ブロックチェーン ブームが生んだ、新興アドテク企業の弊害:「歩くためにヘルメットを買うようなもの」

アドテクは、新しいトレンドに飛びつかずにはいられない。ビッグデータもそうだったし、近頃は、ブロックチェーンが最新の流行だ。デジタル広告のサプライチェーンに適用してプロセスをもっと透明化できる仕組みについて、たとえ正確には理解していなくても、広告主やパブリッシャーは関心を抱いているため、派手なデッキやコンセプトを披露するベンダーの零細企業が出現している。だが、例によって問題がある。現時点では現実離れしたことが往々にして約束されているのだ。

洗練されたどのブロックチェーン事業案でも、4社以上の新興企業が、提供できるものについて、ほとんど中身がない主張を高らかに行っている。あるいは、新規仮想通貨公開(ICO)での仮想通貨購入を人々に手当たり次第求めているけれど、有望な製品が現れる兆候はないかのどちらかだ。

「有望な製品を大規模に備えている者はまだいない。現行のブロックチェーン業者の95%は、1年半以内か、おそらくもっと短期間に破綻すると思う」とアドテク企業、ロンドン・メディア・エクスチェンジ(London Media Exchange)のCEOであるダン・ウィルソン氏は語る。

いまだ完全に理解不足

パブリッシャーは興味深いコンセプトだと思うかもしれないが、そのほとんどは、投資を保証するには時期尚早だ。「存在しない問題を生み出す技術も大量にある。いまのところは、歩くためにヘルメットを買うようなものだ」と、あるパブリッシャーの幹部は指摘する。

過剰な宣伝とブロックチェーンの可能性への関心に促されて、エージェンシーは時流に乗り、ブロックチェーンの理論を実際にどう適用できるかというテーマで、イベントが最近相次いで開催されてきた。だが、イベント参加者にとって、少なくとも広告面で、ブロックチェーン技術が理論の段階を越えられる前に進むべき道があるのは明らかだ。

「こうしたイベントでは、ブロックチェーンについて長々と話し合われてきたが、実際に何をもたらし、どういう仕組みになるのかという点については、まだ完全に理解不足のようだ」と、フリーランスのデジタルコンサルタント、ジュリア・スミス氏はいう。

この数年間に、デジタル広告取引は透明性が薄れ、広告主とパブリッシャーの両方にとって、ますます信用できないものになってきた。それが理由で、台帳の役目を果たして、すべての取引を暗号化して有効にするブロックチェーン技術は、メディアにおける真の問題を解決する非常に魅力的な提案だと称賛されてきた。長年批判されてきた、プログラマティック広告取引のエコシステムの不透明性が解消されるだろう、といった具合だ。

人々を遠ざける理由

情報筋によると、そうした理解不足につけ込んでいる企業もあるという。アドテクにはよくある話だ。自社サービスに対するパブリッシャーと広告主からの投資を最大化したいアドテク企業にとって、デジタル広告のプログラマティック売買の仕組みが複雑だと強調するのは、かつては便利な戦略だった。いまは、パブリッシャーと広告主が、サプライチェーンへの管理の手を強め、何を問うべきか理解している。だが、情報筋によると、ブロックチェーンもこれと似たようなパターンを示しつつあるという。プロトコルや先例、基準がまだないと、ややこしい状況になりやすいのだ。

特定の日和見主義者が、ブロックチェーンへの関心を背景に手っ取り早く儲けようとして、大騒ぎしているだけではない。スミス氏に言わせれば、ブロックチェーンの背後にある通貨というか、ブロックチェーン自体の前提をめぐって、答えが出ていないもうひとつの大きな疑問があるらしい。取引の記録を可能にして透明性をもたらすという、ブロックチェーンの基本的な前提は、おおむね歓迎されているが、暗号通貨とのつながりが一部の人々を遠ざけている。

「パブリッシャーと広告主が懸念しているのは、ブロックチェーンを利用して取引するには、通貨が暗号通貨でなければならないという点だ。ビットコインに投資したので、私はこの通貨の乱高下を直に目にしてきた。そのせいで業界はナーバスになり、本格的に採用するのを控えている」と、スミス氏は語る。

問うべき正しい質問

とはいえ、パブリッシャーと広告主の受信トレーは、ブロックチェーン関連の新興企業による宣伝があふれる一方だが、近い将来に、そうした動きが下火になることはなさそうだ。なにしろ、いまのところは、ブロックチェーンの話題でもちきりだ。となると、技術用語に圧倒されずに、問うべき正しい質問を知ることがカギになる。

ニューズUK(News UK)傘下の動画広告企業アンルーリー(Unruly)でプログラマティック責任者を務めるポール・ギブンズ氏は、次のように語る。「まず、ブロックチェーン関連のアドテク企業がビジネス上のどんな問題を解決してくれるのかを問おう。それから、同じ分野のほかの顧客でうまくいった一連の例と、公開または非公開の台帳に情報が保存されるのかどうかを、確認したいと言おう」。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)