「 UUUM の創業で、クリエイターの『生息帯』は作れた」:同社代表取締役CEO 鎌田和樹

ユーチューバーなど個人のクリエイターにおける、本来の価値や強みが、広くマーケターにも認知されつつある。

MCN(マルチ・チャンネル・ネットワーク)として、右肩上がりの成長を続けているUUUM(ウーム)。HIKAKINやはじめしゃちょーなど、人気クリエイターが多数所属する企業として、その影響力は年々大きくなってきた。7月12日に発表された決算発表によると、2019年5月期通期の連結売上高は前年比約168%の成長を果たしている。世界で見ても、現在MCNとして上場している企業はイギリスのブレイブ・バイソン(Brave Bison)と中国のルーン・ホールディングス(Ruhnn Holdings)、そして日本のUUUMと数えるほどしかない。

「創業当時は我々も、(案件獲得のため)飛び込み営業をする必要があった。だがいまは、これだけインバウンドで問い合わせがある会社は、ほかにないと思う。それはこの何年かで、動画クリエイターをはじめとしたインフルエンサーの存在感が高まったことの表れだろう」。こう語るのは、株式会社UUUM代表取締役CEOの鎌田和樹氏だ。2013年の創業から6年、広告・マーケティング業界において、個人クリエイターの役割はどう変化したのか、そして同社はなぜここまで躍進できたのかを聞いた。

――この6年で、ユーチューバーをはじめ、個人クリエイターの地位は劇的に向上した。広告主はいま、彼らをどんな存在と捉えているか?

以前は、CPIやCPA、CPCの話などが中心で、その施策が直接的にどれだけ売り上げや利益に貢献できるか、そこから話をはじめる広告主が多かった。しかし最近は、かつて東芝がテレビアニメ『サザエさん』のスポンサーを務めていたように、販売促進だけでなく「中長期的なブランディングのためのコンテンツ」を作って欲しいという要望が増えた。

また、動画クリエイターを単なる広告媒体ではなく、消費者に寄り添った「パートナー」として捉える考え方も浸透している。動画クリエイターがクライアントの商品に対して、忌憚のないメッセージを発信しても、(広告を切られることなく)その意見を商品開発に活かしたりする企業もあるほどだ。以前は、スポンサードされたコンテンツは視聴されないという声もよく聞かれたが、いまでは企業と作るコンテンツの方が再生されるケースが増えている。

しかし、依頼があった広告主には、はじめに「インフルエンエンサーマーケティング」とは何か、リスクも含め説明をするようにしている。これは、創業時から変わらないことだ。

――前期比168%の成長など、上場以来拡大を続けている。その成功の理由は、どこにあると思うか?

要因はいくつか考えられる。そのなかでも、国内の動画広告市場が成長時期にあるなか、トップクリエイターをいちはやく抱えることができたことが大きいだろう。これを可能にした背景にあるのが、クリエイターへの投資だ。

その分、我々のビジネスモデルは短期的には成功しにくいように見られるかもしれない。しかし、はやい時期から現在の薄利多売な方向にシフトしたおかげで、多くの優秀なクリエイターを抱えることができた。競合他社が、いまからこうしたスイッチングコストを背負えるかというと疑問だ。

また、既存の大手芸能事務所がインターネットに進出してきたとしても、我々が敵対視することはない。彼らが抱えているタレントは、活動の場がネットだけでなく、テレビからラジオ、さらにはリアルの場まで多岐に渡る。ネットにはネット独自の文化があるため、それでは専業で活動している動画クリエイターには勝てないだろう。

――ここ数年、YouTubeにおいてブランドセーフティを脅かす事件が多かった。UUUMでは、どのような対応を?

弊社では、所属するクリエイターが社会の構成員として求められる倫理観・価値観に従った良識ある行動を維持するためのガイドラインを制定した。そのガイドラインに沿って、年に2度、「クリエイター向けコンプライアンス研修」を実施している。

また、提供表記やSNSの正しい運用の仕方に関するガイドライン、制作コンテンツのチェックマニュアルも策定し、運用している。これはJIAA(日本インタラクティブ広告協会)に協力してもらい、少しずつチューニングしながら策定した。コンテンツに対する責任は、我々が創業した6年前に比べると大きくなっているため、徹底した管理体制を構築している。

もちろん、ミスが起きてしまうことも少なからずあるが、リーガルとレピュテーション、それぞれの観点でどのようなリスクがあるのかを想定しながら、それらを未然に防ぐにはどうしたらいいかを考えながら取り組んでいる。

――とはいえ、YouTube本体によるユーチューバーに対する規制が年々厳しくなっている。この状況下において、新規タレントの参入は難しくなっているのでは?

それはむしろ逆だ。以前であれば、あのHIKAKINでさえ、100万人の登録者を獲得するまで何年もかかっていた。しかしいまは、それを1年足らずで達成できてしまう。なぜなら、昔よりも見ているユーザーが圧倒的に増えたからだ。人気クリエイターは間違いなく生まれ易くなっていると思うし、成長スピードもはやくなっていると感じる。

その一方で、ユーザーの目も肥えはじめてきた。以前はYouTubeのアルゴリズムに最適化するように、有名なクリエイターと似たコンテンツを作れば再生回数が伸びるという状況があったことは確かだ。だが、いまは付け焼き刃のコンテンツを作っても通用しない。YouTubeをハックするためのテクニックよりも、HIKAKINでいうところのヒューマンビートボックスのように、自分の強みとなる特技や、コンテンツの企画力がより求められているのだ。

最近でいうと、ニッチなジャンルでオリジナリティを出せているクリエイターには、しっかりファンが付いている傾向がある。彼らは目先の再生回数ではなく、自分たちの好きなことを突き詰めることで、中長期的な支持を獲得しているのだ。

――広告を主体としたOTTサービスが、ブランディングの場として注目されはじめている。どんな印象を持っているか?

確かに、NetflixやAmazonのプライムビデオ(Prime Video)、国内だとAbemaTV(アベマティーヴィー)など、プロコンテンツを提供するOTTサービスは存在感を増している。しかし、正直インターネットのコンテンツはまだ、広告主がテレビに寄せているような期待を、引き受けられるほど成長しきれていない。なので、我々も尽力しなければならない。場合によっては、何らかの形で彼らと一緒にコンテンツを作れれば良いと思っている。

ただ、基本的に動画クリエイターが作るコンテンツはUGC(User Generated Contents)であり、その強みは365日、365回コンテンツを変更できるというスピード感だ。一方、OTTサービスで扱われるコンテンツはPGC(Professionally Generated Contents)であり、規模が大きい。仮に我々が彼らと協力したとしても、動画クリエイターの強みである「スピード感」を活かすことはできないだろう。もう少しライトな、UGCやPUGC(Professional User Generated Contents:UGCとPGCの中間にあるコンテンツ)のところであれば、力を発揮できると思う。

そもそも、我々が目指しているのは制作会社ではない。昨今、YouTubeをはじめとした写真や動画投稿プラットフォーム、そしてSNSの普及により、クリエイター個人の影響力が確実に高まっている。我々は、この「個人経済圏」の広がりのハブとなるようなポジションを目指している。

――その一環として、ピースオブケイクとの提携、レモネードの買収などがあるのか?

ふたつとも、長期的なビジネスを見据えての判断だ。創業から6年が過ぎて、「クリエイターの生息帯」は作れたという自負はあるし、今後それがシュリンクしていくこともないだろう。しかし、先述した、個人経済圏の広がりをサポートしていくためには、動画だけでなく、アウトプットの仕方をテキストや写真に多様化させていくことが必要だと考えている。

ピースオブケイクに関しては、まだ具体的な取り組みは決まっていないが、個人のクリエイターが活躍できる世界を目指すという同じ目標は共有できているので、何らかのシナジーは期待できるだろう。

レモネードの買収は、エクイティや投資対効果というよりも、純粋に「我々がやれないこと・やらないこと」をカバーしたいという思いがあった。クライアントによっては、YouTubeにこだわる必要はなく、インスタグラマーを活用した方が良い場合もある。そうした際に多角的な提案もできるようになった。

――最後に、個人のクリエイター活用を考えている広告主にアドバイスを

クリエイターを広告媒体として見るのではなく「コンテンツやストーリーを作る」という文脈で活用していただきたい。ROASやROIを最優先に重視したいのであれば、もちろん効果が良いときもあるが、選択肢はほかにもある。

Written by Kan Murakami