NYTのCEOはなぜ、 Facebook 批判の急先鋒となったか?

Facebookは近年、あらゆるところから集中砲火を浴びているが、なかでも最近のニューヨーク・タイムズ(The New York Times)のCEO、マーク・トンプソン氏の発言は遠慮がなく、批判も一貫している。

Facebookに対する不満を主張するパブリッシャーが増えているが、そのなかでもトンプソン氏の声の力は大きい。彼はジャーナリズムに携わる名高い組織を率いており、発言の影響力も強い。2018年6月にトンプソン氏が行ったスピーチでは、Facebook上のニュースにラベルを表示し、政治広告として扱うというポリシーに対し、「民主主義に対する脅迫だ」と語った。その数日後、トンプソン氏はこの議題に関して、パネルディスカッションを通じてFacebookのグローバルニュース部門のトップを務めるキャンベル・ブラウン氏と議論を交わし、良質なジャーナリズムの「敵」の思うツボだとFacebookを批判した(それに対してブラウン氏は、ニューヨーク・タイムズは透明性に対する意識が薄いと反論した)。そしてそのあと、トンプソン氏はカンヌでマーケターの目の前で話した際にも同じ話題に触れ、Facebookを「困った存在だ」と語った

ニューヨーク・タイムズやそのほかのパブリッシャーは、記事が政治関連のものだと見なされないように、Facebookへの予算投資を減らしている。ニューヨーク・タイムズのスポークスマンは、「透明性(の向上)に対するFacebookの取り組みには賛成だが、そのやり方にはうなずけない。現在はFacebookとの関わりを強めて、ニューヨーク・タイムズのような独自のジャーナリズムを認知して区別するソリューションを確立するために、積極的に取り組んでいるところだ」と語った。

ポリシーに対する反応

Facebookがこのポリシーを制定したのは、米大統領選挙においてロシアの介入を手助けしたとして、非難が集中したことを受けてのことだ。これによりパブリッシャーは、料金を支払って、政治的な内容を扱う記事をニュースフィードで表示させるには、その記事をFacebookの政治広告アーカイブに入れなくてはいけなくなったのだ。このポリシーを突きつけられたパブリッシャーは、ジャーナリズムが政治広告と混同視されてしまうことを懸念している。

ニューズ・コーポレーション(News Corp)のルパート・マードック氏をはじめ、報道企業のトップの多くが、パブリッシャーへのマネタイズ手法の提供が不十分であり、そのブラックボックス化したアルゴリズムは信頼性を欠いている、とFacebookを批判してきた。ニューズ・コーポレーションは、FacebookとGoogleが巨大化してオンライン広告市場を独占することで、パブリッシャーに被害が及んでいることに対し、長年に渡って注意喚起を促してきた。

このFacebookの記事広告のポリシーは金銭に関わる問題である一方で、これが大きな心配の種となっている理由は、独立系ジャーナリズムの本質的な部分に通じているためだ。そしてこれは、ニュース機関が国民の信頼を失う危機に直面していたり、大統領がプレスに対して極めて非友好的だったりすることにも通じている。世界中のジャーナリストやメディア幹部を代表する7つの組織が、Facebookのポリシーに反対する書面に署名した

2社の関係における変化

以前は、関係性はここまで悪くはなかった。ニューヨーク・タイムズも数年前までは、当時の一大プロジェクトであったFacebookのインスタント記事(Instant Articles)の立ち上げのために選ばれた数多くのパブリッシャーのひとつであり、プラットフォーム上のライブ動画制作の資金提供も受けていた。当時はトンプソン氏もインスタント記事の可能性について熱く語っていた。そのあと、ニューヨーク・タイムズはインスタント記事を捨て、Facebookのサブスクリプションへの取り組みにも参加せず、Facebook Watch(ウォッチ)や動画タブ向けのニュースセクションへの参画も見送った。ニューヨーク・タイムズは、ビジネス上の事由により、こうしたイニシアチブは適していなかったと語っている。

記事が政治広告として分類されてしまう問題に対し、トンプソン氏が声を大にして語ったことには、賛否両論がある。

「マークは業界のリーダーだ。現在彼は、Facebookに嫌気がさしているニュースのパブリッシャーに、大声で訴えかけている」と、ニューヨーク・タイムズやニューズ・コーポレーションを含む、2000社ほどの新聞社を代表するニュース・メディア・アライアンス(News Media Alliance)のCEOを務めるデビッド・チャーバン氏は語る。

「この言葉はニュース業界の現状の大部分を物語っている。そしておそらく、危機にさらされているのは(アメリカ)国内の、またはこのポリシーが不利に働くような国のニュースのパブリッシャーだろう」と、デジタルニュースの団体を代表するデジタル・コンテンツ・ネクスト(Digital Contents Next)でCEOを務めるジェーソン・キント氏は語る。

賛否両論のトンプソン氏

時は満ちている。ニューズ・コーポレーションの局の姿勢は、政治面ではニューヨーク・タイムズと必ずしも意見が合わないが、同社のトムソン氏はこう語る。「メディアや社会にとって、この問題は極めて重要だ。ルパートと私は、ほかのメディア幹部がようやくこの声に気づきはじめていることを嬉しく思う」。

なかにはニューヨーク・タイムズを日和見主義的な目で見ていて、もしも誰もがこぞって批判していなかったとしたら、トンプソン氏の主張はインパクトを与えられていただろうかと、疑問視する者もいる。「マークはビジネスマンだ」と、主要なニュース局の幹部は語る。「Facebookの弱さや、彼らが恐れを感じていることを知っている。そして、彼らを叩けば(ニューヨーク・タイムズが)得られるものがあると考えている」。

ニューヨーク・タイムズがそのほかのメディア企業と同様にFacebookを叩いたのは、同社がほかの企業ほどはFacebookに依存していないことが要因のひとつとして挙げられる。こうしたほかの企業は、文字通りビジネスをFacebook上に立ち上げ、得ている利益も、Facebookから受け取った、またはそのほかのテック系大企業からの補助金や訓練という形で受け取ったものが大きい。ニューヨーク・タイムズは読者との強い絆があり、収益の3分の2を定期購読料金が占めており、その割合はさらに増えている。そのほかのパブリッシャーは、さまざまなプラットフォームで多角的にオーディエンスを獲得しなければならない状況が続いているなか、トラフィックはFacebookが大部分を占めており、Watchでのニュース番組などの新しいプログラムへの参画を希望しているため、報復を恐れてプラットフォームを公に批判するようなことはしていない。

Facebookのリアクション

ブラウン氏は国外にいて、Facebookはこの記事に関するコメントを拒んだが、同社は、インスタント記事はいまだに多くのパブリッシャーにとって有益なものだと主張している(確かに、多くの小規模パブリッシャーにとってインスタント記事はおあつらえむきだ)。Facebookによると、いまもサブスクリプション用のツールの改善に取り組んでいるという。記事広告の問題に関しては、Facebookはパブリッシャーの批判を受けてポリシー内容を変更したが、そのポリシーからニュースを適用除外とするには至っていない。

Lucia Moses(原文 / 訳:Conyac