「 プランニングプロセス は、もはや消え失せた 」:あるエージェンシー幹部の告白

増えたチャネル(主にソーシャルとデジタルの台頭によるものだが)を埋めるために、より多くのマーケティングコンテンツが必要となり、結果、納期も予算も圧縮されるようになっている。ある独立系エージェンシーの共同設立者によると、これはエージェンシーが常態的に、より少ない予算で、より多くの仕事を、より短時間でこなさなければならないことを意味しているという。

匿名を条件に本音を語ってもらうDIGIDAYの「告白」シリーズ。本稿では、このスピード重視のおかげで、ブランドがプラニングプロセスを省き、エージェンシー向けのブリーフィングプロセスを削り、エージェンシーの制作過程に混乱を来している現状について、このエージェンシー共同設立者に語ってもらった。

以下、その告白の詳細だ。読みやすさを重視して編集してある。

──最近、エージェンシーの間で、ブランドがブリーフを提供しなくなったという話が出ているそうだが、それはどういうことなのか?

ブリーフの技術もブリーフの価値も、オムニチャネルマーケティングが急伸するただ中で消失してしまった。ソーシャルとデジタルの成長にともなって、チャネルが増えれば増えるほど、ブランドは明確なブリーフの必要性を避けて通るようになったと思う。これでは、どんなプロジェクトも、目的や成果物を手探りで決めるような、いわば「福笑い」の状態になってしまう。それはいたずらに時間を消費する、効率の悪いやり方だ。共通の拠り所がなければ、要件の変更や追加は避けられない。

──具体的な事例は?

訴求すべきオーディエンス、発信すべきメッセージ、設定すべき評価指標(KPI)、あるいは必要な成果物など、何ひとつ明確でないケースも珍しくない。ブランド側がこのような核となる情報を用意していなければ、責任というツケはエージェンシーに回される。だがエージェンシーの時間をより効果的に使うなら、それは与えられた条件のなかで行う創造的な作業にこそ向けられるべきだ。可能性はいくつもあるし、競争は激しいから、ほんとうに必要なものが分からない。だがそれは、ブランドが社内のマーケティングチームで答えを出すべきことだ。

──ブランドに期待することは?

ブランド社内のマーケティングチームが初期のプランニングにもう少し時間をかければ、エージェンシーからもっと多くのものを引き出せるだろう。彼らは焦点がはっきりしていない。無計画のままエージェンシーに来れば、エージェンシーは何をすべきか決めるだけの計画段階に、プロジェクトにつぎ込む全エネルギーの少なくとも30%を費やすことになる。ブリーフさえないところから、プランニングの作業すべてを引き受けるわけだから、何かしらの成果物を納品するゴールラインは遠ざかるばかりだ。

──ほかに何か、以前と異なるところはあるか?

参照すべき資料が何もないから、制作段階で困ったことになる。何度も打ち合わせはするけれども、後で参照する文書はひとつもない。クライアントにとっては、何の責任も問われないから、立場を翻すのも簡単だ。クライアント側の説明責任が欠落している。そしてほとんどのクライアントは、ブリーフのやり方ひとつ知らない。マーケティングで採用される人の大半は、この領域の訓練を受けていないのだ。

──エージェンシーの仕事への影響は?

エージェンシーがクライアントのためにブリーフを書くはめになるが、それは本来、エージェンシーの仕事ではない。それはクライアントがすべき唯一の仕事なのだが、エージェンシーは厳しい競争のなかで、案件の維持や新規獲得に汲々とするあまり、「いいだろう、クライアントの仕事も引き受けよう」となるわけだ。しかも、本来、立ち上げまでに8週間かかる仕事を4週間でやれと言われたりすると、あまりに忙しくてまっとうなブリーフを書く時間が取れないこともある。クライアントの言うなりにプランニングやブリーフィングをすっ飛ばせば、いざキャンペーンの制作が始まってから、彼らが根本的な要件を変更したいと言い出すのはもはや必然だ。彼らはブリーフの内容に説明責任を負っていないため、プロジェクト全体は彼らの気まぐれや思いつき次第だ。変更できない要素など、何ひとつない。

──なぜいま、こんなことが起きていると思うか?

彼らは結果を重視するあまり、オーディエンスの計画や分析はもとより、効果的なプランニングに必要な基本的要素をすべてまるごとすっ飛ばす。消費者の行動もテクノロジーもあっという間に変容するから、可能なかぎり、どこでもマーケティングをやりたがる。おかげで、プランニングのプロセスは事実上、完全に消失した。目に見えない仕事は切り捨てられる。注力すべきチャネルも分かっていない。自分たちの製品や製品技術は理解していても、顧客や顧客の行動には無理解だ。一方で、納期は短くなるばかり。単純にブリーフがないという話ではなく、彼らはプランニングプロセスに対する余裕も時間も敬意も持っていない。我々にブリーフを押しつけるなら、その作業にかかる時間と報酬をよこせと言いたい。

──この話をクライアントにするつもりはあるか?

正直なところ、するつもりはない。不本意だが黙って従う。「なるほど、これがこの人々の仕事の流儀なのだ」と思うだけ。そして彼らの無計画に加担すべきか否かを決断する。実のところ、組織のあり方は変わらない。無秩序はたいてい、上から下に向かう。それを変えることはできない。クライアントの社内にはしばしば内輪もめがあって、それぞれの陣営が正反対の情報をよこすことも珍しくない。そうなると、誰が政治力を握り、誰の言葉に耳を傾けるべきか、探り出すのはこちらの仕事になる。日程表も時間割もないから、締め切りは恣意的に動かされる。プランニングプロセスに対する敬意も、プランニングプロセスの役割に対する敬意もない。結果的に、エージェンシーの仕事はますます困難になる。

Kristina Monllos(原文 / 訳:英じゅんこ)