アポイントメントビューイング、「動画」戦略の新しい視点:ニュースフィード視聴を超えて

いまから約3年前の2015年8月、CNNはグレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story)をローンチした。これはFacebookのニュースフィードにおけるニュース動画シリーズだ。ナウディス(NowThis)やBuzzFeedのテイスティー(Tasty)といった新しいスタイルの動画が、Facebookのニュースフィード形式にうまく対応することで驚異的な再生回数を稼いでいたなかでのローンチだった。

そして現在、パブリッシャーたちは戦略を調整している。ニュースフィードにおけるインプレッション数よりも、視聴者たちが何度も繰り返しコンテンツに戻ってきてくれることを目標としている。グレート・ビッグ・ストーリーにとっては、毎回のエピソードのトーンが一貫しており、コンテンツの流れが常に予期できることが重要となっている。それによって視聴者たちは自分が何を見ているのかをきちんと予測できるからだ。昨年は、犯罪捜査シリーズである「ビニース・ザ・スキン(Beneath The Skin)」を、CNNgo、CNN.comそしてYouTubeといったプラットフォームにおいて、すべてのエピソードを一度に配信した。シリーズ形式のコンテンツは、その方がより消費されると考えてのことだ。

トラフィックを自ら構築

テレビを視聴する場合、人々は一定の時間を確保(アポイントメント)して見る。このアポイントメントビューイングへの転換がパブリッシャーによる動画でも起きていると言える。多くのパブリッシャーたちは動画に彼らの将来があると考えている。しかし、彼らの多くにとって動画は、大きな収益はもたらさないだろう。というのもソーシャルメディアのフィードにおいては、数秒以上の注意をオーディエンスから得ることは難しいからだ。しかし、テレビのような形式のコンテンツを作ることは、消費者たちのロイヤルティを育むことになる。

現在、動画が配信されるプラットフォーム数は歴史上もっとも多くなっている。パブリッシャーたちはOTTプラットフォームに群がっている状態だ。DIGIDAYリサーチの調査によると、メディア業界のエグゼクティブのうち81%はOTTコンテンツを増やそうとしているという。

こういったプラットフォームの多さは、チャンスであると同時にプレッシャーでもある。ほぼすべての番組がオンデマンドで視聴可能になっており、オーディエンスが好きなときに動画を見ることができると、ガーションメディア(GershonMedia)のプレジデントであるバーナード・ガーション氏は指摘する。「これはまた『自分でトラフィックを構築する』ことへの転換と言えるだろう。そして消費者にコンテンツを何度も見てもらうにはどうしたらいいのか、というのが問題だ」。

長く続く学習の途中

新しいシリーズにとって、視聴者のリピートは広告主に対するアピールとして非常に重要だ。「再訪問者は、コンテンツが健全であることの非常に良い指標となる」と、ザ・メディア・キッチン(The Media Kitchen)のプレジデントであるバリー・ローウェンソル氏は言う。「それによって自信を持って決断し、予算を増やすことにつながるかもしれない」。

動画のクオリティとプロモーションも重要な課題だ。オーディエンスたちがわざわざ時間を費やす価値があると判断するようなハイクオリティの動画は、コストもかかるうえに作るのが難しい。そして、ほとんどのデジタルパブリッシャーたちはFacebookにおいて、ニュースフィード用の短尺動画に最適化してきた。しかし、いまFacebookやYouTube Red(レッド)、ゴー90(Go90)といった動画バイヤーたちは長編コンテンツへ舵を切ろうとしている。

「パブリッシャーたちは長く続く学習の途中だ。(長尺の動画制作)は非常に違うスキルを要する。パブリッシャーの多くは予算が不足するだろう。YouTubeの世界は30分だけでは成功しない」と語ったのは、TV[R]EVのテレビ業界アナリストであるアラン・ウォーク氏だ。

テレビと同じコンテンツ

「これらのパブリッシャーにとっての問題は、彼らは動画コンテンツにおけるフランチャイズやブランドを作り上げられていないなかで、なぜリピーター視聴者が獲得できないのか、なぜ人気テレビ番組を作れないのか、と考えていることだ。でありながら、彼らのほとんどは、35秒や40秒のコンテンツを制作している。何十億回といった再生回数を求めていて、再生のほとんどがFacebookから来ているとしたら、大きな課題に直面していると言える」と、コンプレックス・メディア(Complex Media)のCEOであるリッチ・アントニエーロ氏は言う。

数年前、コンプレックスはリニア型のケーブルチャンネルのようにプログラム編成すると決めた。彼らのフォーカスは、それまでほかのパブリッシャーたちがしていなかった長編コンテンツの制作に据えられた。今日では、コンプレックスは毎週配信と毎日配信のものを合わせて33の番組を持っている。それぞれは平均で19分の長さを持っており、決まった時間に配信される。スパイシー・チキン・ウィングを食べながら行われるインタビュー番組である「ホット・ワンズ(Hot Ones)」、有名人と靴の買い物に行く「スニーカー・ショッピング(Sneaker Shopping)」といった番組は、それぞれ100エピソード以上が存在しており、YouTubeとコンプレックスの所有メディアにおいて合計で3億回もの再生回数を獲得している。その他のプラットフォームに関しては、若い男性のターゲットにオーディエンスをフォーカスし、注意深くプラットフォームを選んでいるようだ。

「大きな再生回数を持っているだけではなく、コンテンツにお金を支払ってくれるプラットフォームが複数存在していれば、広告主と話すときに非常に助けになる。しかも、ただ動画の最初にロゴが表示される、という短い広告ではなく、実際にコマーシャルを流すことができるわけだ。カメラに手が写っていて、少しカメラが動くだけ、といった短いコンテンツを制作して『これはテレビ番組と同じ』と主張することはできない」と、アントニエーロ氏は言う。

デジタルネイティブ世代

コンテンツを制作すると、次にそれがオーディエンスによってどれくらい発見されるか、という問題が出て来る。パブリッシャーたちはOTTプラットフォームにおいて、自分たちの番組をプロモーションするためにお金を支払っている。それによってオーディエンスたちが番組を見つけられるようにするためだ。しかし、競争相手もたくさん存在している。Netflixは今年、単独で700の新しい映画や番組を制作する。典型的なテレビネットワークは1年に15から20ほどの新しい番組しか作らないのとは対照的だ。

「電子コンテンツに対してテレビ番組表のようなものを作ることは行われていない。何が存在しているのか、すべてを確認する方法は存在していないのだ。デジタルネイティブ世代は財布の紐が堅い。ハイクオリティのコンテンツを提供することで、デジタルネイティブ世代にリーチして、中規模なスケールに到達することはできるだろう。しかし、彼らが非常に大きなビジネスへとつながることはないだろう」と、ガーション氏は言った。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)