スターバックス は、なぜ人間労働を絶対に排除しないのか?

人間関係の摩擦はリテーラー最大の敵だが、その排除にはいくつかの代償が伴う。

コーヒーショップ界の巨人、スターバックス(Starbucks)が努めているのが、その両者間の絶妙なバランスだ。同社はリテールエクスペリエンスを時代に合わせて変え、必要な手順の最大限の削減を試みている。だが、その最終目標は人的交流の完全排除ではない――むしろ、その反対を目指している。

「そういう小さなやり取りが顧客のリピートを生む」と、スターバックスのプレジデント兼CEOケヴィン・ジョンソン氏は、2020年1月13日月曜の午前中、ニューヨークで毎年開催されるナショナル・リテール・フェデレーション(National Retail Federation)のカンファレンスで語った。同氏はファイヤーサイドチャットの談話のなかで、人的交流に対する同社の基本的姿勢について説明した。

スターバックス・ピックアップ

スターバックスの最近の動きを見れば、ヒューマンレス化を多少なりとも考えているのは明らかだ。昨年11月には、スターバックス・ピックアップ(Starbucks Pickup)という、モバイルオーダーのさらなる迅速化を図る新たなコンセプトの店舗をオープンした。 ユーザーは注文と支払いをあらかじめ電話で済ませ、従来よりもかなり小型のピックアップ専用店に行き、用意されている商品を受け取る、という仕組みだ。

ジョンソン氏はしかし、モバイルオーダーについても人的交流という基本は変わらないとし、意図はあくまで「店舗における人と人との触れあい、という経験の構築に努めること」にあると語った。ピックアップ店ではキャッシャーの必要性は減るだろうが、それでも従業員を置き、彼らに顧客を出迎えさせるという。

スターバックスが投資している革新はピックアップ以外にもある。AIプログラム、ディープ・ブリュー(Deep Brew)もそのひとつで、目的はソフトウェアを活用した店舗業務のさらなる効率化の実現だとジョンソン氏はいう。たとえば、マシンラーニング(機械学習)を利用すれば、コーヒーの品質向上を促進できるし、自然言語処理を介してAIに顧客の注文を聞かせれば、キャッシャーが注文をコンピューターに入力する手間を省ける。AIはトラフィックをはじめとするデータの分析も行ない、各店舗に必要なバリスタの人数も予想する。「これでスケジューリングが劇的に平易になる」と、ジョンソン氏は語った。

従業員削減が目的ではない

とはいえ、こうした実験はいずれも、従業員の削減と非効率性の排除を目指してのものではない。むしろ「目的は人間が人間らしくいるための時間を増やす手助けをする方法を見つけること」であり、「バリスタに代わるロボット[を置くこと]ではない」という。

ジョンソン氏は自身の目に映る、深刻化しつつある人類の問題についても触れ、「孤独という伝染病の広まり」もそのひとつであり、「[人々が]モバイル機器に費やす時間の量」こそが「[その]原因のひとつ」だと指摘した。

だからこそ、よりモバイルにフォーカスした注文/受取プログラムの構築にふさわしい状況にあることは理解しているが、同時にそれが加速させかねない現実も危惧していると、ジョンソン氏は述べた。「人と人との繋がりを創造する機会を見つけること。それは我々が引き続き取り組んでいくべき共通テーマのひとつだ」。

人間による労働は不可欠

ジョンソン氏はさらに、スターバックスの新プログラムはすべて、同社のトランザクションを促進する人間労働は不可欠、という基本姿勢を重視するものになる、とも語った。コーヒーを手にするのに、顧客がより迅速な、より簡便な方法を求める場合もある――だがその一方で、それとはまた別の空気感を求めている場合もある。いずれにせよ、誰かしらは必ず店にいて、少なくとも「いらっしゃいませ」と声をかける点だけは変えないという。

「そういう、顧客を温かく迎え入れる環境の創出は、絶対に犠牲にしない」と、ジョンソン氏は断言した。

Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:SI Japan)