売主側にとって、Amazonのリーチは大きく、何百万人もの顧客にアクセスできるが、妥協しなければならない点もいくつかある。そのわかりやすい例が、顧客に配送するパッケージのブランディングや、配送物に同梱できる商材だろう。それに対して業者側は、この制限をかいくぐるための道を見出そうとしてきた。
売主側にとって、Amazonのリーチは大きく、何百万人もの顧客にアクセスできるが、妥協しなければならない点もいくつかある。そのわかりやすい例が、顧客に配送するパッケージのブランディングや、配送物に同梱できる商材だろう。
Amazonは、自身のプラットフォームを利用した商品の配送方法として、セラーセントラル(Seller Central)の取り決めに従う第三者販売、またはAmazonを卸売元として利用する販売という、ふたつの販売形態に対する選択肢を提供している。売主側は、代金を支払ってAmazonの配送サービスを使うか、自身で配送を行うかを選択できる。通常、商品の配送には、Amazonが提供する無地のダンボールが使われる。
Amazonの配送時の取り決めにより、ブランドは同梱できるものに制限が課せられている。Amazonのセラーセントラルの梱包と発送における取り決めによると、印字がされたラベル、パンフレット、値札、またはその他のAmazon以外のラベルといったマーケティング用途のものを同梱することはできない。さらに、セラーセントラルの売主側の禁止事項に基づき、売主はAmazonの販売プロセスを回避したり、Amazonのユーザーをほかのウェブサイトに誘導したりすることも禁止されている。その禁止事項には、AmazonのユーザーをAmazonのウェブサイトから離れるよう誘導したり、促したり、または勧めたりするマーケティング用途のメッセージや「行動要請」もすべて禁止されている。
Advertisement
これによって、ブランドは微妙な立ち位置に追いやられてしまうことがある。彼らは、可視性や、Amazonのプラットフォームを通じた顧客との関係性の強化を求めている。一方、Amazonは、顧客との関係は自分のものだということを明確に打ち出しているのだ。それに対して業者側は、この制限をかいくぐるための道を見出そうとしてきた。数人の売主が米DIGIDAYに語ったところによると、これは両天秤策であり、グレーゾーンが存在している、そして業者側はAmazonのエコシステム内でブランドの販促のために、できることのすべてをやろうとしているという。
ルールをねじ曲げる
Amazonを通じて物理的にブランド商品を配送するうえで自由度に欠けているということは、売主にとってフラストレーションの元だと、ある業界筋は語る。
「梱包やブランドの構築は、ブランドのコミュニケーションにとって重要であり、その自由や創造性が奪われることは、ブランドにとっては妨げとなる。まるで、片足をもぎ取られたようなものだ」と、デコーデッド・アドバタイジング(Decoded Advertising)の創設者、マット・レドナー氏は語る。
ブランドはこれに対応するため、どうすればAmazonのルールに従いながら販促できるかを検討している。なかには、Amazonの「マーケティング資料の同梱禁止」のルールを、異なる解釈で立ち向かおうとしているものもいる。彼らは販促物を商品の一部としてみなし、梱包物に何か別のものを差し込んだり、ステッカーを商品に同梱したりしている。Amazon上で売主に許されていることと許されていないことが取り決められた膨大なルールを目の前にしたブランドは、コンサルタントとともに、許容範囲を探ろうとしている。
Amazonはこの話題に対してコメントしなかったが、いくつかの業者が売主のコミュニティ内で、「マーケティング資料の同梱禁止」ルールのギリギリの境界線を攻めるブランドが出てきているのを目にしている。
Amazonセラーのひとり、ライズ・ブリューイング(Rise Brewing)で財務部門と特別プロジェクトのシニアマネージャーを務めるライアン・ウィリアムズ氏によると、彼はAmazonのルールには満足しており、Amazonを通じて配送される梱包物には同梱物は一切ないという。だが彼は、名前は伏せたものの、梱包箱のなかにパンフレットを同梱するブランドがいることにも気づいていると語る。それについて同氏は、深刻な違反でない限り、表沙汰になることはない、と付け加えた。
「ルールは存在しているが、多少なりともグレーゾーンはある。そして、そのルールを著しく破っている場合には、(Amazonに)その違反者を罰する権利がある」と、彼は語る。「梱包物にシンプルで小さなものを同梱する食品ブランドを多く見てきたが、これは大きな問題にはならないだろう」。
ユニリーバ傘下のセブンスジェネレーション(Seventh Generation)も、商品の発送ではAmazonのフルフィルメントサービスを使っているが、顧客に向けて発送するAmazonブランドの梱包箱のなかに自身のブランドの梱包箱を入れており、さらにその箱のなかにはマーケティング材を同梱している。
「我々は、Amazonを通じて配送されるもののなかに、我々のブランドや商品に関する情報を同梱している。それらはAmazonの梱包箱のなかに入れた箱のなかに入っているだけで、Amazonブランドの梱包箱のなかには、いかなるマーケティング資料も入っていない。我々がDTCブランドとして取り組んできたのは、Amazonのシステム内でも、我々自身のプラットフォームでのやり方にできる限り似せることだ」と、セブンスジェネレーションのeコマース部門のシニアブランドマネージャーを務めるジョン・モアヘッド氏は語る。
栄養補助食品を販売する会社のキャンパスプロテイン(Campus Protein)は、Amazon内の店舗と自身のeコマース店舗の両方を持っている。マーケティング資料はeコマースの体験上、非常に重要だ。Amazonでの販売はスケールを提供するが、そのプラットフォームでの販売を行いつつ、顧客との関係を維持するには障壁がある。
「キャンパスプロテインから商品を直接注文すると特別な梱包で配送され、(別の商品の)サンプルに加えて、バウンスバッククーポンも入っている」と、CEOのラッセル・サックス氏は語る。「ブランドの公平性は我々にとって非常に重要だ。ガイドラインに沿いながらも我々のブランドを人々の心に焼き付けられるよう、できる限りクリエイティブであり続けたい」。
それを実行するため、Amazonのフルフィルメントサービスを利用しているキャンパスプロテインは、Amazonで販売する商品の上部にステッカーを付けている。サックス氏によると、このステッカーはロゴブランディングから将来発売する新しいフレーバーまで、時期に応じて内容を変えているという。会社側の見解では、このステッカーは実質上商品の一部であるため、Amazonのガイドラインに違反することなく、ちょっとしたプロモーション目的の商材を同梱するための手段のひとつになっている。
ブランディングの「抜け道」
また別のブランドは、抜け道を見つけはじめている。Amazon内で寝具を取り扱うバッフィー(Buffy)も、Amazonのフルフィルメントサービスを利用している。だが、この会社はAmazonの梱包箱を使う代わりに、自身のブランドの梱包箱に商品を入れる許可の申請をAmazonに提出した。CEOのレオ・ワング氏によると、この申請手続きには1カ月かかったという。この会社はまた、発送する商品に追加の商材であるマスクを同梱している。ワング氏によると、Amazonはこれをパッケージの承認プロセスで認識しており、咎められることは一切なかったという。
つまるところ、より強い力を持つ販売主が出てくる、という結果をもたらすことになる。
「恐らく、Amazonの業者間で『クラス』とも呼ぶべき格差が生まれている。あるものは底辺でさほど大きな自由を持たないが、頂点にいるものはそれを持っている」と、ワング氏。「ほかの誰もが、与えられた条件の範囲内での取引を余儀なくされているなか、彼らはより大きな収入を見込むことができる」。
特別な待遇がないなかでは、ブランドは回避方法を見出すか、ルールに従って商売しなければならないのだ。
「(ブランドは)顧客が商品を探しているときには、オンラインでブランディングのチャンスがある、という確証を持っていたい。そして、それと同時に、商品が配達される瞬間も同じように願う」と、PMMIメディアグループ(PMMI Media Group)でコンテンツとブランド開発部門のバイスプレジデントを務めるジム・チュザン氏は語った。
Suman Bhattacharyya(原文 / 訳:Conyac)