2020年1月1日、カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:以下、CCPA)が施行された。現在のところ、小売企業は成り行きを見守っている。ロイヤルティプログラムへの影響について、詳細なガイダンスが示されるかどうかを知りたいためだ。
2020年1月1日、カリフォルニア州消費者プライバシー法(California Consumer Privacy Act:以下、CCPA)が施行された。企業が顧客の個人情報をどう扱うかについて、顧客側に主導権を与えるための新規制のひとつだ。
現在のところ、小売企業は成り行きを見守っている。ロイヤルティプログラムへの影響について、詳細なガイダンスが示されるかどうかを知りたいためだ。
いくつかの業界団体はCCPAの文言を読み、小売企業のロイヤルティプログラムに悪影響が出るという懸念を示しているが、企業はルールの明確化を待っており、ロイヤルティプログラムの抜本的な変更は計画していない。
Advertisement
ホーム・デポ(Home Depot)の広報担当者は「現時点では、ロイヤルティプログラムの根本的な変更は予定していない」と話している。ターゲット(Target)の広報担当者も、ロイヤルティプログラムに変更を加えるつもりはないと述べている。
全米広告主協会(ANA)の政府関係担当エグゼクティブバイスプレジデント、ダン・ジャフィ氏は、協会に所属する小売企業の多くは「他社の動向に関する情報を求めている」が、CCPAを理由にロイヤルティプログラムを見直しているという話はまだ聞いていないと述べている。
曖昧なCCPAの適応範囲
CCPAでは、消費者が法律で認められた権利を行使しても、企業はその消費者を差別してはならないと定められている。CCPAで認められた権利とは、企業に個人情報の削除を求めること、企業によるデータ収集をオプトアウトすることなどだ。具体的には、「値引きなどの特典あるいはペナルティによって、異なる商品価格やサービス料金を請求すること」は差別と見なされる。
いくつかの業界団体はこの文言について、ロイヤルティプログラムのメンバーとメンバーでない顧客の価格設定、料金設定を変えることは一種の差別にあたると解釈している。一方、CCPAで認められた権利を行使する顧客への差別のみが禁止されているため、オプトインが必要なロイヤルティプログラムは対象にならないと主張する弁護士もいる。さらに、顧客の個人情報がどのように役立てられるかを伝えるため、企業が顧客に提供すべき情報についても混乱が生じている。
「結局のところ、どのように通知すべきかが、まったく明確化されていない」と、ジャフィ氏は話す。
CCPAが適用されるのは、カリフォルニア州に本社を置く営利企業、カリフォルニア州で商品を販売する営利企業、カリフォルニア州在住者のデータを収集する営利企業だ。売り上げ、データ収集に関する基準のひとつを満たしていることが条件となる。
ロイヤルティプログラムの実態
ロイヤルティプログラムは長年、ポイントや値引きによってリピート購入を促す手段として、小売企業に広く採用されてきたが、いまやデータ収集の重要なツールでもある。通常、顧客がメールアドレスを登録し、プログラムに申し込む仕組みとなっており、企業はこのメールアドレスを継続的なマーケティングに利用できる。また、複数の購入をひとりの顧客と結び付けることが容易になり、顧客一人ひとりに合わせたオファーでさらなる購入を促すことができる。
CCPAには、「消費者のデータがその消費者にもたらす価値と合理的な関連がある場合、その顧客に異なる価格または料金を請求すること、レベルまたは質が異なる商品またはサービスを提供することを禁止するものではない」と明記されている。ただし、ここにも別の問題がある。企業は顧客データの価値をどのように計算すべきかという問題だ。すべての小売企業に共通する方法など存在しない。
「小売企業はさまざまな基準でさまざまなインセンティブを提供している。しかも、それらが変更されることもある」と、ジャフィ氏は指摘する。ジャフィ氏はその一例として、ロイヤルティメンバーに1週間30%の値引きを提供し、翌週、同じメンバーに40%の値引きを提供することもあると述べた。「このようにインセンティブが変わる場合、顧客データの価値に関する計算も変わるということだろうか?」。
免除を求める業界団体CRA
ANA、カリフォルニア州小売協会(California Retailers Association:以下、CRA)などの業界団体はカリフォルニア州司法長官事務局に対し、ロイヤルティプログラムを通じて集めた顧客データの価値を計算する方法についてガイダンスを示すか、小売企業による情報提供そのものを免除するよう求めている。
CRAの場合、小売企業のロイヤルティプログラムによって生じるインセンティブなどの特典について、顧客がさらにデータを提供するよう促すものとして扱わないでほしいと要求している。ロイヤルティプログラムの特典は主に、顧客が一定期間に投じた金額を基準にしており、顧客が提供したデータの量は無関係だというのがCRAの言い分だ。
CCPAは2019年12月6日までパブリックコメントを公募していた。司法長官事務局はその内容を検討したうえで、早ければ2月、CCPAの施行方法を明記した追加ルールを発表すると見られる。企業は1月1日からCCPAに従うことを求められているが、実際に発効するのは7月だ。シャビエル・ベセラ司法長官は年単位で段階的に施行していくと述べている。
それでも、多くの企業、業界団体は安心していない。
ジャフィ氏も「影響がどの程度になるのかをわかっている人はいない」と述べている。
Anna Hensel(原文 / 訳:ガリレオ)