小売の業績不振を「 Amazon のせいにする」時代は終わった

Amazonによる小売の支配に対するコールズ(Kohl’s)の答えは、「責めるな、加われ」だ。

最近、近年で最悪のうちのひとつとなる四半期決算を記録したコールズ。販売高が前年から3.4%減少し、絶望のすえか悪魔との取引のようにも見えることに乗り出そうとしている。

コールズは現在、Amazonの顧客を店舗に迎え入れて、面倒な返品の手助けしている。顧客は、Amazonに返品したい商品を同社の店舗に置いていけるのだ。今年、少数の店舗でテストを行ったのち、コールズはこのサービスを全店に展開する予定だ。Amazonにとって注文品の返品管理は、これまで顧客関連の数少ない悩みのひとつだった。コールズの1200近い店舗を持ち込み場所にすれば、それが緩和される。取引の価値を高めるため、同社は売り場にAmazonの機器も追加し、Amazon Echo(エコー)やKindle(キンドル)も販売している。

CEOのミシェル・ガス氏は、これを正当化し、5月末に行った第1四半期の収支報告で、Amazonとの提携の未来を投資家に説明した。Amazonの顧客をもっと大勢店舗に誘導してコールズの店で返品させ、顧客の代わりに返送することで、若い新規の顧客を取り込むと主張したのだ。ガス氏はこのサービスの拡大が、同社の「今年最大の構想」だと述べた。

ウォルマートやターゲットの成功例

Amazonと手を組むことによってコールズは、Amazon時代において顧客へのバリュープロポジションを復活させ、小売におけるその関連性を再び確固たるものにしようとしているが、ほかの小売業者も、直接的にも間接的にもそうしている。ウォルマート(Walmart)は、Amazonがプライムの配達スピードを2日から1日に短縮するのに8億ドル(約860億円)を投資したと述べてからわずか数週間後に、翌日配達を提供すると発表した。ターゲット(Target)は、店舗網をオンライン注文の処理部隊に変え、オンライン購入や店舗での受け取り、店舗からの出荷といった機能を可能にし、オンライン注文の80%が店舗によって処理されるほど大きな効果を上げている。

小売業者は、Amazonに対する防衛メカニズムとして資産を武器にしており、ターゲットとウォルマートの場合は、それが功を奏している。そうしていなければ小売業界が一貫して修羅場になっていた四半期に、販売高がターゲットは5%、ウォルマートは3.4%増加した。

ウォルマートやターゲットのような小売業者の成功は、苦戦している小売業者への明確なメッセージだ。小売業界が現在抱える問題をAmazonのせいにするのは、ますます正当化が難しくなりつつある。それどころか、早期にeコマースに乗じなかったことや、社内のサイロ化、顧客が実際に求めているものへの足がかりの喪失などの力の組み合わせが、業界内で比較的適応できない一部の企業の運命を決定する一因となってきた。

Amazonのせいにする婉曲的表現

もちろん、Amazonはまだ、小売業者による業績低迷の言い訳にされている部分がある。たとえば悪天候と違って、販売実績の弁明をする際に、幹部が直接、Amazonの名を仄めかすことはめったにない。その代わり、客足や収益の低下をめぐる非難をAmazonへとそらすのに利用する一連の婉曲的表現がある。

「顧客の行動の変化」は、オンラインショッピングや価格の比較といった、Amazonが生み出したのではないが、不相応に利益を得ている習慣に責任を帰する婉曲的な用語だ。「顧客の期待」は詰まるところ、ますますペースが速くなるAmazonの配送のおかげで、オンラインで注文する商品を2営業日以内に受け取るという顧客の新たなニーズだ。「ロイヤルティ」でさえ、究極のロイヤルティプログラムであるAmazonプライムを思い起こさせる小売要素だ。

「Amazonは間違いなく、翌日配達のようなサービス提供で、全体的に顧客の期待の新たな基準を作りつつある」と、マーケティング企業のピュブリシスサピエント(Publicis Sapient)で、小売およびeコマース担当エグゼクティブバイスプレジデントを務める、ジョン・ライリー氏は語る。「それに、ほかの小売業者と違って、費用の掛かるこうした戦略を維持できる軍資金を作ってきた。ほかの企業は今後、独自の物流を再構築して競争できるかどうかで判断されるだろう」。

JCペニーやシアーズの失敗例

だが、JCペニー(JCPenney)やベッド・バス&ビヨンド(Bed Bath & Beyond)、シアーズ(Sears)のような、市場シェアを失いつつあるほかの小売業者の運命を決めてきたのは、Amazonの存在や非情な競争戦略ではない。それよりもむしろ、十分に準備を整えている現在のライバルが、eコマースや物流ならびに体験やサービスといった分野で行動を起こしていた重要な時期に、一連の実行上や戦略上の失敗をして、運命が決まったのだ。

「Amazonは怪物ではなく、ライバルだ。Amazonが提起する特定の問題はあるのか? そういう問題は確かにある。最大の問題は、一般的な問題ではなく、特定の問題だ。Amazonプライムの会員は、時が経つにつれてもっとAmazonを頼りにするだろう。だから、ここでは時間がもっとも大きな要因だ」と、カンター・コンサルティング(Kantar Consulting)の最高知識責任者兼小売責任者であるブライアン・ギルデンバーグ氏はいう。

小売分野で変化を引き起こすデジタル勢力への対応の遅れが、Amazonそのものではなく、比較的大手の小売業者の運命を決しつつある。ベッド・バス&ビヨンドは、新しいeコマースサイトを立ち上げるのに3年掛かった。今年、2回目の破産申請をしたペイレス(Payless)の元従業員は、技術を最新のものにする面での同様の遅れについて話した。2018年に立ち上げることになっていたサイトは実現しなかったという。

「ピースが取り出されたパズル」

シアーズやJCペニーのような企業の場合、致命的なミスは、eコマースと物理的な商取引とのシームレスな統合ではなく、サイロ化された別の事業として投資したことだった。事業の補完的な要素ではなく、明らかに異なる要素としてオンライン小売を扱うと、小売業者は、顧客データの洞察をチャネルにまたがって結びつけ、店舗からの出荷やオンラインでの購入、店舗での受け取りといった魅力的な機能を組む込むことができなくなる。

「JCペニーは、シアーズと同じ道をたどった。両社は、eコマースを別の事業と考え、チャネル中心だった。そのため、オンラインと実店舗の顧客のあいだに多くの重複があり、顧客の視点に立てば実際にはひとつの体験であることを理解しなかった」と、リテール専門コンサルティング企業セージベリー(SageBerry)のCEOで、シアーズの元企業戦略担当バイスプレジデントであるスティーブ・デニス氏は語る。「JCペニーは、カスタマージャーニーの一環としてデジタルへの投資が不十分で、eコマース事業をかなり独立して運営した。それは顧客が求めるものでないだけでなく、顧客データの断片化を意味するので、ターゲットマーケティングが後れを取り、形勢が不利になる」。

それよりも、JCペニーやシアーズ、ベッド・バス&ビヨンドのような小売業者は、価格に敏感な顧客を獲得するために、魅力的な商品や店内体験、利便性によるバリュープロポジションではなく、激しい宣伝サイクルに頼るのが既定路線だった。だが、これは、Amazonの価格体系や、ウォルマートやTJマックス(TJ Maxx)、ホームグッズ(HomeGoods)のようなディスカウント業者の小売業者に直面すれば負ける戦略だ。

「現状は、Amazonが小売を殺しているのではない。消費者が明確な目的と約束を見つけることができるブランドが勝っているのだ。コールズやJCペニー、ベッド・バス&ビヨンドのような小売業者の場合、約束が明確でない」と、ギルデンバーグ氏は指摘する。「それに、価値提案が進化しないと、現状に留まることはできない。顧客が乗り換えはじめ、混乱して断片化する。ピースが取り出されたパズルのようなものだ」。

Amazonは言い訳にすぎない

コールズは、実店舗を構えてAmazonの返品を請け負う小売パートナーになって、新たな目的を挟み込めると期待している。だが、ほかの小売業者が成功している点(配送、商品、体験)でも成功しなければ、Amazonへの擦り寄りはその助けにならない。とはいえ、デニス氏によると、問題をただAmazonのせいにするよりも顧客の行動の理解に役立つ、少なくとも前向きな対策だという。

「Amazonが小売を殺しているというのは、言い訳すぎない」と、デニス氏は語る。「JCやシアーズがオンラインでの迅速な行動を起こすのを妨げたのは、自分たちにほかならない。チャンスを逃したのだ」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:ガリレオ)