コワーキングスペース化が進む、米ショッピングモール:空きスペース問題解消のため

ショッピングモールの運営を手がけるマセリッチ(Macerich)が、米国各地にある空き店舗スペースの再活用に乗り出した。ターゲットは、ミーティング、ポップアップストア、バックオフィス業務などに利用できる場所を求めている企業だ。

米国では、モールの空きスペースが増えている(第2四半期にはその割合が8.6%と報じられた)。こうした状況に対応するため、マセリッチは、コワーキングスペースのスタートアップであるインダストリアス(Industrious)と共同で、この取り組みを進めるという。オンラインで買い物をする消費者が増えるなか、モール運営会社は、小売業者をつなぎとめる手段としてコワーキングスペースを提供している。

1号店舗はアリゾナから

マセリッチのCEO、アート・コッポラ氏によれば、同社は今後、米国の48カ所で展開しているショッピングセンター内のモールで、コワーキングスペースを提供する予定だ(ただし、具体的な数は明らかにしていない)。最初に手がけるのは、アリゾナ州スコッツデイルにあるスコッツデイル・ファッション・スクエア(Scottsdale Fashion Square)にある3万3000平方フィート(約3066平方メートル)内のスペース、2019年1月から営業を開始する。

インダストリアスのCEO、ジェイミー・ホダリ氏によると、このようなコワーキングスペースの顧客として考えられるのは、製品をテストしたり、eコマースサイトを補完する実店舗を出店したりするスタートアップ企業や、バックオフィス業務用のスペースを求める大手企業だ。今後の課題は、さまざまなタイプの企業に対応できるスペースをデザインすることと、ショッピングモール内にありながら分け隔てられている感覚を作り出す(つまり、異なるエントランスを設ける)ことだと、ホダリ氏は語った。

ヤルディシステムズ(Yardi Systems)の最近の調査によれば、コワーキングスペースが増えている理由として、コスト削減の圧力、ギグエコノミーの拡大、柔軟性の高いリース契約に対するニーズの増加が挙げられるという。大企業の場合は、柔軟性の拡大も理由のひとつだ。モールにはさまざまな目的の施設があるため、モールをコワーキングスペースとして利用する企業は、ジムなどのさまざまな設備を利用できる。

利用者たちのメリット

起業家にとっては、モール内のコワーキングスペースを利用することは、「スターバックス(Starbucks)とWeWork(ウィワーク)の中間に位置する」ような、メンバー制で柔軟性の高いワークスペースを求めるトレンドのひとつとして捉えることができる。そう語るのは、テックスターズ・リテイル(Techstars Retail)のマネージングディレクター、ライアン・ブロシャー氏だ。

一方、小売業者にとっては、新興企業が新しいテクノロジーを試したり、製品をテストしたりするのに適した場所になると、ブロシャー氏は話す。また、小売以外の大企業が、負担の大きい長期のリース契約を結ぶことなく、物理的なスペースを増やすのにも便利だ。不動産関連のコスト削減を迫られているエージェンシーにとっては、そう遠くない場所に拠点を設ける機会を提供してくれるだろう。コストのかかる都市部に拠点を置くエージェンシーにとっては特にそうだ。

「理屈上は、(モールは)エージェンシーにとって素晴らしい環境を提供しているといえる。(中略)交通渋滞や駐車料金が問題になる可能性がある地域の企業にとっては、とりわけそうだ」と、エージェンシーのジェリーフィッシュ(Jellyfish)でコミュニケーション担当責任者を務めるラリー・ガマチェ氏は述べている。同社は最近、ニューヨークで2番目となるオフィスを、チェルシー地区にあるウィーワークのスペースに開設した。「いまのオフィスワーカーは、レストランやショッピング施設、それにアメニティ施設が適切なバランスで存在している場所を好むため、こうした場所を見つけることが、今後は重要になる」と、ガマチェ氏は語った。

同業他社も続々と登場

マセリッチ以外のショッピングモール事業者も、小売業者向けのインキュベーションハブとして利用できるコワーキングスペースを提供している。たとえば、ショッピングモールのウェストフィールド(Westfield)は、「ビースポーク(Bespoke)」と呼ばれるコワーキングスペースをサンフランシスコで展開中だ。また、不動産インキュベーターの1776は、ペンシルベニア不動産投資信託が保有するチェリーヒルモール(Cherry Hill Mall)で、11月にもコワーキングスペースをオープンする計画だという。

Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:ガリレオ)