屋外広告 のプログラマティック化、実現するのはいつか?

デジタルビルボードが増えるなか、リアルタイムでブランドたちが購入する広告媒体に屋外広告が含まれつつある。デジタル広告に付いてくる性質を得ながらも、この分野におけるプログラマティックはまだ開発途中のレベルだ。

ビルボードのデジタル化の拡大、そして広告がそこへと大規模に流入していることで、屋外キャンペーンとオンラインキャンペーンのあいだに存在していたギャップがこれまでになく縮まっている。そんななか、広告バイヤーたちによって、屋外メディアは新しいスクリーンのひとつとして捉えられつつある。そして、オーナーたちにとっては、デジタルスクリーンの運営にはコストがかかるが、それをリクープするための方法としてプログラマティックに目を向けている形だ。

アドテク企業ヴィスター(Vistar)が、自社史上初の屋外広告取引と主張するプロダクトを2012年にローンチして以来、いくつかの企業による試みが失敗してきたが、ここに来てGoogleによるヨーロッパでのビルボード向けアドテク試験レポートも合わさり、オンライン広告と同レベルでの自動化された広告取引が屋外広告でも可能になってきている感覚が業界関係者のあいだでは強くなりつつある。

「デジタルはプログラマティックで売買されるべきだし、屋外メディアは世界中で急速にデジタル化を進めている。デジタルOOHの素晴らしいのは、悪い配置というのが存在しないことだ。ディスプレイで起きているようにボトム部分を獲得する競争というのが起きないだろう」と語るのは、メディアエージェンシーであるインフェクシャス・メディア(Infectious Media)のパートナーシップス・ディレクター、ダン・ラーデン氏だ。

グローバル社の買収事例

去る8月、ラジオ放送のグローバル(Global)が突然プライムサイト(Primesight)とアウトドア・プラス(Outdoor Plus)を買収した。英国における広告主たちのプログラマティック予算から、さらに利益を獲得するのが狙いだ。大手メディアオーナーふたつをひとつの法人として組み合わせることで、グローバルは英国における第3位の大手プレイヤーとなった。マーケットにおけるシェアは15%だ。

彼らがすでに提供しているDAXオーディオプラットフォームにおけるプログラマティック活用を屋外広告でも再現することができれば、オーディオと屋外のバイイングを1カ所で賄えるようにもなる。2014年にローンチして以来、彼らのオーディオ広告取引はサウンドクラウド(SoundCloud)、チューンイン(TuneIn)、そしてオーディオブーム(audioBoom)などにおける1億6000万人のリスナーにアクセス可能な世界最大のオーディオ広告取引となった。

グローバルが屋外広告に強く投資することで、この分野における標準化の動きも加速されるだろう。今後の計画についてのコメントをグローバルからはもらえなかったが、関係者によると「オーディオと屋外の両方の強みを活かす新しいチャンス」を探索するための新しいグローバル屋外部門がローンチされるという情報が入っている。こういった取り組みはO2やエネルギープロバイダーのE.ONといった企業向けに限定でテストされてきた。

しかし、プログラマティックバイイングが実現されることで、早くて今年中には、広告主たちのスケーラブルな機会となるかもしれないと、屋外メディアエージェンシーのキネティック(Kinetic)デジタル部門責任者エイドリアン・ウィッター氏は語った。

VIOOHが直面する困難

だが、JCデコー社(JCDecaux)を見ても分かるように、屋外広告でスケールを獲得するのは簡単ではない。

JCデコーは屋外プログラマティック取引プラットフォーム、ビュード・インプレッションズ・フォー・アウト・オブ・ホーム(Viewd Impressions for Out of Home:以下VIOOH)を抱えている。そこにおける在庫を英国、ヨーロッパ、そしてAPACで拡大するため、JCデコーは現在交渉を行っている。

VIOOHは6月に大々的にローンチされたわけだが、クリアー・チャンネル(Clear Channel)やエクステリオン(Exterion)といったライバルたちはまだ参加していない。グローバルが自社のプログラマティックを企んでいることで、プライムサイトやアウトドア・プラスの在庫が参加する可能性も低くなっている。そのためVIOOHがDSP経由でリアルタイム・オークション形式で販売できる量は限られたものとなっているのだ。

VIOOHが販売するものの多くは自動ギャランティードタイプのバイイングに近い。これはメディアオーナーと広告主のあいだにおいて、マニュアルで行われていたダイレクト取引を自動化するものだ。

「屋外業界にとってプログラマティック取引は、新しいモデルだ。プログラマティックバイヤーにとっても屋外を購入することは、新しいチャンネルとなっている。そのため、エージェンシーとメディアバイヤーたちがプログラマティック屋外の強みを理解すれば、広告セールスは指数関数的に成長することを予測している」と、VIOOHのCEOであるクリストフ・コンティ氏は語る。

リアルタイム入札という方式

屋外広告がプログラマティック分野へと移行しようとしているのは間違いない。しかし、実際は現状の取引の大部分は、自動ギャランティードタイプのバイイングであって、リアルタイムのオークションではない。

パブリッシャーたちにとって、オンラインディスプレイはボトム部分への競争になった。屋外広告が持つブランドセーフティといったもっとも良い性質をキープしたいと、屋外メディアオーナーたちは考えている。そこに、プログラマティックオークションの効率性を実現したいのだろう。バーガーキング(Burger King)が検討している、英国におけるダイナミック屋外広告は、その例だ。

しかし、これまでのところでは、限られた数の広告主による、限定的な期間における、限られたネットワークのスクリーン上で広告が表示されるに留まっている。これによって効率的に広告主が、スクリーン上にスポットを獲得することを保証できる。プログラマティックでメディアを購入することになると、スクリーンのスポットを獲得するためにはリアルタイムで入札しなければいけないからだ。

屋外広告をプログラマティックオークションにかけるメディアオーナーたちの数が増えるまでは、アドテクベンダーやエージェンシーたちは距離を保ったままだろう。

エージェンシーの数も少ない

大手DSPのほとんどは、屋外よりもテレビでのバイイングにテクノロジーを適応させている。これは中国やアメリカといったマーケットでのスケールがあるからだ。この点は取材をした広告バイヤー3人から確認された。

屋外広告のスケール欠如にひるまないエージェンシーたちも、ビデオやディスプレイを購入するのとは違う方法での購入に適応しなくてはいけない。異なる屋外スクリーンに表示させることができる広告の数は比較的小さいからだ。たとえばインフェクシャス・メディアは、デジタル屋外SSPに自社のバイイング技術を導入し、10月にはじめて屋外スクリーンでのプログラマティックキャンペーンを展開する。

「いまから2020年のあいだに、料金別のアクセスが場所に応じて導入されなければ、驚くだろう。プレミアムで、インパクトの大きいロケーションは事前に予約されるような手法で売られるはずだ。そして、残りは何らかのオークションの仕組みで、ゆっくりと広がっていくだろう。特定のロケーションにもとづいたパッケージをプライベートオークション形式で運用するものであったり、インパクトが比較的低い形式のパッケージをより幅広くオープンオークション形式で運用するものだったりだ」と、マインドシェアU.K.の最高プロダクト責任者であるルース・ゾーラー氏は語る。

グループ・エム(GroupM)の予測によると、英国での屋外広告は年比較で約2%のスピードで成長しているという。屋外広告関連のエグゼクティブのひとりが匿名を条件に語ってくれたのは、スペシャリストエージェンシーではなく、屋外広告を買うメディアエージェンシーの数が増えない限りは、ラジオのような従来のチャンネルよりも、成長のスピードは遅いままだろうとのことだ。彼の会社が持っている取引を守るために、彼は匿名を希望した。

Googleの動きにも注目

英国の屋外在庫の98%が広告主に提供されているオンラインマーケットプレイスであるビットポスター(Bitposter)の最高収益責任者であるクレーグ・マイトン氏もこの点について、次のように説明をした。

「データを使ってどのように屋外キャンペーンのプランニングをするかの判断材料にする、そして彼らとメディアオーナーとのあいだの既存のワークフローを自動化するためにデータを使う、こういったデータ活用のチャンスとして考えているエージェンシーたちとの出会いが増えてきている。そういった広告バイヤーたちはオンラインとオフラインを結びつけはじめており、オンラインキャンペーンの成果、特に屋外広告を同時に出した地域での成果も確認できるようになってきている。これらのキャンペーンの取引をマーケットが無理なく自動化された環境で行えるようになれば、オープンRTBやプライベートマーケットプレイスへと動きはじめるだろう」。

プログラマティック経由の屋外広告に、どれほどの支出が行われるか、Googleも影響力を持っている。

Googleの広報担当者は、Googleのユーザーデータを使って屋外ビルボードの広告をターゲットする計画を否定している。しかし、Googleは、2015年からビルボードにおけるアドテクをテストしているのだ。彼らが持つプログラマティック関連のノウハウと、膨大な個人データを応用すれば、屋外広告にとっては大きな転換点を生むことになるだろう。

特にアンドロイド(Android)のネットワークからモバイルデータにアクセスすることができる点を考慮すると、その影響力は計り知れないと、パフォーマンスエージェンシーのブレインラボ(Brainlabs)のCEO、ダニエル・ギルバート氏は語る。プログラマティックの屋外広告の経験を持って、広告スペースを見つけるという課題に取り組むことができ、すでに広告主たちから一定の信頼を得ているからだ。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)