キリンに学ぶ、 Instagram 広告の「使い方」と「効果」:テレビと併用で効率アップ

「インスタ映え」が新語・流行語大賞に選ばれた2017年、全世界で月間アクティブアカウント数が8億を超えたInstagram(インスタグラム)は、マーケティング業界においても注目度が急速に高まった。日本国内でも2000万の月間アクティブアカウントを抱える同サービスはいまや、ファッションやアートへの感度が高い層だけでなく、ライト層も含む、さまざまな人に幅広くリーチできるメディアとなっている。

実際、ブランドマーケターたちによるInstagramの広告利用が増えてきた。2016年から「午後の紅茶」のクロスメディアキャンペーンを実施しているキリンビバレッジ株式会社でも、デジタル広告の媒体としてInstagramを積極的に利用。その結果、Instagram広告の効果による「飲用形成(購買に近い部分の意向形成)」が、テレビCMの12倍になったという。

「午後の紅茶」キャンペーンの成功要因として、フェイスブック ジャパン クライアントソリューションズ マネージャ リードの丸山祐子氏は、スマートフォン時代のデジタル広告におけるビジュアルの重要性を挙げる。「Instagram広告の大きな魅力となっているビジュアルは、テキストに比べ、情報の咀嚼に時間を要しない。特にスマートフォンなどのモバイル機器における情報消費スタイルとの親和性が高い」。

その一方、ブランドサイドはInstagramの有用性について認識はしているものの、「どう活用するか」については、まだ手探り状態なのも事実だ。キリンビバレッジ マーケティング本部 マーケティング部 企画担当 主任 木暮和樹氏も「キャンペーン実施以前、『特に若年層向けのキャンペーンで、Instagramは効果が高そう』という感触はあった。だが、具体的にお客様の購買行動のどの部分に効くかまではわからなかった」と話す。

キリンの木暮氏、フェイスブックの丸山氏への取材を通して、Instagram広告の使い方と効果について探る。

フェイスブックの丸山氏(左)とキリンビバレッジの木暮氏(右)

フェイスブックの丸山氏(左)とキリンビバレッジの木暮氏(右)

キリンの大きな転換点

キリンビバレッジでは以前より、Instagramをデジタル広告キャンペーンに使いたいという構想を持っていた。「特に若年層での利用が増えている点に着目していた」と、木暮氏は述べる。紅茶のカテゴリーは、10代から20代前半の若年層がメインターゲット。ここにピンポイントに刺さるメディアとして、Instagramに期待していたのだ。

かつて「午後の紅茶」のキャンペーンは、テレビCMが中心で、ブランド認知度を高めることに重点を置いていた。だが、キャンペーン全体において、若年層への訴求を考えたときに、「テレビCMが当たらないターゲットに当てていく」役割をデジタルに求めたと、木暮氏は振り返る。こうした考え方に基づくトータルなクロスメディアキャンペーンは、「午後の紅茶」では、2016年の「ティーガール」篇がはじめてだったという。

このキリンの転換点についてフェイスブックの丸山氏は、「大きな決意を感じた」と述懐する。なにしろ、広告予算の全体のうち、テレビへの予算が約30%。それ以外は全部デジタルに振り分け、Instagramへの予算は全体の約5.5%となった。

「紅茶飲料自体の市場が縮小しており、ほかの飲料カテゴリーから若年層を取り込むことが急務だった」と、キリンの木暮氏は述べる。「デジタルシフトは、いままでのやり方ではダメだという危機感の表れだ」。

2016年当時の「午後の紅茶」のテレビCM

2016年当時の「午後の紅茶」のテレビCM

「飲用形成」がCMの12倍

モデルで女優の西内まりや氏を起用した「ティーガール」篇では、Instagram向けのクリエイティブを3パターン用意。テレビCMの動画をそのまま使うパターンと、デジタル向けに最適化された動画クリエイティブを2パターン用意し、掲載面は通常のフィード広告を利用した。キャンペーン実施前の感触として、「Instagramは効果があるだろうとは思っていたが、具体的にお客様の購買行動のどの部分に効くかまでは予見できなかった」と、木暮氏は述べる。

しかし、キャンペーン後に実施された独自調査から、より購買に近い部分に効果が現れたことがわかった。カンター(Kantar)による、そのクロスメディア調査の対象は、関東在住の20〜34歳の女性。その結果、Instagram広告は飲用形成で、テレビCMの12倍の投資効率というスコアが出たのだ。

「Instagramは、どちらかというとブランディングに強いイメージだった。なので、新鮮な驚きがあった」。

ちなみに、認知形成については、テレビのスコアの方が高い。しかし、飲用形成やイメージ形成では、テレビよりもInstagramの方が高く、購買に近い部分で効果が出せることを検証できたのは意味があったと、木暮氏は語る。

「Instagram広告が飲用形成に効いたのは驚きだ」と木暮氏

「Instagram広告が飲用形成に効いたのは驚きだ」と木暮氏

「普段使いのメディア」

「調査を行ったカンターから、Instagramは『普段使いのメディア』だと総括してもらった」と、フェイスブックの丸山氏は補足する。Instagramはテレビとは異なり、ちょっとした休憩など日常的なスキマ時間について回るメディアだ。「たとえば移動中にInstagramで視聴した動画から購買意欲が高まり、最寄りのコンビニなどでの購買につながったのではないか」。

ほかのブランドでクロスメディア調査をしたときも、「もっとも信頼できる情報ソース」「何のツールで検索するか」といった項目で、Instagramは高いスコアを出しているという。こうした背景には、やはり「普段使いのメディア」という側面が大きいのだろう。

この調査でわかったことは、ユーザーがInstagramのコンテンツを求める気持ちだと、丸山氏は付け加える。Instagramは雑誌と同じで、リラックスしているとき、新しい情報が欲しいときに利用されているのだそうだ。

かつてInstagram広告は、エッジの立ったコスメやアパレル業界に利用されるイメージが強かった。だが、最近では「普段使い」という点で広がりを見せており、金融や旅行をはじめ、幅広い業種がトライし、成果を出しつつある。

ターゲットへの効率的なリーチ

2016年の結果を踏まえ、続く2017年のキャンペーンでは南阿蘇村を舞台に、女優の上白石萌歌(かみしらいしもか)氏を起用した女子高生のほろ苦い恋愛を描く「おちつけ、恋心。」篇を制作。そこで木暮氏は、2016年の調査結果を踏まえ、各媒体の特性に応じたクリエイティブを作り分けることが重要だと考えた。

「たとえば、いままではYouTube向けに15秒の動画CMを制作し、あわせてバンパー広告向けの6秒の動画素材を作る程度だった。だが、いまは、16:9の画角だけでなく、タテ型、スクエアなど、媒体に応じた作り分けがはじまっている。クロスメディアの検証結果をきっかけに知見を蓄積しているところだ」。

さらに、年齢・性別などのデモグラフィックをもとにしたターゲティングも実施。「2016年の結果でInstagramは、豊富な利用者データに基づく『人ベース』の高いターゲティング精度で、ターゲット内のGRP(延べ視聴率)では21.2%のシェアを占めた。(先述のとおり)Instagramはキャンペーンの予算シェアで全体の5.5%に過ぎないので、リーチ効率の面で非常に高い効果が検証できた」と木暮氏は語る。

この2回のキャンペーンを通じてキリンは、特に若年層をターゲットにした場合、テレビCM予算をデジタルに振り分けることに効果があることが知見として得られたと結果付ける。もちろん、認知については依然としてテレビCMに強みがあるのは事実だ。なので、どちらかに寄せるというより、テレビとデジタルの特性を生かし、コミュニケーションの目的によって、予算比率や出稿内容を決めていくのが重要なのだろう。

「メディアプランニングが今後、重要性を増していく」と、木暮氏は付け加えた。

 

Instagram広告の予算シェアは5.5%に対し、GRPシェアは21.2%(カンター調査)

 

「フィードメディア」の捉え方

Instagramに適したクリエイティブについて、木暮氏は「まだ試行錯誤の段階で、これだという確かな最適解には達していない」という。そのうえで、いくつかの仮説は明らかになってきたと話す。

「たとえば、テレビCMは15秒の枠をいかに使うかが重要で、デジタルに比べると途中での離脱が少ないと考えられる。つまり、デジタルの場合は、テレビとは違ったタイミング、表現で商品名、企業ロゴ、ブランド名を出していくことが重要だと考えている」。

キーメッセージの伝え方。これが、ひとつ目のポイントだ。

それに加えて丸山氏は、Instagramの場合、「フィードメディア」という媒体特性を考慮する必要があると述べる。「フィードメディアの場合、利用者がフィードをスクロールしていく合間に伝えたいメッセージを伝える必要がある。だから、動画の頭に商品パッケージを出す、伝えたいキーメッセージを出すといったことが重要だ。また、自分と関係ない動画だと思われた瞬間に、離脱される可能性もあることも考慮しなければならない」。

広告に注目を引きつけるための伝え方。これが、ふたつ目のポイントとなる。

これらの課題を解決するため、フェイスブックのクリエイティブチームでは、モバイルに最適化されたクリエイティブの指針を提案し、ブランド・代理店のクリエイティブ制作を支援する取り組みを行っているという。

「Instagram広告に取り組みたい広告主が増えてきた」と丸山氏

「Instagram広告に取り組みたい広告主が増えてきた」と丸山氏

進化するInstagram

丸山氏は今後、注力したいこととして、「お客様のサポートを含めた媒体の効果検証」というポイントを挙げた。「Instagramに取り組みたい広告主が増えてきた。マスとデジタルの広告予算の最適配分という観点からも、適切な効果測定方法に基づいて、ビジネスゴール達成につながる予算配分の提案に注力していきたい」。

木暮氏も、デジタルマーケティング全体での取組みとして、効果検証の重要性を挙げる。「キャンペーンごとに、デジタルとテレビの予算比率が変わってきている。知見を蓄積しつつ、ゆくゆくは、このキャンペーンではどの媒体に、どの程度予算を配分すればよいか、標準化されたモデルプランを作っていきたい」。

さらに丸山氏は、「デジタル広告のなかで、ビジュアルコミュニケーションの重要性はさらに高まっていく」と続ける。

「テキスト情報は、ビジュアルに比べて咀嚼に時間がかかる。従来のデスクトップ環境では検索して、テキストで情報を追い、意味を理解していくのが当たり前だったが、スマートフォンでの情報の消費を考えると、見て一瞬でわかるビジュアルに、コミュニケーションの手法がシフトしていく」。

また、フォーマットについても、全世界で毎日3億アカウントが利用するストーリーズに表示する「ストーリーズ広告」などのラインナップも充実してきている。木暮氏は、「普段見ているスマートフォンで、広告のスペースは限られている。その点、全画面で広告が表示されるストーリーズはインパクトがあるし、うまく活用していきたい」と、期待を述べた。

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Written by 阿部欽一
Photo by 渡部幸和