「放送広告購買の延長だ」:給油機のスクリーン広告枠を買う、広告主たちの狙い

ガソリンスタンドの給油機前にわざわざクルマを停めて、動画を観る人はいないだろう。ましてや広告を最後まで観る人となればなおさらだ。だが、タンクが満タンになるのを待っているあいだなら、給油機に搭載されているスクリーンの動画をチェックする確率はぐっと高くなる。ペプシコ(PepsiCo)や住宅ローン会社のクイックン・ローンズ(Quicken Loans)といった広告主や、スパーク・ファウンドリー(Spark Foundry)といったエージェンシーは、ガソリンスタンドにあるガスステーションTV(Gas Station TV:以下、GSTV)の画面を、看板というよりは、新たなテレビ画面として捉えている。

ペプシコがGSTVを動画戦略の一部と見なすようになったのは、その戦略の一環としてここ数年「動画にとらわれないアプローチ」を取っているからだと、ペプシコでメディアイノベーションおよびパートナーシップ部門のトップを務めるケイト・ブレイディ氏はいう。このアプローチ転換があったおかげで、マーケターのGSTVキャンペーンの効果を分析できた。「[GSTVには]その場から動けない、エンゲージしている視聴者がいるので、ほかの多くのデジタル動画や、場合によっては屋外広告よりも効果が高くなる」とブレイディ氏はいう。だが、具体的な成果については公表を控えたいとした。

同様にスパーク・ファウンドリーもこのところ、何をもって動画とするのかの評価を見直している。同社の最高投資責任者であるシェルビー・サヴィル氏によれば、2年半ほど前に、自宅で観るものも屋外で観るものも、すべての動画プラットフォームを動画チームの管轄にまとめたという。こうした動きにより、動画を取り巻く状況をより詳しく把握できるようになり、「従来のテレビやデジタル動画では必要なリーチを得られない場合に」テレビや動画キャンペーンのリーチ拡大の機会を見出しやすくなった。同社のクライアントのなかでGSTVを使って客足を伸ばしているのは、ファストフードのレストランや小売店が多いという。

今回、この記事のために取材した各社幹部は、GSTVの広告料金について明らかにしなかったが、クイックン・ローンズCMOのケーシー・ハービスは、GSTVの価格設定は「適正で、安定している」と述べた。

マーケティングの新しい機会

GSTVは、全米に2万3000箇所以上あるスクリーンに、インターネットを介して動画や広告をストリーミングしている。インターネットベースで配信しているので、場所によって表示する広告も変えられるため、広告主はGSTVを利用してテレビや動画キャンペーンのリーチや頻度を補えるのだ。さらにGSTVでは、マーケティングリサーチ会社のニールセン(Nielsen)などと連携し、ガソリンスタンドおよび併設されているコンビニのクレジットカードデータと、広告主のファーストパーティデータを付き合わせてブランド広告を正確に特定し、売り上げへの影響を測定できるようにしている。

従来のテレビからは視聴者離れが進み、Netflix(ネットフリックス)など広告の入らない番組を観る人が増えるなか、広告主は消費者にリーチするための15秒スポットの機会をあらゆる場所に求めている。かつてはビルボードやバス停の看板などと並ぶ、屋外広告のプラットフォームとして捉えられてきたGSTVだが、マーケターたちの目には新しい機会として映っているようだ。「テレビだけでは届いていない視聴者がいると感じた場合、これまでも複数のクライアントに、広告との接触回数拡大のためにGSTVを使ってはどうかと勧めてきた」と、サヴィル氏はいう。

GSTVは、テレビや動画の広告枠を毎年先行販売する市場であるアップフロントに参入し、減少したテレビ視聴者を補うチャンスを求めている広告バイヤーの関心に乗じようとしている。GSTVのCEO、シーン・マキャフリー氏の話では、同社は今年に入ってから広告主とのミーティングを20回以上行い、アップフロント予算を獲得すべく売り込んでいるという。その際の宣伝文句は、ニールセンの測定で、毎月米国内の成人9300万人(2018年の成人7500万人から増加している)にリーチできるという結果が出ているという点、そしてチェダー(Cheddar)やファーストメディア(First Media)、チャイブTV(Chive TV)などメディア企業の動画だけでなく、NFLやNHLといったスポーツリーグが提供する動画の合間に、テレビクオリティの音声付き広告がフルスクリーンで流れるという点だ。

「これは放送広告購買の延長」

広告主のテレビ・動画予算を引っ張ってこようとする際GSTVに問われるのが、人々はガソリンを入れているあいだ、本当にスクリーンを観ているのか、というところだ。そして、そこはどうやら本当に観られているらしい。GSTVは、視聴率を測定するために視線追跡調査と消費者調査を実施している。今年、同社が広告主やエージェンシーと共有した媒体資料には、86%の人がスクリーンを視聴しているとある。しかしペプシコでは、このGSTVのビューアビリティ(可視性)に対する疑問は問題視してきていなかったという。同社は、GSTVキャンペーンについてブランド想起と購入意向の調査を実施しており、その結果は「効果があると確信できるものだった」とブレイディ氏はしている。

アップフロントでの検討対象にはうまく入れないかと思われていたGSTVだが、テレビネットワークやデジタル動画プラットフォームと同様に検討に値する存在として認められてきている。「GSTVにはこれまでも、パートナーとしてアップフロントで年間投資を実施してきた」というのは、クイックン・ローンズCMOのケーシー・ハービス氏だ。彼はフィアット・クライスラー・オートモービルズ(Fiat Chrysler Automobiles)で自動車のマーケターをしていた頃から7年以上にわたり、GSTVの広告を購入している。そのフィアット・クライスラーではGSTVを、ケーブルネットワークだとみなしていたという。「GSTVを屋外広告として見たことはない。これは放送広告購買の延長だと考えている」とハービス氏は語った。

Tim Peterson (原文 / 訳:ガリレオ)