Amazon の ザッポス 、 AI 活用で「検索エンジン」を再構築 : 返品率を低下させるため

Amazonの子会社で靴や衣服、アクセサリーのオンライン販売を行うザッポス(Zappos)が、機械学習と人工知能(AI)を活用してEC体験の向上や返品率の低減、検索エンジンの改善を進めている。

この取り組みを進める社内チームはデータサイエンティストと機械学習サイエンティスト、ソフトウェアエンジニア20名で構成される。チームリーダーのアミーン・カザローニ氏は、機械学習とAIによる予測によってザッポスでショッピングを行うカスタマーとの行き違いを解消できると期待している。昨年カザローニ氏のチームはカスタマーにとって障害となっているふたつの分野に取り組んだ。そのふたつの分野は、オンラインでの試着と、複数の解釈がある検索クエリに対して検索エンジンがユーザーの求める検索結果を返すことで、いずれもオンライン購入を増やすために重要な要素となる。

ザッポスの本社はラスベガスにあり、社員は1500名で毎年20億ドル(約2100億円)の収益をあげている。同社は2001年に設立され、2009年にAmazonに12億ドル(約1440億円)で買収された。同社は靴やファッション分野におけるEC企業のさきがけだが、その後は次々にデジタル企業のスタートアップが参入して市場の競争は激化している。時間に追われているオンラインの買い物客にとって、ザッポスの取り扱い商品が多すぎることは逆効果な場合もある。そのためデータサイエンスチームはカスタマーが探している商品により早くたどり着けるように取り組んでいるのだ。

新モデルの遺伝的アルゴリズム

カザローニ氏のチームはザッポスの検索エンジンに遺伝的アルゴリズムという新たなモデルを組み込んだ。このアルゴリズムは過去のデータを参照するとともに、ファッショントレンドで登場した新しいキーワードを拾い上げる機能を有している。検索エンジン自体がより賢くなるだけでなく、表示結果もユーザーの過去の検索に基づいてパーソナライズされるようになる。

「ユニークな検索クエリは毎月数百万のペースで増えている」とカザローニ氏は明かし、次のように述べている。「そこに含まれる単語の意味を捉えることが、そのままビジネスチャンスにつながる。単語による検索は、時として非常に難しい。だが、一般的なカスタマーの検索クエリは、商品説明よりもカスタマーの感情を捉えようとしたほうが良い場合もある」。

カザローニ氏は「クラシック ショート(classic short)」という検索を例として挙げた。このクエリは同様の名称のアグ(Ugg)のブーツを検索するときに用いられる場合が多い。これに対し、これまで検索エンジンはブーツではなく大量のショーツ(shorts)を表示していた。

「新たな検索用語すべてに対応するような新しい検索ソリューションを実現した」と同氏は語る。「たとえば『クラシック ショート』を検索した場合、アルゴリズムはこの単語を認識してショートを衣服の種類(ショーツ)としてではなく、商品名として認識する。一方でハイキング用のショーツを検索しているカスタマーの場合はショーツを表示する。つまり特定の単語がどの分野に属しているかをリアルタイムで学習するのだ」。

「よりシンプルな体験を提供」

検索アルゴリズムをより良いものとするため、カザローニ氏のチームはカスタマーが必要な商品にたどり着くまでに検索を繰り返す場合に、同じ用語を繰り返し入力しなくても済むように改善も行っている。またアルゴリズムはコンバージョンにつながった検索クエリの数も追跡している。遺伝的アルゴリズムの導入からまだ1年も経っておらず、カザローニ氏はEC企業のマインドシェア指数として重要なリピート客やカスタマーの長期的ロイヤルティが増えたと結論づけることはできないとしている。

だが、カスタマーがより早くショッピングできるようになり、フィルター数も減り、目的の商品にたどり着くまでの検索数が減ったのは事実だ。「カスタマーに不満のたまらない、よりシンプルな体験を提供できるようになった」と同氏は語る。

ザッポスがオンライン限定のビジネスを行うにあたり、こうした自社技術に投資することはコスト削減に結びつく。ECブランドが小売の実店舗へと次々に進出していることからも分かるように、商品を実際に見て試してみたいというカスタマーにとってオンラインショッピングはいまだに超えがたい壁なのだ。

そしてザッポスにとっての障害は、あまりにも多い商品数だ。数十万という商品展開は品ぞろえという面で間違いなく有利だが、同時にカスタマーにとっては商品を決めあぐねる、不満がたまるといった場合もある。ザッポスはカスタマーに購入をうながすため、購入してから最長で1年以内の無料返品を約束している。カザローニ氏はこれについて、カスタマーのインセンティブとして優れている一方でコストもかさむと語る。

返品率の低下が優先事項

無料返品システムを残し、返品率を下げるためにデータサイエンスチームは適正サイズ判断システムを開発した。適正サイズはカスタマーレビューと過去の購入、ブランドごとのサイズ設定を参照して決められる。

「返品率をおさえることは当社にとって優先事項だ。返品は高くつく。返品を有料にする、あるいは1人あたり返品の上限数を設定するという選択肢もあった」とカザローニ氏は語る。「そのかわりにカスタマーの返品率を下げるためのソリューションに投資した」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)