インスタ映え:SNSはビューティ商品開発をどう変えた?

スキンケアやメイクアップを大量に消費する人々は、オンラインでもその存在を拡大しつつある。彼らは今日のビューティブランドにとって、新プロダクトを発表する際の重要なターゲットオーディエンスとなっている。しかし、ソーシャルプラットフォーム上はブランドやインフルエンサーで溢れかえっており、この層にリーチするのは簡単ではない。

この対策として、ブランドたちは商品開発をオンライン上でのトレンドに合わせて進めるということを行っている。プロダクトの内容やパッケージのデザインをオンラインで注目を集めることを念頭として開発するのだ。

その結果、キラキラと光る効果、肌触りや粘り気、色といったオンライン上でのオーディエンスに訴えやすい性質を強調するプロダクトが増えている。スポイトやスポンジ、美顔パックなど、特殊なツールを使うプロダクトもまた人気だ。

ブランディングやプロダクトデザインのコンサルタントをするアルリデン(Aruliden)の共同ファウンダーでありCEOのリナ・アルー氏は「大きなトレンドとなっている。毎日の議題になっている」と語る。アルリデンはメイベリン(Maybelline)やキールズ(Kiehls’s)といった大手ブランドをクライアントとして抱えている。プロダクトを成功に導くためにしなければいけないことは、どんどんと増えている。これに対応するため、こういったブランドは数千ドルという単位でプロダクト開発の予算を増やしているという。

ファーサリの金粉入り「ローズ・ゴールド・エリクサー」

ファーサリの金粉入り「ローズ・ゴールド・エリクサー」

それぞれのブランドが異なるデザインやブランディングを行っているものの、このトレンドを無視できるブランドはいないようだ。

グロウレシピ(Glow Recipe)のような韓国系ビューティブランドやインターネットから誕生したファーサリ(Farsali)のようなブランドが、この戦略を活用している代表的なブランドだ。マックコスメティックス(MAC Cosmetics)やトゥーフェイス(Too Faced)のような歴史の長いブランドやアーティスティックな路線のブランドも同様の戦略を活用しつつある。ほかにも、グロッシアー(Glossier)やドランクエレファント(Drunk Elephant)のようなミニマリストな新しいブランドたちも参加している。メイベリン(Maybelline)やカバーガール(Covergirl)のような大手ブランドすらも動き出しているのだ。

「プロダクト自体が写真写りが良く、消費者たちが写真を撮りたくなるような、そんなインスタグラムな瞬間を作り出したいという大きな願望が存在している。インスタグラム上のこういった瞬間が積み重なることで、口コミで大きな広告のチャンスを生み出している」と、ブランディングエージェンシーのペンタグラム(Pentagram)のパートナーであるナターシャ・ジェン氏は言う。ペンタグラムはドクタージャルト(Dr.Jart+)やオリヴェーダ(Oliveda)などをクライアントとして抱えている。

アナスタシアビバリーヒルズによる、光を反射するハイライター

アナスタシアビバリーヒルズによる、光を反射するハイライター

ソーシャルメディアが消費者の購買行動に与える影響を考えると、こういった現象は驚きではない。2016年にはFacebookのIQレポートは、ビューティ関連の買い物のうち53%はソーシャルメディア上の専門家が何をシェアしたか、の影響を受けていると発表している。一方でブランド自身のソーシャルプラットフォーム上の投稿に影響された割合は44%である。

トレンドを決めるもの

もちろん、ビューティブランドたちは以前からパッケージのデザインにこだわってきた。しかし、現在ではそのアプローチが変わっているのだ。

アルー氏は「以前であれば、商品棚の上でインパクトを持つようなデザインは何か、という視点で開発していた。しかし、現在では、サムネイル画像でインパクトを持つようにデザインされている。このことは我々の判断を大きく変えている」という。

たとえば、以前であればプロダクトのパッケージは手触りが非常に重要な要素のひとつであった。現在では、光と色がより重要となっている。ツヤツヤしたガラス素材やプラスチック素材、鮮やかな色やキラキラ光る効果などが一般的だ。

金属の光沢やグラフィックなどでデコレーションされたパレット、また購入者がスマホを使ってワンショットで複数の質感や色のバリエーションをすべてレンズに収められるようなパレットが、大きな成功を得ている。タルト・コスメティックス(Tarte Cosmetics)やジジ・ハディッドとメイベリンのコラボレーションなどが、このフォーマットを活用している。

グロウレシピのファウンダーであるサラ・リー氏やクリスティーン・チャン氏が、ガラス製の容器を彼らのプロダクト「グロウ睡眠マスク」に採用したとき、意図的に氷のように見えるようにデザインしたという。

大手リテールのセフォラ(Sephora)はこの商品のローンチパートナーとして開発に関わっていた。昨年5月にデビューしたこのプロダクトだが、パッケージに関して「ソーシャルメディア向きのデザイン」という要求がセフォラから出ていたと、リー氏は言う。

グロウレシピの「ウォーターメロン・グロウスリーピングマスク」

グロウレシピの「ウォーターメロン・グロウスリーピングマスク」

韓国系ブランドである彼らにとっては、これはなじみのある戦略だった。特にスキンケア分野で知られているトニーモリー(Tonymoly)やトゥークールフォースクール(Too Cool for School)、そしてアルトゥルー(Ultru)といったブランドはどれも、アメリカの競合ブランドよりも派手で遊び心を持ったパッケージを開発している。

リー氏は言う。「マーケットは飽和している。そして、パッケージデザインはいま、とても美しいものになっている。あらゆるものが消費者の注意を引くために必死になっていて、ほかと差別化をするためのポイントが絶対に必要になっている」。

プロダクト配送サービスですら、オンラインでの注目を集めるために努力をしている。

月額制サービスであるバーチボックス(Birchbox)は、美しいデザインの箱にビューティ関連のプロダクトを詰めて配送するサービスで知られていた。しかし2017年にはさらにデザインを刷新している。新しいデザインでは、サーモンピンクのベースに「Yes!」といったポジティブな言葉が並べられており、受取人の名前の前には「我慢強い…(The Tenacious…)」や「賢い…(The Clever…)」といった形容詞が書き加えられている。これによってソーシャル上の言及が増えただけではなく、ブランドロイヤリティも高まったとクリエイティブ部門バイスプレジデントであるフラン・ガイタナロス氏は言う。

内側を外へと見せる

大事なのは外側のパッケージだけではない。グロウレシピのウォーターメロン・グロウスリーピングマスク(Watermelon Glow Sleeping Mask)はプロダクト自身がピンク色でジェルのような素材でできている。このようなデザインでなければ7回も売り切れになるといった高いパフォーマンスは達成できなかっただろう。

チャン氏は「韓国系ビューティブランドはインスタグラムに適している。というのも質感が独特で、プロダクト体験が非常に感覚的だからだ」と説明する。前述のウォーターメロン・マスクの画像や動画をオンライン上に投稿するたびに、フォロワーたちは熱狂し、ほかのポストよりも「いいね!」を多く集めるという。

グロウレシピで販売されている韓国系美顔マスク

グロウレシピで販売されている韓国系美顔マスク

こういった戦略は韓国系ビューティブランドを超えて広まりつつある。

グロッシアーもプロダクトの質感という点で適応してきている。クラウドペイント・ブラシは厚みを増し、ヘイロースコープ・ハイライターは粘度を高めている。マックコスメティックスやトゥーフェイスは「こんがり風」のプロダクトデザインを人気デザインとした。ブロンザーやギラギラと光るパウダーがぎっしりと詰まったアイシャドウパレットなどが例だ。ファーサリやドクタージャルトもスポイト、ミスト、マスクなどを使って、プロダクトの水気をアピールする戦略を展開している。

「ビューティ分野におけるこういった独特のアプローチのおかげで、ビジュアル的に注目を集めることができている。そのためスキンケアが洗面所で誰にも見られずに行う行為からソーシャル上でシェアするものへと変わったのだ」と、チャン氏は言う。

アラー氏やジェン氏のようなブランディングプロダクト関連のコンサルタントたちはプロダクトのパッケージだけにフォーカスするのではなく、現在ではプロダクトの中身にも関わりつつある。

「プロダクト開発の化学的な要素よりは、私たちが「goop(粘り気のある中身)」と呼ぶ部分に関わっている。内側に隠れているものを外へと引き出す手伝いをし、ブランドが語るストーリー全体をより感じられるものにしている」と、アラー氏は語った。

グロッシアーのプロダクト群

グロッシアーのプロダクト群

効果に関する疑問の声

こういったソーシャルメディア上でのアピールを強調することが、消費者に本当に利益になっているのか疑問を感じている人もいる。インターネット上の熱狂を生み出すために使われている成分は、必ずしも皮膚に良いとは限らないからだ。またブランドたちが時間をかけて作り上げた画像や動画で見せるキラびやかな効果は、必ずしも消費者自身が生み出せるものでなかったりする(そもそもその効果が重要でない、ということもある)。

ジェン氏は言う。「プロダクトという点で言うと、私たちは消費者にとって実際に何が良いものか、という視点を失いつつあると思う。いくらビューティ分野であっても、あまりにも表層的なものにとらわれて優先順位が変わってしまっているという奇妙な転換が起きている」。

リー氏とチャン氏はこの点で同意している。「インスタ映え」をするからといってパラベンや合成染料、フタル酸エステルは使わないと彼らは決めている。しかし、そんな事は気にしないブランドの方が多い。

「インスタグラム上で人気のビューティプロダクトのなかには、覚えやすいフレーズや楽しい動画や画像で人気になっているが、実際はプロダクトとしての性能は必ずしも高くないものが、たくさんある」と、リー氏は言う。

Jessica Schiffer (原文 / 訳:塚本 紺)