イーベイは現在、リテール・リバイバル・プログラム(Retail Revival program)を米国各地の小都市に拡大しつつある。小売専門家はこれを、アリババ(阿里巴巴)の成功に倣って、C2C中心のマーケットプレイス機能から小売業者へと重心を移し、Amazonに不満を持つ小規模企業を呼び込む戦略と見ている。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(190円)です!】
Amazonはサードパーティのセラーに厳しいことが知られている。あるセラーは、商品発送の締め切りに15分遅れたことでアカウントが停止され、なんども訴えたが8カ月経っても何も動きがなかったという。
このセラーだけではない。Amazonはたくさんのサードパーティセラーをさまざまな理由で怒らせてきた。セラーのフォーラムや専用のFacebookグループには、不公平なアカウント停止に対する批判のほか、Amazonと連絡が取れない、大きなブランドやAmazonの値下げには対抗できないといった不満がいっぱいだ。
イーベイ(eBay)のグローバルインパクト責任者、クリス・リブリエ氏は、「我々の特筆すべき点は、セラーと競争せず、セラーをサポートすることろだ」と語る。「セラーが勝利すれば我々の勝利なのだ」と同氏。
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設立23年で月間アクティブバイヤー数が1億7500万人のイーベイは現在、開始から半年のリテール・リバイバル・プログラム(Retail Revival program)を米国各地のほかの小都市に拡大すべく進めている。小売専門家たちはこれを、アリババ(阿里巴巴)の成功に倣って、C2C中心のマーケットプレイス機能から小売業者へと重心を移し、Amazonに不満を募らせている小規模企業を呼び込む取り組みだと考えている。
プログラムの中身
イーベイのリテール・リバイバル・プログラムはこの1月に、オハイオ州の小都市アクロンとの1年間のパイロットプログラムとしてはじまった。イーベイの当初の目標は、アクロンで昔ながらの実店舗を営む小規模企業30~40社を同社プラットフォームに連れてくるものだった。リブリエ氏によると、これに100社以上が集まった。イーベイによると、プログラム参加企業には、従来型の実店舗もオンライン販売の経験がある店舗も混じっていた。
プログラムは無料。応募した地元企業は、イーベイにおける販売トレーニングを月に1回、受けることができ、また、専用のカスタマーサービスチームを利用できる。イーベイはほかに、eBay.com/Akronに専用ウェブページを開設し、アクロンの企業を宣伝。さらに、アクロン・ハニー・カンパニー(Akron Honey Company)や持続可能なフルーツスナックのピースフル・フルーツ(Peaceful Fruits)など、アクロンの選り抜きのセラーを8月14日にニューヨークに連れて行き、ポップアップストアで商品を販売させた。このポップアップストアで販売された商品は、「テイスト・オブ・アクロン」という詰め合わせをオンラインで購入できる。
このプログラムが次にやってくるのはミシガン州ランシング。リブリエ氏は、プログラムが展開する都市の数に上限はないないとしたうえで、このプログラムは実際に社内の部門の枠を超えて投資がされていると続けたが、これまでに投じた金額については語るのを拒んだ。現在、イーベイはTwitterで「#RetailRevival」というハッシュタグを宣伝していて、ランシングの企業の商品がイーベイで購入できるようになったらフォロワーに知らせることにしている。最初の都市にアクロンが選ばれたのは、オハイオ州には当時すでに24万のイーベイのセラーがいたためで、オハイオ州だけでイーベイは10億ドル(約1111億円)を企業にもたらしていると、リブリエ氏は語った。
「PRのためのプレイ」
「アジア、とりわけ中国においてアリババが成功しており、イーベイはこれをマネしたいようだ」と語るのは、コンサルティング企業R3ワールドワイド(R3 Worldwide)のマネージングディレクター、メリッサ・リー氏だ。「イーベイは歴史的にC2C寄りだったが、Amazonは、価格で対抗できないという理由で小規模企業が離れており、またマーチャントに対してとても厳しい。イーベイがアリババをまねれば、もしかするとマーチャントたちはより『親切で優しいAmazon』をイーベイに見いだすかもしれない」と、同氏は語った。
リサーチ会社のフォレスター(Forrester)で、小売りとeコマースのプリンシパルアナリストを務めるサチャリタ・コダーリ氏は、これはイーベイのビジネスモデルの転換というよりも、Amazonに不満を持つセラーがイーベイのほうを向くような積極的なPRを生み出すものなのだと考えている。
「手間暇をかけることで多くのセラーを引き入れる方法のようだ。だとすると、なににもましてPRのためのプレイだということだ」と、コダーリ氏は語った。
Ilyse Liffreing (原文 / 訳:ガリレオ)