「サブスクリプションの概念に、企業は囚われ過ぎている」:ダラーシェーブクラブのマイケル・デュビンCEO

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月額1ドルで髭剃りの替刃を提供するスタートアップ、ダラーシェイブクラブ(Dollar Shave Club)。同社のCEO、マイケル・デュビン氏は、替刃を購入する体験を面白おかしく撮影した動画を8年前に投稿して以来、大きな成長を遂げた。

ダラーシェイブクラブは、定期お届けの条件に合意した顧客に替刃をより安価に提供することで、サブスクリプションのモデルを通じた規模拡大にはじめて成功したダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)スタートアップのひとつとなり、2016年に顧客数は300万人に達した。さらに、企業からの注目を集めた最初のD2Cブランドのひとつでもあった。同2016年、ダラーシェイブクラブはユニリーバ(Unilever)に10億ドル(約1140億円)で買収された。設立時の資金調達総額は1億6300万ドル(約185億円)であり、ベンチャーキャピタルから支援を受けたデジタルブランドとしては、もっとも大きく成長遂げたブランドのひとつである。

2019年4月現在、デュビン氏と彼の会社はユニリーバの消費財部門に属しているが、親会社とは一線を画し、当時と変わらないユニークさを保っていると、デュビン氏は強調する。こうした独立性は、ダラーシェイブクラブの役員を含めて、ユニリーバとの関係性を「デザインしたもの(the design)」と表現しており、契約締結の段階における決めごとだという。デュビン氏いわく、これこそがさらなる進化を遂げるうえで必要な、独立している感覚をもたらすものであった。この変革はいまも2社間で実践されており、ユニリーバによると、ダラーシェイブクラブは2018年に2桁台を超える成長を遂げたという。また、買収後のサブスクライバー数の伸びは低調な一方、ダラーシェイブクラブは2019年4月現在で400万人のサブスクライバーがいる。

ダラーシェイブクラブの成功は、サブスクリプションのカテゴリにおいて象徴的であり、2011年の設立後から認知度を高めている。デュビン氏は、替刃を超えた、男性向けの本格派ライフスタイルブランドとしての成長に大きな自信を見せる。米DIGIDAYは、デュビン氏に今後のブランド成長の戦略について話を聞いた。

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――ダラーシェイブクラブは、サブスクリプションのモデルで構築されたオンラインファーストのブランドとしてはかなり初期の例だが、顧客データがビジネスに与えた影響は?

顧客それぞれに適した商品の提供や商品のおすすめができるように、顧客のことはできる限り知りたい。会員それぞれの会員プロフィールを作っている。それには年齢や、身だしなみや、自身のケアに関する心配事に関する質問も含まれる。我々が商品のおすすめをしたり、商品を開発するプロセスにおいても、抜け毛や加齢について心配ごとはあるか、などのあらゆる情報が非常に役に立つ。この先12カ月で、この会員プロフィールは、我々の消費者に携わる課題の大部分を担うことになるだろう。

――顧客は商品を1回限りという形でも購入することができる。これがダラーシェイブクラブのように、サブスクライバー数をできるだけ増やしたい会社にとって意味することは?

サブスクリプションを最大限増やすことが究極の目標だと主張するつもりはない。我々の目標は、男性の心や身体のケアを手助けして、個人としてベストな状態に導くことだ。多くの会社がサブスクリプションという概念にとらわれ過ぎている。これは彼らが、利益が確実に続くという概念を愛しているからだ。陳腐に聞こえるかも知れないが、究極的には「サブスクリプションを実施することで顧客の体験を向上できているか?」を、常に心がけなければならない。

その明らかな例はストリーミング動画だ。毎月わざわざサインインして、その月のNetflix(ネットフリックス)のサブスクリプションの手続きをしたくなどないだろう。自動的にやってほしいはずだ。

また、浴室内で使う、自分の見た目やニオイ、そして感情を最適に保ってくれるような商品に対しても、我々は同じ考えを持っている。人は気に入ったものがどれかが分かってしまえば、そこには理由など必要ない。男性は気に入ったものへのこだわりが非常に強い。だから店に戻ってそれらの商品を再注文するに違いない。(顧客を掴むうえでは)多くの障壁がある。店の陳列棚にはあまりにもぎっしりと商品が詰め込まれているし、店員は顧客のことをまったく知るよしもない。お気に入りの商品を切らしてしまうことがないよう、(商品が)自動的に届けられたら最高だろう。

――では、既存の顧客とさらに密接な関係を築くことがゴールなのか?

我々の今後の戦略としては、実際の商品の導入方法が大きな部分を占めるだろう。新しい商品を見つけてもらえるような場所を与えることで、既存の会員とさらに関係性を深めたいと考えている。我々にとって自動販売機ともいえるリテールは、これを実践するうえでの最初の取り組みだ。現在3カ所あるが、来年あたりにかけて全米に広げていきたいと考えている。

――ダラーシェイブクラブの社内で制作するコンテンツは、ブランドとともにどのように進化してきたか?

我々のウェブサイトにはオリジナルのコンテンツがある。これはエンゲージメントの向上と、社会問題、身だしなみやパーソナルケアの問題など、さまざまな話題を男性の顧客に提供するための場所だ。我々には、男性のライフスタイルを扱うメルマガジン(Mel Magazine)があるが、これは独自の路線で運用している。1カ月あたりの読者は250万人で、先日紙媒体雑誌の初刊をリリースしたばかりだ。これは、心のスキ間を埋める、男性向けのライフスタイルのプラットフォームだ。ダラーシェイブクラブは、商品とコンテンツを取り扱う会社だ。

――ウェブサイトのコンテンツと雑誌はどのように差別化しているか?

我々にはダラーシェイブクラブのオリジナルコンテンツがあり、さらにメルがあるが、メルは編集面で独立しており、ダラーシェイブクラブの広告も一切載せていない。我々は長期的な目線で考えている。日々素晴らしいコンテンツを生み出しているが、最近は我々のそうしたコンテンツを模倣するコンテンツプロデューサーを見かけるようになった。素晴らしいコンテンツを作り続けることで忠実なファンベースに繋がり、さらに続いていくだろう。

――メルマガジンでは男性と関わりのある社会問題にも触れている。たとえば、ある記事では「セラピストとの初回の面会での心得」に取り組んでいる。社会問題を取り上げるブランドが増えているように感じる。それについての考えは?

社会問題を取り上げるブランドについては問題を感じていない。ブランドがそのような選択をしたまでだ。ただ、一度そこに足を踏み入れたあとは、もとに戻ることはできない。ブランドが好む、好まないに関わらず、さまざまな話題についての議論に引き込まれ、考えを聞かれることになるだろう。それはそれで良いことだとは思うが。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:Conyac