブランドのガイドラインを渡され、それに沿ったコンテンツの撮影や執筆をして、ブランドに送って、承認をもらい、日時を決めて自分のアカウントに投稿する。実際に行うのはブランドの広告業務であって、たくさんのステップを踏み、すべてを完璧にこなす必要がある。

──力関係はどうなっているのか? ブランドからコンテンツに対する著作権を要求された場合はどう対処する?

たいていの場合、ブランドが何かの宣伝のために私にコンタクトしてきたら、まずは一般的な条件で合意を結ぶ。その後、相手方が契約書を送ってくれる。私はブランドのガイドラインに沿ってコンテンツを制作するが、あくまでもクリエイティブな裁量は私自身のブランドにある。利用するのは私のチャネルであり、私のネットワークなのだから当然だ。したがって、両者のバランスを取る必要がある。

ときには、仕事をはじめる前に送ってもらった契約書に、私が制作したコンテンツの著作権を(永久的に)相手が保持するという文言が含まれることもある。最初の打ち合わせの段階でそういう話になっていなかった場合、余分なコストがかかる。彼らは写真家を雇ってブランド用の素材を作らせることもできる。だが、インフルエンサーと契約すれば、理屈のうえでは一石二鳥だ。自社のマーケティングに使えるオリジナルのクリエイティブコンテンツを手に入れたうえに、外部のチャネルとネットワークを通じた宣伝もできるのだから。私は契約書をくまなくチェックして、得られる報酬に見合った権利を保持できる内容だと納得してから仕事をするようにしている。

──契約書に予期しない文言があった場合は再交渉になる?

交渉のテーブルに戻らなくてはならない。多くの友人のインフルエンサーも皆そうしている。契約書は必ず精査する。我々は小規模事業主で、自分たちの知的財産を十分な見返りなしに手放すことを恐れている。読み飛ばしてしまった方が楽だと思うこともある。けれども、インフルエンサーとしてアクティブに没頭するようになるほど、私はこうした書類に注意を払うようになった。ブランドに拒まれることもないとは言わないが、たいていは彼らも契約内容の修正に喜んで応じてくれる。ノーと言われたら、そこできっぱり終わりにする。どうせほかのインフルエンサーが同じ条件で仕事を受けるのだ。

私は主に旅行・観光業界で仕事をしているので、目的地への旅行やホテルの宿泊など、すばらしい特典が得られることもある。フライト、ホテル、レストラン、アクティビティがすべて込みの現物支給だけのこともある。だが、送られてきた契約書に「これこれの日付までのコンテンツの著作権は、すべてブランドに帰属する」といった文言があったとしたら、現物支給の報酬ではまったく割りに合わない。いつでも交渉は必要だ。

──インフルエンサーに対する世間の声に対して、いつも腹立たしく思うことは?

人々はインフルエンサーを馬鹿にするのが大好きだ。インフルエンサーという言葉自体、定義がきわめて曖昧なまま使われている。しかし、プロフェッショナルの域の人々は、この仕事にとても真剣に取り組んでいる。ときにはブランドもインフルエンサーの仕事をまともに評価していないように思える。あるいは、本物のインフルエンサーの仕事と、無料特典が欲しいだけの偽物の仕事をごっちゃにしているのかもしれない。

私は自分のチャネルを著作物と考えていて、そのためにコンテンツを制作している。コンテンツ制作を続けるためには、広告制作もしなくてはならない。そうしてはじめて持続可能になる。ブランドから予算が限られていると言われることもあるが、そんなときは自分のメディア、自分の著作物、自分のチャネルに掲載する広告の価値を考慮して、最低基準に満たないなら、きっぱり断る。

──ブランドがインフルエンサーと真剣に向き合っていないと感じる具体例は?

料金の安さを理由にマイクロインフルエンサーを使う。自分たちに都合のいい値段をつけて、個々のインフルエンサーのコンテンツの質の違いに目を向けない。オーディエンスもエンゲージメントも、ニッチも強みもまったく考慮せず、すべてのインフルエンサーに固定報酬を提示することさえある。私はLGBTQの話題やコンテンツをカバーしていて、特定のLGBTQオーディエンスを抱えている。見えづらく、しばしばブランドにとってリーチするのが難しい、貴重なオーディエンスなのだから、そこには付加価値をつけるべきだと思う。ブランドが固定報酬制を採用していて、個々のインフルエンサーを独立事業や別個のメディアと考えていないなら、うまくやっていくのは難しい。

──あなたの報酬はどれくらい?

場合による。定額は設定していない。いまや誰でも自分が提供する価値にもとづいて価格を設定できる。しかし、インフルエンサーネットワークを通じて私に接触してくるブランドは、一律でインフルエンサー1人につき150ドル(約1万6000円)といった価格を提示する。それでは私の通常の報酬に及ばない。彼らは明らかに、オーディエンスが誰かなど気にもしていないのだ。

──インフルエンサーを使った絨毯爆撃のような広告は、定額報酬の契約で行われている?

インフルエンサーを精査して、関係構築を図るブランドが増えてきているのは確かだが、依然としてマスマーケットへの絨毯爆撃も横行している。私にも絶えずこうした依頼が届くが、マーケティングスパムにノーと言うのは簡単だ。インフルエンサーを通じてより標的を絞ったアウトリーチを試みるのが最近のトレンドだが、そうでないものも継続していて、廃れる気配はない。150ドルもらって手早く適当な仕事をする人はいつでも見つかるのだ。

──インフルエンサーとのつきあいについて、ブランドに理解してほしいことは?

私にとって最大の課題は、私と私のコンテンツを評価してくれるブランドを見つけることだ。私がウェブサイトやインスタグラム(Instagram)をはじめたのは、ビジネスのためではなかった。自然にそうなっただけのことで、これは多くのインフルエンサーにもいえる。徐々にオーディエンスを構築し、どうすればオーディエンスをより手の込んだコンテンツを作る手段に転化できるかを学んできた。決して楽な仕事ではない。

ブランドは経験とオーディエンスに対価を払っているのだ。このことを理解しているブランドや、広報担当者もいる。誰もが低賃金で働きすぎなので、わずかなコストで即座に結果を得ようとする気持ちもわかる。しかし、誰もがお互いの作品をもう少し尊重しあい、お互いの目標に耳を傾けるようになれば、協働はもっとうまくいくだろう。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)