テキサス州の広告代理店は、いかに職場を再開したか?:「社会的責任を強調している」

テキサス州に本拠を置くアーム・キャンディー(Arm Candy)が5月末に、2カ月以上前に閉鎖していたオフィスを再開した。独立系メディアエージェンシーの同社は7人の従業員を抱えているが、再びオフィスで勤務するかどうかの選択は従業員に任せている。再開した当日にオフィスに戻ってきた従業員は、7人中5人だった。

「ストレスがたまるこの時期に、オフィスに戻るという選択肢を与えることは、彼らの1日の過ごし方にポジティブな影響をもたらすだろう」と、アーム・キャンディーのCEO、ジョン・ロッズ氏はいう。「別の選択肢があり、オフィスに戻りたければそうすることもできるという状況は、人々が以前から求めているものだ。重要なのは従業員にここに来てもらうことではなく、どのような職場環境でも従業員が快適に過ごせるようにすることにある」。

米国では自宅待機命令が解除された州もあり、一部のエージェンシーは、従業員を安全な形でオフィスに戻す方法を模索している。だが、その際に考えるべきなのは、エージェンシーのオフィスがどの州にあるのかということだけではない。従業員が何人いるのか、エージェンシーが持株会社の一部なのかどうか、オフィスのある建物がエージェンシーの所有でない場合に、従業員をオフィスに戻すことを建物の所有者が許可するのかといったことも影響してくる。

大規模な企業から小規模のスタートアップまで、あらゆるエージェンシーがオフィスを再開すべきか、するならいつにすべきかを検討しているなかで、アーム・キャンディーはオフィスの再開を進めている。

「規模が小さく、独立系であるほうが困難は少ない」と、ロッズ氏はいう。「我々のほうが少しばかり柔軟に対応できる。全員の安全を確保するためのポリシーを策定し、実施するのは我々のほうが簡単だ。500人規模のエージェンシーを運営していれば、このレベルで何かを実行するのはもっと難しくなるだろう」。

オフィス再開に向けた対応策

オフィスを再開するにあたり、ロッズ氏は建物の所有者に掛け合って、追加費用を払うことなくスペースを拡大してもらった。アーム・キャンディーがその所有者のメディアをいくつか運営しているからだ。おかげで、同社はデスクの配置を変更し、デスクとデスクの間を少なくとも6フィート(約1.8メートル)空けることができた。また、床面積9500平方フィート(約880平方メートル)のフロアのうち1000平方フィート(約93平方メートル)を占める同社のオフィスの壁を広げ、マスク、手指消毒剤、消毒用タオルを置くスペースを設けた。さらに今後は、壁側に向けて配置した各デスクのあいだに、アクリル仕切り板を設置する予定だという。

アーム・キャンディーが消耗品やアクリル仕切り版のために費やした金額は、従業員1人あたり200~300ドル(約2万1500円~3万2300円)だった(同社はいま、アクリル仕切り板が届くのを待っているところだ)。すべて合わせると、オフィスの再開準備に費やした金額は2000ドル(約21万5000円)強となる。だが、これだけのコストをかける価値があるとロッズ氏はいう。人間同士の直接的なやり取りが、より良い仕事をしたり、ワークライフバランスを向上させたりするのに役立つと信じているからだ。「(広告で)重要なのは、人間の行動を理解し、人々が互いにどのように影響を与え合うのかを知ることだ。全員がリモートで仕事をしていては、次の優れたアイデアを生み出すような本当に深い対話や議論に加わるのは困難になる」と、ロッズ氏は語った。

従業員は、デスクに座っているあいだにマスクをする必要はないが、デスクから立ち上がるときにはマスクを着用しなければならない。また、会議室の利用は4名までに制限され、本当に必要な場合にのみ利用できる。キッチンに関しても、食べ終わった後の食器をシンクに置くのではなく、すぐに食器洗い機に入れることが義務づけられた。

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「当社が全員に強調しているのは、(オフィスにいるあいだは)自分の両親や祖父母と暮らしているかのように過ごすことだ」と、ロッズ氏はいう。「その理由の大半は、社会的責任にある。ウイルスに感染した状態で仕事に来れば、自分が曝されたものに、すべての人を曝すことになる」。

「対面のやりとりは非常に重要」

ロッズ氏によれば、同社のすべての従業員が、オフィスに戻ることに関心を示したという。そのなかには、1人暮らしをしていて再び人と交流できる機会を求めている人もいれば、家に小さな子供がいて仕事用のスペースがほしいと考えている人もいる。ロッズ氏は、従業員の半数がオフィスに戻り、半数が今後も自宅で仕事をするようになると予想している。もし全員が常にオフィスで仕事をすることを希望した場合は、従業員を半分に分けて交代で出社する方式を採る可能性もあるという。

ただし、オフィスが再開されても、クライアントとの打ち合わせは今後もオンラインで行われるだろう。また、部外者の訪問を禁じるポリシーも定める予定だ。

オフィスの再開は、従業員の士気を高めるだけでなく、コミュニケーションの促進にも役立つとロッズ氏は話す。「(対面での)コミュニケーションは、依然として非常に重要なものだ。オンラインでコミュニケーションをすれば、相手に話が伝わるまで時間がかかる。また、今後新たなチームメンバーを採用する可能性もあるが、オンラインでは研修が困難になるだろう。バーチャル環境では、ほかの従業員がどのように仕事をしているのかを知ったり、一緒に仕事をしていると感じたりすることは難しい」。

市場全体を見ると「慎重な姿勢」

市場全体を見渡せば、ほとんどのエージェンシーは「オフィスに戻ることに対して慎重な姿勢」を取っていると、アメリカ広告業協会(4A’s)でタレント、エクイティ、およびインクルージョン部門のエグゼクティブバイスプレジデントを務めるサイモン・フェンウィック氏は米DIGIDAYに対して語っている。また、オフィスを再開する時期や方法はエージェンシーや市場によって変わってくるが、ほとんどのエージェンシーは再開後のオフィスに戻ってくるかどうかの判断を従業員に任せるだろうと、エージェンシー・シェルパ(Agency Sherpa)の創業者で、4A’sの元プレジデントであるナンシー・ヒル氏は述べている。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)